レビュー

でんぱ組.inc | 2018.03.28

 新体制の7人組として動き始めたでんぱ組.incによる初音源作品は、両A面シングル。再生ボタンを押した途端にワクワクの塊のような音がスピーカーから飛び出してくるのが、何と言っても嬉しい。キャラが立ち過ぎていると言っても良いくらい各々の個性が猛烈に豊かで、全員が集まった時に途轍もないエネルギーを生み出すこのグループならではの魅力は、新メンバーが加わったことによって、今までとはまた別の素敵な色合いを浮かべるようになっている。

「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」の作曲を手がけたのは、H ZETT M。軽やかにピアノが躍動するジャズテイストのサウンドが気持ちいい。スタイリッシュな雰囲気が漂う中、メンバーたちの歌声が活き活きと響き渡る様は、薄暗いジャズバーの店内がカラフルなサイリウムの光で染まるかのような新鮮な刺激を醸し出している。「あした地球がこなごなになっても」以来のタッグとなる漫画家・浅野いにおによる歌詞も楽しい。ファンタジー的な謎かけ風味であり、解釈はリスナーによって様々だろうが、“時には妄想を膨らませて逃避をしつつも、厳しい現実と向き合っていく姿を描いている”と感じる人が多いのではないだろうか。音楽、漫画、ゲーム、映画、小説など、様々な娯楽に救われつつ、どうにかこうにか日々を暮らしている人々にとって、とても自然に受け止められるメッセージソングになっていると思う。

 そして、昨年の12月30日に大阪城ホールで初披露された「ギラメタスでんぱスターズ」が、今作のもう1つのタイトル曲だ。“作詞:前山田健一 作曲・編曲:浅野尚志”という組み合わせが、とにかく強力極まりない。起伏に富んだドラマチックな展開、全力のパフォーマンスをステージ上で繰り広げるメンバーたちの姿がありありと浮かぶこのサウンドを聴いて、腕組みをしながらローテンションでいられる人類は、おそらく皆無だろう。古今東西の様々なSF作品内に広がっている壮大な世界を大胆に融合したようなタッチで宇宙規模の空間を“ドドーン!”と現出し、“やるぞ!”というバイタリティの炎を燃え盛らせているこの歌詞は、力強く動き始めた7人にとてもふさわしいものとなっている。

 彼女たちと縁の深いテレビアニメ『斉木楠雄のΨ難』の第2期エンディングテーマ「Ψ発見伝!」もキャッチーな存在感を放っている今作は、“新しいでんぱ組.inc、どうなっちゃうんだろう?”という不安を思いっきり吹き飛ばしてくれる。でんぱ組.incの代表曲の1つ「FUTURE DIVER」の一節《未知なる絵になる更なるセカイハッケン》が、ここからまた始まることを確信できる作品だ。

【文:田中 大】

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リリース情報

おやすみポラリスさよならパラレルワールド / ギラメタスでんぱスターズ

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おやすみポラリスさよならパラレルワールド / ギラメタスでんぱスターズ

発売日: 2018年04月04日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: トイズファクトリー

収録曲

01.おやすみポラリスさよならパラレルワールド
02.ギラメタスでんぱスターズ
03.Ψ発見伝!
04.おやすみポラリスさよならパラレルワールド(Instrumental)
05.ギラメタスでんぱスターズ(Instrumental)
06.Ψ発見伝!(Instrumental)

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