最新アルバム完成。無限に広がるパスピエの世界

パスピエ | 2014.06.13

 最新アルバム『幕の内ISM』はタイトル通り、多彩なテイストの楽曲が満載された1枚だ。絶妙なアレンジによるサウンド、想像力を刺激する言語表現に彩られた全12曲が、リスナーを圧倒的な興奮へと連れて行く。シングルとして先行リリースされた「MATATABISTEP」や「あの青と青と青」などにときめいた人は、今作を聴けばますますパスピエに魅了されるだろう。そして、唯一無二のオリジナリティを最大限に発揮しつつも、郷愁を誘う息吹が脈打つ作品であるというのも興味深いポイントだ。彼らは何を想い、このアルバムの制作に取り組んだのか? メンバー全員にじっくりと語ってもらった。

EMTG:ツイッターのつぶやきによると、三澤さんはこのアルバムをヘビロテしているそうで。
三澤勝洸(G):自分でそこまで聴きこむっていうのは今までなかったんですけど、今回は聴いちゃうんですよね。抽象的な言い方にはなるんですけど、僕は音以外の部分にも何かが感じられるものが好きで。そういうものがこれにはあるなと。
やおたくや(Dr):前々作の『ONOMIMONO』は均整がとれたアルバムで、前作の『演出家出演』は均整を壊してみて、ライブを意識したアグレッシブな部分を出した作品。今回はその2作の中間という印象が僕にはあります。アグレッシブなところもあるし、聴きやすさもあるっていう。
大胡田なつき(Vo):経験してきたあらゆることを反映しつつ、改めて「パスピエ」っていう存在にじっくり向き合えたと感じています。
露崎義邦(B):今まで作ってきた中で一番多面性があると思います。レイヤーですごく重なっているようなイメージというか。経験してきたことをポップミュージックとして落とし込みつつ、いろんな引き出しを見せることができたアルバムですね。
EMTG:サウンドと歌詞の両方に感じたことですけど、歌舞伎感というか浮世絵感というか。色鮮やかで刺激的な和の香りが漂うのも、今回の特色だと思いました。
大胡田:わたしは今年に入ってから浮世絵とか日本画に興味があって。あと、曲から日本っぽさを感じたっていうのも、そういうものになった理由でしょうか。 だから意識的に日本らしい言葉だとか古語とかも入れました。
成田ハネダ(Key):今までも和の感じは出していたんですけど、さらに意識的に和を採り入れた部分はあるんですよね。単に和的な音階を使っているっていうことじゃなくて、それ以外の部分でも日本独特の民族感みたいなものを出せないかなと。
EMTG:パスピエってドビュッシーの『パスピエ』がバンド名の由来だったり、印象主義、印象派が背景にあるじゃないですか。例えばヨーロッパの絵画の印象派も浮世絵の影響から生まれましたけど、そういうことと今回の和テイストに重なるものを感じたんですよ。
成田:僕はもともと印象派の時代感とか背景が好きで。当時のフランスの音楽や絵画は、日本からすごく影響を受けたんですよね。逆に日本もフランスの文化から影響を受けたし。今もフランスと日本の文化って親和性があるというか、融合するものがある気がします。僕はそういうのが好きで、そのコンセプトでバンドを始めたんです。そういうものに感じる懐かしさみたいなものは、今回、表現できたのかもしれないですね。
EMTG:多彩なカルチャーが融合していて、ギラギラしたサイバー感もありつつ、懐かしさもある……っていうこのアルバムの感じ、すごく東京っぽいのかも。
成田:今の東京ですか?
EMTG:今の東京の風景だと思います。
成田:なるほど。
EMTG:まあ、「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」っていう曲があるから、そう感じたのかもしれないけど(笑)。
成田:(笑)この曲は『APPLESEED ALPHA』という映画の挿入曲ということもあって僕がイメージしている東京感みたいなものを音としても表現したいというのがありました。まさにおっしゃった「サイバー感」だったり、「虚言や虚像で埋め尽くされているのかもしれないけど、それさえもエンタテインメント」みたいなニュアンスですね。
