先日、初の全国ツアーのファイナルで、12月18日に武道館をやると宣言したSPYAIR。SPYAIR史上最高の快挙か、史上最大の暴挙か騒然となる音楽シーンを尻目に、彼らが放つニューシングル「0 GAME」(ラブゲーム)が、映画『アメイジング・スパイダーマン』日本版のテーマソングに抜擢された。「0 GAME」とはテニス用語で“ボロ負け”のこと。ダーク・ヒーローNo.1のスパイダーマンにはぴったりのロック・チューンとなっている。
　デビュー以来、加速することをやめないこのバンドの今と未来について、ボーカル・パフォーマーのIKE(vo)、コンポーザーのUZ(g)、リリック・ライターのMOMIKEN(b)に聞いてみた。今回はKENTA(dr)とENZEL☆(DJ)はお休みです。すみません。

EMTG：「0 GAME」は『アメイジング・スパイダーマン』日本版のテーマソングには、どうやって抜擢されたの？

UZ：もともとスパイダーマンが好きだったので、ぜひやりたかったんです。いくつか曲をプレゼンした中で、「0 GAME」を映画サイドが気に入ってくれた。曲は３年前くらいからあったものです。

MOMIKEN：僕は映画が大好きで、自分らの曲が『アメイジング・スパイダーマン』のエンドロールに流れてきて欲しかった。最初、この歌の歌詞はちょっとフラチなラブソングだったんですけど、違ってるなと思ったんで書き直しました。ボロ負けしても、どうあらがったって明日は来る。だったら、どうやって運命に立ち向かっていくかっていう。

EMTG：それにしても、「0 GAME」＝“ボロ負け”って、今までのSPYAIRの中でいちばん凹んでる(笑)。

IKE：そうですか？(笑)　俺はこの歌を全然ネガティブにはとらえてなくて、リアルを感じます。人生は自分の思ってるようにいかなくて、嫌なときもあるけど、それでも歌い続けるのが俺の運命だと思っていて。その運命をこの歌に重ねた。MOMIKENが歌詞を少し直したけど、前からあった歌なので自分の体の中にメロディが入っていたので、抵抗なく歌えましたよ。

MOMIKEN：“クモの巣”のところを直したんですけど、スパイダーマンだからちょっとやり過ぎかなとも思ったけど、何回も聴いてみて納得してます。

IKE：それも含めて、昔の曲だけど、生まれ変わって、今はすごく気に入ってます。その意味では、さっき言われたように、今までのSPYAIRの歌とは少し違っているかもしれない。

EMTG：スパイダーやクモの巣っていえば、これまでも槇原敬之の「ハングリー・スパイダー」や、hideの「ピンク・スパイダー」の名曲があるけど、意識した？

IKE：槇原さんのは好きだけど、ミュージック・ビデオがすごくエグい(笑)。

MOMIKEN：hideさんは僕が中２のときに亡くなって、すごくショックだった。学校の友達もそうだったから、キャンプに行ったときとか、バスの中でカラオケでみんなで歌ってました。今回、スパイダーつながりで脳裡をよぎりましたけど、この歌詞には直接は影響してません。

EMTG：そもそもスパイダーマンは、３人にとってどんな存在なの？

UZ：オレの憧れの数々のロックバンドが、スパイダーマンの映画の音楽をやってきた。エアロスミスとか、ニッケルバックのボーカルのチャドが主題歌を歌っていたりして、スパイダーマンの映画とロックバンドが結びついてる気がしてた。だから今回、主題歌をやることになって、オレたちがロックバンドとして認められたことになる。すごく嬉しいですよ。

IKE：昔から好きで、特に“黒いスパイダーマン”って呼ばれてる“カーネイジ”が気になってた。シルバーのリングをしたり、テイストがロックだから。スパイダーマン自体も、スーパーマンとかとは異質なダークヒーローだし。たぶん、バットマンより悪い。好き過ぎて、スパイダーマンのパンツまで買ったんですけど、この前、履いてみたらそれが“アメイジング・スパイダーマン”のパンツで、運命を感じました(笑)。

MOMIKEN：僕は昔から映画ファンで、それも映画館で観るのが好きで。子供の頃はハリウッド映画しか観なかった。小難しい、考えさせられるようなのが好きだったんですよ。中で、スパイダーマンは、ロックの匂いがするからストライク！　だから今回、自分たちが音楽やれたらすごいよねって思ってた。選ばれたときは、嬉しいより、驚きました。でも、もし他の日本のバンドが選ばれたら、「なんで日本人がスパイダーマンの音楽やるんだよ」って怒ってたかもしれない(笑)。

EMTG：あははは、ちょっとヒガミも混ざってね。

MOMIKEN：そうそう(笑)。ただ、自分は映画をたくさん観てきたから、どういう歌が映画に合うのか知ってる。イントロは長くてドラマティックなほうがいいなとか。そのほうがワクワク感がある。映画を観る人が、「0 GAME」の生音とエレクトロが混ざった長いイントロを聴きながら、「新しい外タレかな？」と思ってるところへ日本語の歌が聴こえてきて、「あ、日本人だったんだ」って驚いてもらえたらいいですね。

EMTG：デジタルなサウンドに、ノスタルジックなピアノの音が混ざってるのもかっこいい！

UZ：あれも３年前にすでに入ってたんですよ。オレがトラックを作り始めた時期で、今はもうやらないようなことをやってる。でも今回、それがいいと思ったんで、少しブラッシュアップしましたけど、フレーズは当時のまま使ってます。

EMTG：時代がひと回りして、かっこよくなったって感じかな？

UZ：そうですね。哀愁漂うピアノの音が、映画にあってると思います。

EMTG：そして最後に、現時点での武道館への意気込みを聞かせてください。

MOMIKEN：正直、今は、ほんとに武道館がやれるのか見えてない。SPYAIRは他のバンドとは違う道を歩いてきたと思う。普通だったらライブハウスを回って、大きくなっていく。でも僕らは、名古屋の路上にとどまって、音楽に興味のない人にもアプローチしながらやってきた。音楽に興味はなくても、僕たちを必要としてくれる人に向かってやってきたと思うんですよ。ただ、ロックの人たちか見ると、“ロックの聖地・武道館”をそんな奴らがやるのはけしからんって言うかもしれない。だから、僕たちの正しさを証明するためにも、ちゃんと武道館でライブをやるっていう意気込みがあります。文句、言わせねぇぞって。

EMTG：いいね、いいね。でも大変だよ、武道館は。

IKE：知ってます。俺は、武道館をファイナルの赤坂ブリッツで発表したときに、その言葉を会場のファンたちはどう理解するのかなと思ってました。で、歓声が上がった。そのとき、「この人たちは、俺らと夢を共有して、一緒に追いかけてくれる大事な人たちなんだ」って実感した。今のSPYAIRのままでは、武道館に足りないことは分かってる。だから、バンドとしての基礎をしっかりやって、武道館をいっぱいのファンと一緒に盛り上げる“いい景色”を見たいと思ってます。

UZ：俺はまだ、武道館に意識は向いてないですね。まず、明日のこと、夏のこと。夏フェスや自分たちのイベントで、他のバンドから刺激を受けながら、SPYAIRっていうバンドを認めてくれる人を増やすことがいちばんだと思ってる。きっと、この夏の成果で武道館が決まると思う。今は、夏に向かって自分を高めてます。

EMTG：どんな武道館になるのか、楽しみにしてるね！

【取材・文：平山雄一】