レビュー
YOASOBI | 2020.07.28
2020年はYOASOBIの年になりそうだ。昨年11月にリリースした第1弾楽曲「夜に駆ける」が「オリコン週間合算シングルランキング」や「Billboard Japan Hot 100」で1位を獲得。今や、小中学校の給食時にも曲がかかっている(←私の息子が言ってました)というのだから、その拡散力は止まらない。
まさにデビュー半年で飛ぶ鳥を落とす勢いのYOASOBIだが、早くも第4弾楽曲「たぶん」がリリースされた。このスピード感もまたストリーミング時代の必然だ。すでに250万再生を突破している(2020年7月27日時点)。本作もまた、小説を原作としたナンバーであり、初のミドルテンポな楽曲に仕上がっている。やさしく、たゆたうように、寄り添うように……、想いがメロディにふわっと溶けていく。
原作小説は、しなの著『たぶん』(https://monogatary.com/story/48324)。まずは、YOASOBIのコンポーザーAyaseによる小説を解釈したリリック(歌詞)に心動かされ、ikuraのせつなき歌声に没入する。ミュージックビデオで想像の扉をくわっと開いて楽しみ、小説を読んで答え合わせ(?)をするのが喜び。YOASOBIが与えてくれたカルチャー体験は立体的だ。もちろん読んでから聴くのも、聴いてから読むのも、観てから読むのだって自由だ。
今回、ミュージックビデオは、クリエーター・南 條沙歩が担当。二人暮らしだった部屋が、在りし日の回想と共に徐々に一人暮らしの部屋に変わっていく渇いたせつなさを見事に描ききっている。さらに、ikuraによる原作の朗読と360度映像で楽しむティザー映像という仕掛けも見応えたっぷりだ。
当初は謎のユニット感もあったが、朝のテレビ番組の露出、YouTube人気番組『THE HOME TAKE』でのikuraの名パフォーマンス、そしてニッポン放送『YOASOBIのオールナイトニッポン0(ZERO)』への出演など、徐々に少しずつ、メンバーの魅力的なパーソナリティーも明るみになってきた。当サイトでもAyaseに初取材を敢行している。(https://music.fanplus.co.jp/special/2020031504877a44d)
そうだ、小説がフィーチャーされた時代背景を深掘りしておこう。数年前、大人はメディアを通じて“子どもの活字離れ”と、さも知ったように切り捨てたが、子どもたちは学校の“朝読書”の習慣、中学生以降はスマホやタブレットというガジェットの存在など、活字とともに生きている。特に読書習慣は増えており、そんな時代背景にズバッとYOASOBIがコラボレーションした“小説”というカルチャーはハマったのだろう。楽曲単体としても、朝のちょっと冷たい空気を感じながらも、ふと残留思念というとスピリチュアリティになってしまうが、相方が家に残した変わらない空気の存在がよく描かれている(ギミックがあるのだが!)。ミュージックビデオでリリックをもとにシーンの変化を感じながら観るだけでグッとくる。YOASOBIはすごいなぁ。そうそう“ぎゃあ”ってなるから、小説も合わせて読んだ方がいいよ。
【文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
<配信リンク>
https://orcd.co/adbvzwj