T.M.Revolutionにとって10枚目となるアルバム『天』。デビュー記念日である5月13日にリリースされるという因縁めいた作品でもあり、前作からはほぼ4年ぶり。まさに待望のオリジナル・アルバムなのだ。シングルとしておなじみの楽曲も多く収録されているが、違和感のない並びでT.M.Revolutionらしさを際立たせている。もちろん新たな挑戦もあり、意外な側面を見せることも忘れない。早速、ツアー真っ最中の西川貴教をキャッチ、制作秘話を語ってもらった。

EMTG：10枚目のアルバムということで『天』……ずいぶん前からこのタイトルは意識されていたんですか？

西川貴教：7枚目の『SEVENTH HEAVEN』とか前作の『CLOUD NINE』のあたりからフラグは立ってましたね。次はもう『天』かなって。だから4年くらい前にはこのタイトルのアイデアはあったんです。

EMTG：ずいぶん前から！しかも、その間にリリースしたシングルもありましたし、その曲もアルバムに収めるというのは、すごく難しかったのでは？

西川：アルバムのタイトルを決めて、それに合った楽曲を決めていくっていう作品じゃなかったんでね。シングルで出した曲を中心に、どういうアルバムにまとめていくかと。それはもう難しかったですよ。当然、シングルの多くはタイアップがあったり、コラボがあったりするわけで、その時点では何年も先のアルバムを見越して制作するわけじゃないですから。1曲入魂で作ったものをアルバムに入れていくのは、ホントに難易度が高いんです。

EMTG：ただ乱暴に曲を並べるわけにもいかないですし、中には書き下ろしの曲もあるわけですしね。う~ん、確かに難しい。

西川：結局、そこで何が大事になってくるかっていう話なんですよ。そこが、いわゆるアニメソングとは違う部分だと思うんです。T.M.R.って、アニメ関連のタイアップも多いじゃないですか。そこで、自分がその曲を今後のライブやツアーで歌っていくことを踏まえて、ある種、T.M.R.の持つ普遍的な要素を軸に作品作りをしてきたんですよね。結果、アルバムとしてまとめていく時にも、サウンドトラックにならないで済んでいるというか。アルバムを構成する楽曲という顔を守ることができているんだと思うんです。

EMTG：そうですね。個人的にはタイアップ関係なしに、どのシングルもT.M.R.の純粋な楽曲というイメージが強いです。今回はせっかくなので、純粋にアルバム曲の中で気になった曲について伺いたいなと。特に8曲目の「Salvage」は、サウンド的にすごく意外性があっておもしろかったんですよ。クラブっぽいアプローチも感じたし。

西川：いい着目点ですね！（笑）。実際、既発の曲が収録曲の中に多いぶん、どんなアルバムにすればいいのか……そんな中で参考にしたのが、1stアルバムの『MAKES REVOLUTION』の作りだったんです。例えば、メジャーバラードとマイナーバラードが対になっていたりとか、アメリカンロックっぽいシンプルな構成の曲やリードになるようなシングル曲があったり……そういうアルバムのメソッドみたいなもの……作法かな、そういう作法みたいなものを踏まえた上でどれだけ遊べるかっていうことを考えたんです。そのメソッドに照らし合わせて考えたんですよ。過去の文献を紐解きながらね。当然、当時のスタッフは一人もいないわけですから（苦笑）。

EMTG：じゃあ、初心に戻ってアルバム制作のメソッドを研究した結果、必要なアルバム曲を考えたと。

西川：はい。そこで、押せ押せだけじゃなく、奥行きのある曲っていうのかな、そういうアルバムならではのアプローチの曲はもっとあって然るべきだなと思ったんです。当初はもっとEDMの要素を出した曲を考えていたんですが、作法に則って考えると、そうじゃないと。30代でできなかったことが、40代になってより深く見えるようになった気がします。そんな経緯もあって、「Salvage」は一番最後にできた曲だったんですけど、正直悩みましたよ。こういう曲をやるべきなのかどうか。しかも、なかなか自分のイメージしたものにならなくて、何度も遣り取りしましたからね。そこはずっと付き合ってくれているエンジニアさんの力も大きかったと思います。結果、僕がアルバムの中で“いい曲だな”って思える曲のひとつになりました。

EMTG：そうだったんですか！練っただけあって、やっぱり印象に残る曲ですね。

西川：アウトコースいっぱいってやつね（笑）。

EMTG：大人っぽいボーカルだし、新鮮です。こういう歌も歌えるのかっていう。

西川：そうそう、こういう曲だけでアルバムを作ってもいいと思いましたもん。

EMTG：こういう曲が入っているのは、やっぱりアルバムの良さですよね。

西川：まさにそうだと思います。

EMTG：アルバム後半にはライブでもテッパン曲になっている勢いのある楽曲が並んでますね。そのキラーチューンのシメに「The edge of Heaven & Revolution」が来ているのも意外でした。勢いで終わるわけではないんだと。

西川：そうなんですよ！　ホントにぶっちゃけちゃうと、ツアーがリリースを待たずに始まってしまったし、映画や舞台の仕事が入って、時間を取られることも多かったし……。結局、中途半端なものをリリースしたくなかったんで、リリースを遅らせることになったんですけどね。まぁ、アルバムをしっかり聴いてからツアーに行きたいっていう人もいたかもしれない。でも、アルバム制作とツアー準備期間がまるかぶりしていたおかげで、ライブを見据えてプランが立てられたわけですよ。でも、この「The edge of Heaven & Revolution」が、今回のセットリストのどこにも置けなかったんです。

EMTG：なんと（苦笑）。

西川：緊張感もありながらシンプルで、かつプレイに寄ったツアーになっているので、なおさら、こういうメジャーな感じの楽曲って扱いが難しいんですよ。最終的にはセットリストに入らないってことになって……で、ライブのある部分で聴けることになるんですが（苦笑）。

EMTG：気になります（笑）。

西川：でも、最終的にはその判断もすごくよかったんですよ。今、まさにツアー中ですけど、この曲のおかげでまとまるというか。なぜ、そうなっているのかはツアーを見てもらわないとわからないという（笑）。逆によく納めたなって感じですよ。ライブに来た人には、“うまい！”って思ってもらえるんじゃないかな（笑）。

EMTG：ライブは必見ですね。

西川：アルバムはもちろんだけど、ライブにもね……会場によってはソールドしてしまっている場所もあると思いますが（苦笑）。ライブは是非とも観て欲しいですね。

【取材・文：海江敦士】