Acid Black Cherryは、ジャンヌダルクのボーカルyasuのソロ・プロジェクトの名前だ。バンド・シーンの中にあってAcid Black Cherryは異質の存在。だが、一方でyasuのボーカリストとしての魅力をストレートに味わえるプロジェクトでもある。クールなルックスと、対極にあるゆるいジョーク、そして何といってもその歌のリアルな表現は、まさにyasuだけのものだ。
　「少女の祈り3」と題されたニューシングルは、1stアルバム『BLACK LIST』に収められていた「少女の祈り」の続編となる曲。不運で最悪な人生の中で初めて見つけた光を、yasuのスタイルで描く。♪今このお腹が痛いけど　生きる意味見つけた♪というフレーズが秀逸だ。yasuのアーティストとしてのアウトラインと、「少女の祈り3」についてきいてみた。

EMTG：どんな少年だったんですか？

yasu：漫画家になりたくて、絵ばっかり描いてましたね。音楽は好きだったけど、身近にはなかった。それが中3のときに同級生が誰かからエレキギターをもらって、バンドを組むことになった。で、「お前、ボーカルね」って言われて。

EMTG：そんな簡単な始まりだったんだ(笑)。

yasu：(笑)基本的には“ゴレンジャーごっこ”ですもん。

EMTG：“ゴレンジャーごっこ”って？

yasu：バンドって、ボーカルが主役だとは思ってないんです。メンバーそれぞれが主役で、自分はそのワンピースであればいい。それを誇りに思うっていうか。バンド音楽が好きなんですね。そういう意味では、自分の声が嫌いだったから、ギターを練習してましたもん。

EMTG：へー、そうだったんだ。てっきり自分がいちばん好きなナルシストかと思ってた(笑)。

yasu：そんなことないです。今でも、歌ってて気持ちいいと思ったことないですよ。ライブの最中に楽しいと思ったこともない。それでも、なんでライブやるかっていうと、ライブが終わって、極度の緊張から解放される瞬間がたまらないから。

EMTG：そうなんだあ、きいてみないと分からないもんだなあ。

yasu：あはは。自分に酔うことも、あんまりないですね。カッコよくするよりも、ちゃんと歌える方がいい。それで結果、カッコよければいい。ってか、ちゃんと歌えてないのにカッコつけるのはダメでしょ。

EMTG：確かに。

yasu：レコーディングしてて、ミックスのとき、よくディレクターさんは歌を上げろっていうけど、僕は下げろって言いますもん。聴こえなかったら、それは僕の責任だと思うから。

EMTG：いいね。はっきりしてる(笑)。今回の「少女の祈り3」の前半は、かなり悲惨な歌だね。

yasu：ハッピーな歌とか、応援歌みたいなのは好きじゃないんですよ。悪を歌ったとしても、そこにウソがなけりゃいいかなと思って作ってるから。身近にこういう人間がいて、そういう人の気持ちを理解はできなくても、ボヤっとは分かる。思春期の頃、将来に対する不安を何にぶつけていいか分からずに、いろんなことやっちゃって、それを受け止めて今がある人もいる。そういう人に何かしら響けばいいかなと思ってます。

EMTG：かっこいいね。

yasu：僕はカッコつけないのに、カッコいいのが好きなんですよ。ユニコーンの奥田民生さん、好きです。狙ってないのにカッコいい。

EMTG：そうだね。

yasu：民生さんもすごくバンドが好きなんだなって思う。僕も“ピン”に興味がない。だから“仮面ライダー”より“ゴレンジャー”っていうか。

EMTG：だとしたら自分は何レンジャー？

yasu：うーん、ミドレンジャーかな(笑)。

EMTG：ビミョー(笑)。

【取材・文 平山雄一】