大胡田:わたしはこの曲に最初、『ブレードランナー』っていう映画のイメージがありました。いろんな文化が入り混じっていて、サイバーで、ミステリアス……っていうような。『APPLESEED ALPHA』は海外の作品なので、日本らしいところも見せたいと思っていました。東京の夜の摩天楼の感じみたいな雰囲気とか。
EMTG:エキゾチックな香りもすごくある曲ですけど、そういう風味だと「アジアン」も強力ですね。無国籍ミクスチャーだなと。僕、これお気に入りなんです。
成田:無国籍感はまさに出したかったことです。「アジア」っていうワードは初期段階から出ていて。今までの「和っぽさ」とは違うそのイメージをどう表現しようか、いろいろ考えました。「アジア」って「和っぽさ」よりもさらにエリアが広がりますけど、根底にあるものって「エキゾチックさ」なのかなと。
EMTG:《いろはにほへとちりぬるを》っていう歌詞に衝撃を受けたんですが。
大胡田:深い意味とかよりも、雰囲気を出したくて、そういう歌詞になりました。この曲わたしも気に入ってます。
EMTG:大胡田さんの歌は、曲によって質感がかなり変わるのも独得ですよね。すごく生々しさを感じる瞬間もある一方、例えば「瞑想」とか、ボカロっぽいし。
大胡田:シンセっていろいろ音が変わるじゃないですか。ギターもベースも結構変わりますし……ドラムはあんまり変わらないけど。
やお:俺に気を遣わなくて大丈夫だから(笑)。
大胡田:(笑)自分の声もいろいろ表現が変わっていいと思うんです。だから曲とか歌詞に合わせて歌い方と声は変えていますね。
露崎:僕も今までの作品の中で一番いろんな歌い方をしていると感じています。その辺もぜひ、リスナーの方に聴いて頂きたいですね。
大胡田:歌についてメンバーから言われると恥ずかしい(笑)。
露崎:例えば「ノルマンディー」も独得なものがありますよ。
三澤:これ、歌詞から作った曲なんです。
やお:初めての試みですね。
大胡田:「ノルマンディー」は、もともと自分の曲として書いていた歌詞なんです。でも、パスピエで前から「詞から曲を作ろう」っていう話は出ていて。何個か渡した中から成田さんが「これ、ちょっと面白げ」って選んで、曲をつけてくれたんです。
成田:普通の歌詞だとストーリーがあって、面白い言葉やワードでフックをつけつつ構成する感じだと思うんですけど、この曲は「全部がフック」っていうものだったので、「これはすごいな」と。あと、言葉を越えたストーリーみたいなものが本人の中であって、それを音楽として表現できたら面白いだろうなというのも思いました。
大胡田:「駆け落ち」っていう言葉を使いたくて書き始めた歌詞でもあります。調べたら「駆け落ち=恋人と北へ逃げること」って書いてあって。「北かあ。ノルマンディーって北っぽいなあ」とか考えたりして。音と合わさって、いい曲になりました。聴いてくれる人の中で「Myノルマンディー」のストーリーを作って聴いてもらえたらいいなと思います。
EMTG:バンドサウンドのカッコ良さも、あらゆる曲で実感しましたよ。例えば「世紀末ガール」って、僕はパスピエ版レッド・ツェッペリンという勝手な感想を抱いたんですか。
三澤:もともとリフが決まっていて。普段とは別のギターを弾いたことでも、そういう感じが出たのかもしれないです。
成田:ギターソロはディープ・パープルだもんね?
三澤:そうだね。ノリで「キーボードとユニゾンで速弾きしよっか?」ってなって、やってみたら意外とハマったんです。
露崎:まさかあんな速弾き合戦になるとは(笑)。
EMTG:ツェッペリンで喩えた流れで言うと、「誰?」は、クイーンに通じるドラマチックなロックを感じたんですけど。
成田:曲はいつも「過去にやってこなかったことをやろう」っていうテーマで作っているんですけど、これに関しては「ミュージカルみたいなことをやってみたいな」と思ったんです。それで『ウエストサイド・ストーリー』を改めて観て、その影響から作りました。ミュージカルの音楽って歌が全体を引っ張っていって、譜面にしてみるとすごい変拍子になっていたり、独特なブレスや間があったりするんですよね。そういう感じが表現できないかなと。僕はEDMとかロックも好きなんですけど、そういうジャンルって、そのジャンルのビートにしばられちゃうところもあって。そこを取っ払ってみたいと思っていました。
