レビュー

BUCK-TICK | 2018.02.20

 2017年9月、23日24日の2日に渡り、東京・お台場野外特設会場J地区で開催した『BUCK-TICK 2017 "THE PARADE" ~30th anniversary~』を皮切りに、デビュー30周年プロジェクトが着々と進行中のBUCK-TICK。11月に出した「BABEL」に続く第2弾シングルとして、「Moon さよならを教えて」を2月21日にリリースする。

 このリード曲は、BUCK-TICKの十八番の一つといっていい幻想的なバラード。柔らかなサウンドに彩られた桜井敦司の柔らかなヴォーカルが誘う幻想は、夢とうつつの狭間のよう。けれどもこのまどろみは、心地よく眠りを招くだけのものでもないようだ。腕の中で眠る愛し子への優しいまなざしを感じさせる瞬間もあれば、醒めることのない眠りに就いた人への悲しみをこめた「おやすみのキス」のようでもある。こうした愛情や孤独を描くのは桜井の得意とするところだが、「夜が好きなのは月もひとりだから」との一節が、いっそう桜井らしい。そして曲の終盤にロウ・ヴォイスでコーラスを入れ、この曲の多面性を裏打ちしているのは作曲者の今井寿(G,Vo)。こうした発声でコーラスをするのは初めてではないだろうか。30周年を迎えても新たな試みを続ける姿勢を何気なく見せるところが今井ならでは。

 カップリングの「サロメ」は星野英彦(G,Vo)の作曲で、アグレッシヴなデジ・ロック仕立て。桜井の歌も起伏に富んで刺激的だ。新約聖書に記されているファム・ファタール「サロメ」をモチーフに、ダークな世界を描いた歌詞がは桜井の面目躍如。ヨハネの首を求めて妖艶に踊るサロメが眼に浮かぶようだ。人間の心の奥に潜む美しくも残酷な闇を覗き込む楽曲はBUCK-TICKにとって永遠のテーマであり、進み続ける原動力の一つといえようか。

 どちらも幻想的な曲だけれど彼らが伝えたいのは、それだけではないのではないかとも思う。命の儚さや尊さ、宗教は心の平安をもたらすだけでなく時には対立も引き起こすことも分かっているからこそ題材になる。やるせない思いを抱きながら平安を祈るしかない現実をBUCK-TICKの5人も生きている。その思いは彼らが30年前から歌ってきたことに不思議なほど重なっているのだ。3月14日には21作目になるアルバムのリリースが発表されている。そこでこの物語の続きを知ることになるのだろう。

【文:今井 智子】

tag一覧 シングル 男性ボーカル BUCK-TICK

リリース情報

Moon さよならを教えて[完全生産限定盤A]

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Moon さよならを教えて[完全生産限定盤A]

発売日: 2018年02月21日

価格: ¥ 2,380(本体)+税

レーベル: Getting Better Records

収録曲

1. Moon さよならを教えて
2. サロメ

[完全生産限定盤 3大特典(A/B共通)]
・Blu-ray/DVD: 「Moon さよならを教えて」 MUSIC VIDEO収録
・スペシャルデジパック仕様
・シングル・アルバムトリプル購入者対象キャンペーン応募券封入

[完全生産限定盤/通常盤 共通仕様]
・全国ツアー2018チケット先行抽選シリアルナンバー封入
 [受付期間 : 2018年2月21日(水)正午12:00?2018年2月27日(火)14:00]
・SHM-CD / Blu-ray(DVD)の収録内容をスマホで簡単再生できる「プレイパス」サービス対応
 [ダウンロード有効期限 : 2019年2月28日]

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