【後編】アルバム『COME RAIN COME SHINE』をリリースする布袋寅泰のロングインタビューを掲載!

布袋寅泰 | 2013.02.06

 アーティスト活動30周年と50歳の誕生日を自身で見事に祝った後、布袋寅泰は昨年夏にロンドンに移住。世界を視野に入れた活動を開始した。その第一歩として、まず本拠ロンドンで年末にライブを敢行。一方、先行シングル「Don’t Give Up!」に続いて、2月6日にアルバム『COME RAIN COME SHINE』をリリースする。
 注目のニューアルバムは切れのいいギターが前面に押し出されいて、BOΦWYを連想させるポップ感と、いかにも英国ロック調の組曲を含む爽快な作品になっている。
 気合充実の新たなスタートを切った布袋に、新作と心境について聞いた。なおEMTGの読者に向けての、思いを込めた超ロング・インタビューになったため、スペシャルとして2回に分けてお届けする。【後編 前編はこちらから

EMTG:2曲目の「嵐が丘」を聴いたとき、BOΦWYを思い出した。布袋さん自身もアニバーサリー・イヤーのライブでBOΦWYの曲を演奏しているときに、BOΦWYのようなポップなロックを今やったらどうなるのかなっていう気持ちになったのかなと思いながら聴いてたんだけどね。 
布袋:鋭い! そんなところもありましたね。どっちかって言うとやっちゃいけないっていうか、解散以降はなるべくBOΦWYらしくならないようにやってきたから。なんか後を追ってるような気分に自分がなりたいわけでもなかったし、なぞりたくないっていうか。ただ30周年でいろんな曲をやると、なんだかんだ言っても全部俺なんだなと思えた。特にギターやメロディ作りに関してだけど。だとしたら、今それをやったらどういうものが出来るか?っていうことも考えるよね。
EMTG:BOΦWYも含めて、すべて“自分の歴史”だものね。「Cutting Edge」とシングル「Don`t Give Up!」の歌詞は、いしわたり淳治君が書いてる。
布袋:いしわたり君も、めちゃくちゃのようでいて(笑)、ただただ言葉の遊びじゃなくて、どこかを見据えてるような歌詞を書く。彼、面白いよね。今回、カラフルなアルバムだし、いろいろ盛りだくさんなので、やっぱりこういうチャレンジングな印象っていうのはみんなに常に持っていて欲しいから。「Cutting Edge」から始まるのは軽快でいいんじゃないですかね。
EMTG:「My Ordinary Days」は、組曲風で、ブリティッシュ・ロックの影響をすごく感じた。
布袋:こういうスラップスティックな曲を、今までずっとやりたかったんですよね。英国ロックの特徴でもあるんだけど、キンクスや10ccみたいな、ちょっと芝居がかったものを。でもなかなか出来なかったんだけど、たまたま去年は森雪之丞さんのミュージカル「サイケデリック・ペイン」で無理難題を押し付けられた(笑)。ぐちゃぐちゃな台詞に全部音をつけるところにヒントを得て、そのリベンジもあり、逆に森さんに無理難題を投げ返してやれと思って、曲を先に作って「全部に歌詞を書いて」って送った。「ヒーッ!」って言うかと思ったら「僕、こういうの、大好物!」って喜んでましたけどね(笑)。
EMTG:内容も、布袋君には珍しくコメディだし。
布袋:本当に昔からやりたかったんですよ。スラップスティックで、日々が過ぎていく。『COME RAIN COME SHINE』っていうタイトル通り、雨の日も風の日も、この「My Ordinary Days」も1週間が巡り巡って河のようになっていく。30周年で、一周した感があったのかもね。諦めるっていう意味合いじゃなくて、そうやって巡って巡って、どんどん景色が変わって、僕達は前に進んでるんだっていう。この曲は僕のファンが聴くと「布袋さんらしいな」って思うんじゃないかな。一般の皆さんからする、布袋というとエッジの効いたロックンロールだから意外に思うかもしれないけど、本当は皆さんにはこういう曲を聴いてほしいんですよね。 最後にアビー・ロードでストリングスを入れたんだけど、ギターシンフォニーで一緒だったサイモン(・ヘイル)にやってもらった。ロンドンのストリングスは、今回のサウンドの特徴の中のひとつだと思いますね。
EMTG:「Rock’n Roll Revoluition」は、ギター・ソロがすごくかっこいい!
布袋:荒いやつね(笑)。ギターのリフものとメロディーが同居してる感じで、このソロはリズムを録ってそのまんまグインと一発で弾いちゃった。ストラトキャスター(ギターの種類)をこんなに使ったアルバムは初めてかもしれない。ゼマティス、ストラト、テレキャスター、この前のラウンドハウスのライブもその3本でやった。今の自分の中の3色。
EMTG:シンプルにやれてるんだ。
布袋:そういうことが出来るようになったっていうか。結構細かいことを気にしてたんですけど、今回はザックリとで良いんじゃない?って。頑張りすぎないとか、細かいことを気にしないとか。日本人の勤勉な良いところでもあり、悪いところでもあるところをちょっと今回は抜けれたっていうことで、今までよりも空間のある、楽チンなものになったのかもしれない。
EMTG:ラスト直前の「Dream Again」は、すごくきれいなバラードだね。
布袋:これはもうひとつのアルバムのテーマでもあって。僕のオーディエンスの中にだってさ、長い付き合いになると、夢に破れたやつもいるだろうし、ついこの間まで腕に抱いてたお子さんがもう中学生になって、一緒に歌ってたり踊ってたりするからね。「嵐が丘」のような、丘の上の気分とは違う、心の中の一歩っていうところでは、アルバムのもうひとつのテーマだった。
今、自分もそれこそ30周年で「みんな、とにかく夢だよな?」って思って「Dreamin’」を歌いながら、それは同時に自分にも還ってくるわけで。「ちゃんとお前も夢を見てるか? ちゃんと夢を追いかけてるか?」っていう。それもひとつの理由となって、俺は世界に向かおうと思ったしね。全部が全部上手く叶うはずがない。かと言ってファンのみなさんだって夢を語るのはいいけど、夢を実現して生きて行くのはそう簡単なものじゃない。この前、たまたま松井君が引退発表してたじゃない。彼はいろんな偉大な功績を残した。それをかなぐり捨てても、夢の一歩に向かったっていうことだと思う。
EMTG:「LONELY★WILD」の夢への向かい方とは違うね。
布袋:違いますね。あれから20年、諦めるんじゃなくて。 
EMTG:違う芽が出てくるっていう。
布袋:あぁ、そうかもね。この歌は「LONELY★WILD」とは違うところから見ている。
EMTG:改めて、ラストの「Promise」については?
布袋:うん。初めはこのアルバムに入れようかどうか迷ったんですけど。
EMTG:でもすごく収まってると思うよ。
布袋:そうなんですよ。ある日ね、同じファイルに入れてランダムで聴いてて、「Dream Again」から「Promise」に繋がって、ふと「いいなぁ」と思った瞬間があった。アルバム曲全てのアンサーソングみたいに「Promise」が響いて。あの震災があったときに、みんながそうであったように、ミュージシャンとして、ひとりの人間として、自分と向き合わざるを得なかったあのときに、自分に誓った想いっていうのは、そのまま生々しく残ってる。これが今回の僕の軽やかなスタートの一歩だったのかもしれない。これを作ったときはすごいヘヴィだったけど、それが既に時間として前に進んでるっていうものを感じますよね。だから入れてよかったなって思ってます。
EMTG:というところで、このアルバムを持ってツアーに出るわけだけど。
布袋:30周年はCOMPLEXもあって、懐かし系のメモリアルツアーが多かったんで、今回は僕の最新のサウンドとビートをお届けしたいなって。渡英したっていうのもあるし、日本に帰ってくる気持ちは今までと違うだろうと思う。やっぱりみんな1年に1回、俺との時間を楽しみにしてくれてるわけだから、ライブの2時間は日頃のことを全部忘れて思いっきり汗をかいてシャウトできる、華やかなショウにしたいなって思います。

