レビュー
神山羊 | 2020.09.30
新時代のサウンドクリエイター、いや“シンガーソングクリエイター”という呼称がふさわしい、神山羊。歌唱、詞曲、アレンジを一気通貫で手がけ、Spotifyが選出する2020年、飛躍が期待される注目の新進気鋭・国内アーティスト10組をフックアップする「Early Noise 2020」に選ばれた逸材だ。
神山羊が注目されたきっかけは、2018年11月3日に初めてYouTubeへ投稿した楽曲「YELLOW」。叙情的なリリックと洗練されたグルーヴ感のあるダンストラック、そして東洋医学によるビビッドなアニメーション映像が瞬く間に口コミで広がり、2020年9月時点で6000万再生を突破。本作は、まったくのノンプロモーションながらティーンを中心にTikTokでも話題となり、4つ打ちに合わせた二次創作パフォーマンスや、車のロゴをノックする動画など10万を超える動画がティックトッカーからn次創作的に投稿され、日々シェアされ続けてきた。
あれから1年、プライベートレーベルe.w.eより2枚のミニアルバム『しあわせなおとな』(2019年4月3日)、『ゆめみるこども』(2019年10月23日)のリリースを経て、最速でソニーミュージックからメジャーデビューの発表となった。まるで海外アーティストのようなサクセスストーリーだ。
そんな神山羊が2020年下半期、満を持してリリースする最新デジタル・シングルが「Laundry」である。
なお、今作「Laundry」のジャケットには、神山羊の「YELLOW」、「おやすみ、かみさま」のミュージックビデオを手掛けた東洋医学によるイラストが起用されていることにも注目したい。
歌い出しが<ゆらゆらゆらゆら 踊って踊って 朝がくるまで 踊り疲れたら 眠ればいい>とはじまる本作は、声の響きがたゆたうように優しい雰囲気で展開されていくポップチューンだ。R&Bテイストで柔らかに跳ねるビートと、呼応するシンセポップにダンサブルなサウンドは、自由度の制限されたコロナ禍の日常において、我慢を強いられた生活で傷ついた心を浄化、“Laundry=洗濯”してくれるかのようなナンバーだ。
「YELLOW」同様、イントロからインパクトある“ゆらゆら”する動作を促すワード展開はTikTokでの拡がりを楽しみにしたい軽やかなポップセンスだと思う。
もはや、神山羊の出自を知らないリスナーも多いかもしれない。ボーカロイドクリエイター時代は有機酸と名乗り、アンダーグランドな人気を得ていた彼だが、神山羊名義となり自身で歌唱することになって作品性の幅が広がった。よりキャッチーな要素がフックとしてあらわれてきたのだ。
最新曲「Laundry」は、Spotifyがその週で最も注目する楽曲をトップカバーへと起用する「New Music Wednesday」にも選出され、あらたなリスナーも増えつつある。ルーツであるロックにとらわれず、時代に寄り添ったR&Bや進化し続ける次世代J-POPセンスに富んだ最旬ポップミュージックを生み出す類稀なる才能、神山羊に注目すべきだ。
【文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
神山羊 - Laundry【Music Video】
配信はこちら
https://kmym.lnk.to/laundry
リリース情報
Laundry
発売日: 2020年09月23日
価格: ¥ 238(本体)+税
レーベル: SMAR
収録曲
01.Laundry