各曲赤い糸を感じながらも、ヒロインの不安定さが多彩な楽曲として結晶化されたCharaのニューアルバム

Chara | 2012.10.26

 Cocoon=繭(まゆ)を差すタイトルの球体の柔らかいイメージと、見る者のイマジネーションを揺さぶるエッジーなジャケットビジュアルは相反しているようで、作品を聴けばその意図について腑に落ちる部分が多いことだろう。キューンミュージック移籍後、シングル「オルタナ・ガールフレンド」「プラネット」「蝶々結び」の3作のシングルをリリースし、その間、各地の夏フェスやイベントでアップデートされたステージを体現してきた彼女の新しい、そして本格的な表現が遂に届けられた。さまざまな心の本当の瞬間を捉え、ジャンルに拘泥しないCharaらしさが多彩な楽曲として結晶化されたニューアルバムについてじっくり話を訊いた。

EMTG:アルバムのお話の前に、移籍される前後にCharaさんのライブを凛として時雨との共演と「NANO MUGEN FES.」で拝見していまして。ぜひ、あの時の感想を知りたくて。
Chara:凛として時雨のお話がきた時は、息子がけっこう聴いてたから、「話きたけど、どう?」「ママがやりたければいいじゃん」って(笑)。息子に気に入られたいんで(笑)、「やっちゃおう!」ってなったというか、来るお話を知らないあいだにお断りするみたいなのは好きじゃないので。その点、今の事務所の体制はすごくシンプルでガラス張りだから、私に直接伝わるんで。それに同じジャンルというか似た括りで集まるのはよくあるから。
EMTG:どちらも出演してみていかがでした?
Chara:ソロだけど出てる時はサポートの人も含めて、みんなが楽しめてるかどうかは見てる人に伝わっちゃうと思うので、そこは、”バンドばかり出るからって別に激しくなくていいじゃん”というか、”心をちょっと違う筋肉運動させればいいんじゃないかな?”って。そういう感じで向かったりしたかな。
EMTG:そうしたイベントと、3枚のシングルの自然な流れがあったのでアルバムもすごく心にストンと腑に落ちたんですよ。
Chara:ああ、なるほど、そうかもしれないですね。今回、ミクスチャーになったんですけど、結局。ま、移籍第一弾だし、スタッフも初めてな人がほとんどだし、そういう意味でも音楽=Charaなので、いろんな私を知ってもらう良い機会というか。いろんなテンポ感の曲とか、いろんな声の出し方や歌詞の使い方、サウンドプロダクションの曲があったことは正解だったと思います。そのね、やっぱり(作品を)作るのは人との繋がりだと思うから。
EMTG:なるほど。「Cocoon」は曲としても収録されていますが、この曲からアルバム全体の世界観が見えたのでしょうか?
Chara:いや?最初は“分身”っていうイメージがあって。移籍第一弾シングルの「オルタナ・ガールフレンド」は“恋と革命”っていうテーマで「私の英雄探し」みたいな感じで始まったんですね。「分身を探している、私は」というか。でも“分身”って漢字の形が嫌いで。次にイメージはそれで、途中にソウルメイトよりもうちょっと熱い感じの“ツインソウル”っていう言葉が浮かんだんだけど、宗教っぽい感じが嫌で(笑)。いろいろ考えていくうちに大橋くん(好規=大橋トリオ)に鍵盤弾いてもらった「糸し糸しと言う心」の頃には<糸へん>が気になってて。「蝶々結び」も同時に書いてたところで、“結ぶ”もそうだし編むとか絆とか、素直の素とか純粋の純とか繋ぐとか。繭(コクーン)自体も糸へんが入ってるんですけど、けっこう「おお!」と思って、「糸へんすげー!」と。「糸し糸しと言う心」って書いて恋じゃないか!と(笑)。それでグッときて。
EMTG:まさに糸で繋がった、と。でもどの曲も赤い糸を感じながら、ヒロインは不安定な感じがしますね。
Chara:あ?、不安なんでしょうね。寂しがり屋ですからね、私。
EMTG:でもその不安定さが正直というか、そう感じるので聴いてて落ち着くんですよね。
Chara:ああ、なるほど。ホントは大丈夫じゃないんだけどっていうところをわかるという(笑)。
EMTG:ただCharaさんの歌詞って答えはないから、音楽の温度としてそう受け止めてるというか。
Chara:実際、作ってる時は溢れてきた感情で楽器持ったりして、ふわっとできた構成を割とそのまま活かしてるので、伝えたい気持ちはあるけど、「なぜなんだろう?」っていうことはなぜのままで。たぶん楽器が力を貸してくれてメロディと和音になっているから、今おっしゃったことは面白いですね。自分がプロデュースした曲だと、よりそういうふうになるかな。うん。
EMTG:そして今回、アルバムのオープニングの「18」と本編ラストの「Cocoon」がソウル的なアプローチなのが久しぶりの感覚だなと。
Chara:そこに気づいてくれたのは嬉しいです。基本はソウルの精神性が好きで、影響受けてる部分はあると思うんですけど、本物には勝てないというか。でも、ボーカルが進化した今の声だからやりたいっていうのもあったし、シンガーの自分をプロデュースする力で守ってあげないとっていうのもあるし。自分の声に自信がなかったから嫌いな頃もあったんですよ。でもこっちの才能(曲作りやプロデュース)が「だ?いじょうぶ、だ?いじょうぶ」って(笑)補っていって。自分の声も老いたりするんだけど、いい感じでこの何年かで向きあって知ることができてたんで、それは進化した感じも合わせて、今、すごくよくて。だから自分らしい内側にある、そういう…特にソウルをやるって感じじゃないけど、でも「あるもの」だと思うんですよね、Charaに(笑)。
EMTG:あると思います。そして楽曲の「Cocoon」は分身というニュアンスが、ダブルになってるボーカルや歌詞のせめぎ合ってる部分にすごく感じられて。
Chara:ああ、そうですね、ホントだねぇ。これ若い子にわかるかどうかわからないけど…さっき坂本美雨ちゃんと話してた時に「バツイチに憧れる」とか言ってて、「なんだよ!」と思ったんだけど(笑)。もしかしたらバツイチぐらいの人のほうが本当の美しいものとか、つらさとか楽しさとか喜びっていう意味では、大人っていうかさ、そういう聴き方になるとかいろいろあるのかもしれないね。
EMTG:ま、バツイチは憧れる対象かどうかはさておき(笑)、歌詞の言葉選びが自由ですよね。
Chara:こんなに日本語ってたくさんあって、楽しいんですよね。なんかこう、日常会話だったりその辺に落ちてるシンプルな会話を年々歌詞に入れられるようになったというか。それとは逆にここにきて「これは使ったことなかった」って言葉も一杯あるし。“股関節”(「Lita」)まで今回入りましたから、今回は(笑)。
EMTG:ハハハ!でもどこの関節でもなく股関節なのは間違いないと思います。それから曲の多彩さについですが、「DADAAAN」でのNO WAVEっぽい感じ、これがCharaさんから出てきたのは衝撃です。
Chara:全然、新しくないんだけど、担当ディレクターも気に入ってくれたので、「あ、そう?じゃ、やっとこう」みたいな(笑)。シングルではこういう感じは出せないし。
EMTG:「オルタナ・ガールフレンド」にも参加しているNAOTOさん(ORANGE RANGE、delofamilia)がもう1曲で参加している「Waiting for You」など、タイプの違うロックチューンが聴けますね。
Chara:「Waiting?」はちょっとオールディーズっぽいイメージもあって。
EMTG:この曲は英語詞ですが、ストレートですね。
Chara:日本語で歌うよりもたぶん何言ってるか分かるかもしんない(笑)。
EMTG:たしかに(笑)。デビュー時から現在までアップデートされ続けるCharaさんらしさが詰まった新作だと思います。以前から好きな人には、たまらないんじゃないかなと。
Chara:まぁ毎回言ってるんですけど、「今回のアルバムがいちばんいい」って。でもアップデートされてるんですよね。ま、こういう(右肩上がり)んじゃなくて(丸を描きながら)こういうのが好きなんだよね。「Cocoon」って文字自体、丸々しくて。それに今年はいちばんお月樣を見てる年だから。なんかイベント多かったじゃないですか?
EMTG:金環日食とかスーパームーンとか。
Chara:そうそう。「Cocoon」を歌った日は月の移動が早かったし。いちばん見てるもんなぁ、今年はみんなが。人間だからさぁ、影響受けるじゃん?神秘的な世界だけど、”ずっと神秘的なものに導かれて生きるぞ!!”と思って。
EMTG:それは制作期間に思ったんですか?
Chara:そう。移籍したころから。”私はもう神秘的なものに導かれて生きたい。恋を含めて(笑)”、みたいな。
EMTG:「満月だからしょうがない」とか?(笑)
Chara:理由は分からないでいるということで。「この音がなんで好きかはわからないけど、好き」みたいなことでレコーディングを進めて。「このメロディ、なんでグッときたかはわからないけどグッときてる」(笑)、そういう感じでやってましたからね。

