T.M.Revolutionがニューシングル「突キ破レル-Time to SMASH !」で見せた進化とは?
T.M.Revolution | 2014.08.06
- EMTG:ニューシングル「突キ破レル-Time to SMASH !」は、発売に先駆けて、新たなバージョンでのミュージックビデオが発表になりましたね。まさにスタジオ・セッションという感じなんですが、なぜこういう映像を収録したんですか?
- 西川:そもそも「突キ破レル-Time to SMASH !」のミュージックビデオをどんなものにしようかって考えた時に、2月に出したスプリットシングル(=「Count ZERO | Runners high ~戦国BASARA4」)の話を出さないわけにはいかないんですけど……。実は「Count ZERO」って、去年のイナズマロックフェスで初披露したんですよ。で、そこから2月のリリースまで約半年ぐらいあったんですね。そのあいだにシンガポール公演があったり、ほかのライブイベントがちょこちょこあったりすると、当然、楽曲自体も育つんです。そのあとのリリースだったんで、多くの方はライブでブラッシュアップされた方の音を先に聴いているわけなんですよ。なので“CDがちょっと物足りないかも”っていう意見が多く聞かれまして。もちろん、そういう意見はこれまでもよくいただいたし、『UNDER:COVER』っていうシリーズでは、そうやってライブで進化させた楽曲を作品にしたりもしてきたし。だから、この映像では、敢えて去年ずっとやってきたツアー“T.M.R LIVE REVOLUTION’13 -UNDER:COVER2-”の世界観を引き継ぐような形で表現してみようと。だから、ギターリフもリズムパターンも全然違う形にしたんです。曲って、オーディエンスの声が入って初めてライブ会場で完成するんだってことは、自分は常々言い続けてきましたからね。ただ、誰もがT.M.Revolutionのライブを見て完成形が聴けるわけじゃないし、音源より先に別な何かで知ってくれる人もいるじゃないですか。
- EMTG:特に最近はテレビだったりCMだったり……いろんな入り口がありますもんね。
- 西川:そうなんですよ。だったら、リリースのタイミングで、自分の考える完成形に近いものを届けられたらいいのかなと。それで撮影するに至るわけです。
- EMTG:ちょっと新しい発想ですね。
- 西川:楽曲のアレンジも、いろんなことに挑戦してきた中で、ラウドな方向っていうのは自分的にやや食傷気味で。最近は、改めて自分しかできないものが何かを考えていたんですね。そこでJ-POPとジャズフュージョンがひとつになったらどうだろうと。
- EMTG:言葉だけだと、ものすごい響きですけど、要するにウマい人達とサウンドでコラボするというか……。
- 西川:そういうアレンジを考えた時、実は身近に優秀な仲間がいたので声をかけて作っていったんですよね。それが大島(こうすけ)で。
- EMTG:ライブのゲストにも登場したことのあるキーボード&アレンジャーの大島さんですね。いつもかなりのムチャぶりをされているという印象がありますが(苦笑)。
- 西川:そうそう(笑)。いつもムリをきいてくれる人なんですけど、彼のアレンジはホントに秀逸ですし、ロックもジャズもフュージョンもR&Bも、そして今どきの音もちゃんと押さえていて、幅広い耳を持っているんですよ。僕と年も同じだし、通ってきた音楽も近いからこそ作れるものが出来たらいいなと思って。それに、今ってそこそこメモリーを積んでるPCだったら、普通に音楽を作れちゃうじゃないですか。でも、やっぱりタイコは鳴ってなきゃダメだし、ギターやベースもアンプを通した方がいいわけだし。単に懐古的なことじゃなく、人間がやらないと生まれてこないフレーズとか音が、絶対にあると思うんですよ。むしろ、そこにこだわりたいかなって。それが一発でわかることって、ライブじゃないですか。だから、あの映像はスタジオライブみたいな映像にして、一発録りしながら映像も撮って……。それをつないでミュージックビデオにしたものなんです。
- EMTG:なるほど。あれを見れば、多くは語らずとも、わかりますね(笑)。しかも、みんなウマい!
- 西川:それこそ人間力じゃないですか。
- EMTG:そう考えるとカップリングの「Thread of fate」にも、その生っぽいロックサウンドの暖かみが出ている気がします。
- 西川:そうなんです! 体温を感じるでしょ? 弦を指で押さえた時の振動とか、フレットからフレットへ移動する時にも呼吸が入るわけで。そういう暖かみのある音楽をやっていかなきゃって思うんですよ。
- EMTG:ただ、T.M.Revolutionは、そこにデジタルも取り込める余裕はあるわけで。
- 西川:もちろん! 当然、生音の中にも同期(打ち込み)は走らせたりしているからね。
- EMTG:ダブルで取り込めるところに、またすごいワザを感じますけど(笑)。じゃあ、徐々に次の展開に進みつつあるということかな?
- 西川:そうですね。人間関係もそうだと思いますけど、音で会話して、信頼を紡いでいくものじゃないですか。ひとりだけで、自分の世界を構築する楽しさもあると思うけど、そういうやりとりを作品として落とし込めば、聴いた人もまた何かを感じ取るかもしれない。そこに関しては汗かかなきゃいけないし、怠っちゃいけないものだなと。今回のシングルを作りながら改めて思いました。
- EMTG:別バージョンをCD音源に入れるという発想もあったと思うんですが、まず動画で見せたところは、非常に今っぽいアプローチじゃないですか?
- 西川:そうですね(笑)。
- EMTG:ちょうどこの夏は、イベントへの参加も多い時期なので、いち早く新曲をライブで聴ける人達にとっては、素晴らしいガイドになるシングルなんじゃないかと思います。
- 西川:そうそう。そこでまた曲を成長させていければと思ってます。
4月よりスタートしたTVアニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』のオープニングとエンディングテーマを収録したT.M.Revolutionのニューシングル「突キ破レル-Time to SMASH !」(8月6日発売)。オープニングテーマのタイトル曲は、スピード感あふれるアッパーチューン。すでにライブでも披露されているこの曲だが、音源とは別バージョンで制作されたミュージックビデオが話題を呼んでいる。そして、そこにはT.M.Revolutionというプロジェクトに対し、西川貴教自身が抱いている深い思いが隠されていたのである。今回は、そのあたりの思いをじっくりきいてみた。
【取材・文:海江敦士】
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