【取材・文:平山雄一】

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リリース情報

COME RAIN COME SHINE(初回盤)

COME RAIN COME SHINE(初回盤)

2013年02月06日

EMIミュージックジャパン

ディスク:1
1. Cutting Edge
2. 嵐が丘
3. Don’t Give Up!
4. Never Say Goodbye
5. Come Rain Come Shine
6. My Ordinary Days
7. Daisy
8. Higher
9. Stand Up
10. Rock’n Roll Revolution
11. Dream Again
12. Promise
ディスク:2
1. Don’t Give Up! (Music Video)
2. Promise (Music Video)

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松井秀喜
彼は僕の「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」で打席に入ってくれてたから、すごいショックで。ニューヨークのヤンキーススタジアムに見に行って、スタジアムで俺の曲がかかって、松井君が打席に入って行って、俺の方にちょっと帽子をこうやって挨拶して。前の日に一緒に飯を食いに行ったとき 「明日絶対に打ちますから!」って言ってたけど、結局大きな空振り三振。バッターボックスから戻るときに、俺に向かってすいません……って(笑)。
前の晩に初めて会って、「なんで僕の音楽にしたの?」って聞いたら、ヤンキーズの4番の松井君がですよ、「だって世界の布袋ですよ!?」って。「いやいや、世界の松井から世界の布袋って言われる筋合いはないよ」(笑)。隣に居た人が「何を2人で世界自慢をやってるの?」って。
一緒にクラプトン見に行ったときには、楽屋に連れて行ってクラプトンに紹介したんだけど、クラプトンはイギリス人だから野球にあんまり興味なくて。「GODZILLA」って言っても、全然気がつかなくて。でもクラプトンのバンドのドラムの人が完璧にヤンキース・ファンだったから、「オーマイゴッド!」って完全にサイン大会になっちゃった(笑)。
松井君は、もの静かで、すごいジェントルマンで、イチロー君みたいな華はないんだけど、美しい男。その彼のひとつの夢が終わったっていうのは、ショックでしたよ。今まで貴乃花もそうだったし、友人が現役を終わるっていうのは寂しいですよね。それこそニューヨークでライブをやるときは見に来てくださいっていう話をしてたから。

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