EMTG:なるほど。あと、「あの青と青と青」とか「とおりゃんせ」はまさにそうですけど、パスピエの曲って一貫して郷愁を誘う風味もあるじゃないですか。「七色の少年」は、聴きながら何とも言えない気持ちになりましたよ。
成田:J-POPってこの数十年でいろんな変化があると思うんですけど、「誰しもが好きな日本のメロディ」というものがあると僕は思っていて。今までのパスピエはアレンジとか、リフとか、「歌だけじゃないよ」っていう部分をかなり意識してきたんですけど、この曲に関しては「歌モノ」「ポップソング」にしようと思って作りました。
EMTG:「わすれもの」は、子守歌的な懐かしさを覚えたんですけど。
三澤:昔からあった曲です。プリプロみたいな感じで録音したことがあったんですけど、今まで出すタイミングがなかったんですよね。
EMTG:リズムがかなり変化する、面白い構成ですよね。
やお:ストーリー性を出したくて、いろいろ考えました。3年くらい前からある曲ですけど納得いくものにするためにかなり悩みましたね。
EMTG:アルバムのラストは「瞑想」ですけど、すごく幻想的ですね。これで全体が締めくくられることで、独特な余韻が広がるんですよ。
やお:これは成田が「絶対に入れたい」って言っていました。
成田:僕はいつもアルバムの最後の曲に関して、「病みつきにさせたい」みたいな気持ちがあって。アルバムって1周聴いたら完結ですけど、音楽を作った側としては「ふと思い出した時にまた聴いて欲しい」っていうのもありますし、聴く人の音楽生活の一部になって欲しいっていう願いもあるんですよね。だから最後の曲で違和感を残すことで引っ掛かりが生まれたり、「もう1回聴いてみようかな」っていう感じに繋がるのかなと。
EMTG:「瞑想」で終わることで、程よい腹八分目になるアルバムになったのかも。
成田:なるほど。そうですね。割と前半がキャッチーでアッパーなものになっているので、終盤にこういう曲が来ることによって、2周目に聴いた時にまた別の印象が出てくるのかなと思います。
EMTG:1曲目の「YES/NO」でアッパーなモードへ一気に引き込まれ、多彩なナンバーをさらにどんどん連発し、8曲目の「MATATABISTEP」で熱い興奮の極みに辿り着き、その次の「アジアン」でエキゾチックな迷宮に入り、幻想的なムードの終盤の3曲へ……っていう構成ですね。最高に気持ちいいです。
成田:嬉しい限りです(笑)。
EMTG:ジャケット周りのアートワークに関しては、どういうイメージでした?
大胡田:ジャケットは『幕の内ISM』っていうタイトルから考えました。バラエティ感と、「和っぽいけど完全に和じゃない」っていうオリエンタル感をイメージしたんです。
EMTG:外国人がちょっと勘違いしている日本っぽさを感じました。日本と中国がごっちゃになっているような。「和なんだけど無国籍」っていうパスピエの音楽性とも通じると思います。
大胡田:わたし、まさにそういうのがすごく好きなんですよ。
EMTG:そういえば……タイトルが回文じゃないって、なかなかの大事件ですが。
大胡田:回文を今までに3回(『わたし開花したわ』『ONOMIMONO』『演出家出演』)やって、満足したっていうのもあるんですけど。今回、すごくいい曲を揃えられたので、バラエティ感みたいな部分に関連づけてタイトルにしてみようかなと。
EMTG:作品と全然関係ない質問ですが、幕の内弁当は好きですか?
大胡田:わたし、お弁当を問答無用で出されるのが好きなんです。自分で選べない感じがいいんですよ。ツアー中にお弁当が出てくるんですけど、「今日はこれか」っていうのが好き(笑)。
EMTG:すみません、完全に余談でした(笑)。では、最後に何かさらにおっしゃっておきたいことなどありますか?
露崎:そういえば、初回限定盤のDVDにライブの映像(2013年12月21日の赤坂ブリッツ公演)が入っているので、これもぜひ観て頂きたいですね。
成田:それ、言い忘れてた。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