【取材・文:石角友香】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル Chara

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リリース情報

Cocoon(初回盤)

Cocoon(初回盤)

2012年10月31日

KRE

ディスク:1
1. 18
2. DADAAAN
3. オルタナ・ガールフレンド
4. Lita
5. 木枯らしと歌う
6. Waiting for You
7. プラネット
8. 蝶々結び
9. 糸し糸しと言う心
10. 特に
11. Cocoon
12. 甘えてよ
ディスク:2
1. 蝶々結び (Music Video)
2. 蝶々結び (メイキング映像)

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ベレー帽 リッキー・リー・ジョーンズ
  秋なのでベレー帽を作りたくて、リッキー・リー・ジョーンズがアルバム『浪漫』で被ってるベレーをチェケラするためにYouTubeを超見てたの。そうしたら衣装がまた可愛くて、レーシィな手袋も欲しくなっちゃった。ま、秋のファッションチェックも兼ねることができました(笑)。


■ライブ情報

〜Forever Young〜「チャボとチャラの日」
2012/11/09(金)南青山MANDALA
2012/11/10(土)南青山MANDALA

Chara 2 Nights Special
2012/12/11(火)ビルボード東京

Chara Live Tour 2013 “Cocoon”
2013/03/02(土)熊本DRUM Be-9 V1
2013/03/03(日)福岡DRUM LOGOS
2013/03/10(日)高崎club FLEEZ
2013/03/15(金)仙台Rensa
2013/03/17(日)新潟LOTS
2013/03/20(水・祝)札幌PENNY LANE 24
2013/03/23(土)Zepp Tokyo
2013/03/26(火)Zepp Namba
2013/03/27(水)Zepp Nagoya
2013/04/05(金)なんばHatch
2013/04/06(土)高松オリーブホール
2013/04/10(水)広島クラブクアトロ
2013/04/11(木)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2013/04/13(土)渋谷公会堂

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