レビュー
手嶌葵 | 2017.11.28
テレビ東京系『ワールドビジネスサテライト』(月~金 夜11時~11時58分)はビジネスの最新情報を中心とした番組で、余計な(?)コメントを抑え、事実をしっかりと伝えようとするスタンスが好きで筆者もときどき観ているのだが、観終ったときはいつも「企業はいつも新しいことにトライしてがんばってるよな。ビジネスマンは大変だよな」と小学生のような感想とともにちょっと感動してしまう。そのエンディングテーマとしてオンエアされているのが「東京」。≪東京 ビルの灯り / 無数の 眠れない 理由が煌めている≫ というフレーズが聴こえてきた瞬間にふっと涙腺が緩みそうになる、手嶌葵の歌唱によるバラードナンバーだ。
作詞 / いしわたり淳治(Little Glee Monster「My Best Friend」BOYS AND MEN「帆を上げろ!」などの作詞を担当)、作曲 / 平井真美子(ドラマ「過保護のカホコ」の音楽などを担当)、編曲 / TATOO(乃木坂46「おいでシャンプー」、U-Kiss「We Set off!!」などのアレンジを担当)というトップ・クリエイターが作り上げた「東京」のテーマは、“東京という街に生きるすべての人に捧げる応援歌"。一見ベタなテーマではあるが、仕事の大変さ、苦しさをさりげなく描いた歌詞、クラシカルな抒情性を感じさせるメロディ、ピアノとストリングス(弦一徹ストリングス)を軸にしたシックなアレンジによって、大人のリスナーの胸を打つ名曲へと結びつけている。その中心にあるのはもちろん、手嶌葵のボーカルだ。優しさと繊細さを共存させた声質、歌詞の一つ一つを手渡すような表現は、まさに絶品。昨年デビュー10周年を迎え、「明日への手紙」(ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」)が話題を集めた手嶌葵。シンガーとしての彼女の魅力は、ここにきてさらに深みを増しているようだ。
EP盤『東京』には表題曲「東京」のほか、哀切な感情を描き出すラブソング「赤い糸」(プレミアムドラマ『女の中にいる他人』主題歌)、神聖なイメージの歌声が印象的なオペラ楽曲「オンブラ・マイ・フ」(映画『永い言い訳』挿入歌)、松田聖子のヒット曲をカバーした「瑠璃色の地球」(薩摩酒造 白波『この地球の日々たちへ。』CMソング)、オーガニックなアレンジによる「The Christmas Song」のライブバージョンも収録。冬の足音が聞こえるこの季節、慈しみと美しさに満ちた手嶌葵の歌をたっぷりと堪能してほしい。
【文:森 朋之】
リリース情報
東京
発売日: 2017年11月22日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
1. 東京
2. 赤い糸
3. オンブラ・マイ・フ
4. 瑠璃色の地球
5. The Christmas Song(Live)
6. 東京(instrumental)
7. 赤い糸(instrumental)