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発売日: 2015年10月05日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: 1

収録曲

1

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リリース情報

幕の内ISM [初回限定盤]

幕の内ISM [初回限定盤]

2014年06月18日

ワーナーミュージック・ジャパン

幕の内盤[DISC1]
1. YES/NO
2. トーキョーシティ・アンダーグラウンド
3. 七色の少年
4. あの青と青と青
5. ノルマンディー
6. 世紀末ガール
7. とおりゃんせ
8. MATATABISTEP
9. アジアン
10. 誰?
11. わすれもの
12. 瞑想

幕の外盤[DISC2]
*初回限定盤特典 DVD
パスピエ TOUR 2013 "印象・日の出外伝"
at AKASAKA BLITZ (2013.12.21)
1. OPENING ~ S.S
2. デモクラシークレット
3. トロイメライ
4. 名前のない鳥
5. とおりゃんせ
6. フィーバー

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地下都市 吸血鬼

イギリスには吸血鬼1万5千人の地下ネットワークが存在する……っていう『ムー』的なことを調べました(笑)。『知的好奇心の扉トカナ』っていうサイトなんですけど。不思議な事件とかのことが載っているんです。

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ヴェルサーチ H&M CM

H&Mがいろんなブランドとコラボレーションをしていて。それのCMで使われている音楽が抜群に面白いんですよ。特にヴェルサーチのとのコラボレーションのCMの音楽がめちゃくちゃカッコ良くて。調べたんですけど、結局、誰が作った音楽なのか分からなかったです。

●三澤勝洸(G)
リトル・バーリー

最近大好きなイギリスのバンドです。彼らのことをウィキペディアで調べました。3人組なんですけど、ドラムがイエスのギタリストのスティーヴ・ハウの息子らしいです。「そっかあ」と(笑)。

●露崎義邦(B)
速い鳥

ハリオアマツバメっていうのが速いらしいです。諸説あるらしいですが、時速が最大で300km/hくらいらしいです。落下する速度が速いのはハヤブサだったり、速い鳥にもいろんなタイプがいるみたいですけど。

●やおたくや(Dr)
お茶の子さいさい 語源 由来

「お茶の子」は「お茶に添えて出される茶菓子」のこと。お茶の子は簡単に食べられるから、「簡単にできること」を「お茶の子さいさい」と言うようになったらしいです。


■ライブ情報

YATSUI FESTIVAL! 2014
2014/06/21(土)東京・TSUTAYA O-EAST/TSUTAYA O-WEST/TSUTAYA O-nest/TSUTAYA O-Crest/duo MUSIC EXCHANGE/7th FLOOR/club asia/VUENOS/Glad
※タイムテーブル、出演会場は後日発表となります。

UNISON SQUARE GARDEN presents.『fun time ACCIDENT』supported by SMA40th
2014/06/22(日)東京・EX THEATER ROPPONGI

DUM-DUM LLP presents.『Kill your T.V.』Premium Show
2014/06/24(火)東京・渋谷CLUB QUATTRO

rockin’on presents 「JAPAN’S NEXT vol.3」
2014/07/13(日)TSUTAYA O-WEST

神聖かまってちゃん「ネッとこどっこいしょ☆!対バンツアー」
2014/07/17(木)梅田AKASO

ROCK KIDS 802 -OCHIKEN Goes ON!!- SPECIAL LIVE 「HIGH! HIGH! HIGH!」
2014/08/01(金) 大阪・なんばHatch

そうだ!LOTSへいこう!!
2014/08/06(水)新潟LOTS

rockin’on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014 Supported by BOSE
2014/08/10(日)国営ひたち海浜公園

トップス25周年「COAST PARTY 2014」
2014/08/19(火)大分県・T.O.P.S Bitts HALL &BRICK BLOCK

WILD BUNCH FEST. 2014
2014 /08/23(土)山口県・山口きらら博記念公園

JA KYOSAI Presents RADIO BERRY ベリテンライブ2014Special
2014 /09/07(日)栃木県・井頭公園 運動広場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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