4回目のJUJUの日のライヴ。今年は10月9日、10日、ブルーノート東京でジャズ!
JUJU | 2011.10.18
いまや日本を代表するシンガーとなったJUJUが、10/9、10/10の2日間、ジャズクラブ“ブルーノート東京”で「JUJUの日 スペシャルライブ」を開催した。“JUJUの日”のライブは今年で4回目。昨年は東京・国際フォーラム ホールAで行われ、ゲストに小田和正、久保田利伸、akko(My Little Lover)を迎えるという豪華な内容だったが、今年はついにジャズ・カバー・ライブが実現。子供のころからジャズに親しみ、18歳のときにジャズ・シンガーを目指してNYに滞在。さらにウェイン・ショーター(1960年代にマイルス・ディヴィス・クインテットに参加、1970年代はウェザー・リポートのメンバーとして活躍した伝説的サックス・プレイヤー。“知らなーい”って人は、いますぐにググりましょう)の名盤『juju』にちなんでアーティスト・ネームを決めた彼女にとって、そして、彼女がジャズを歌うことを心から望んでいたリスナーにとってもまさに念願のライブだったと言っていい。そしてJUJUは、この記念すべきステージの中で、ジャズ・シンガーとしての奥深い魅力をたっぷりと見せてくれたのだった。
ドレスアップしたカップル、女性同士のグループが埋め尽くした会場にJUJUが登場。黒を基調としたシックな衣装に身を包んだ彼女に向けて、女性客が「かわいい!」とひと言。すぐに「そうでもないよ(笑)」と応えたJUJUは、唇に指を当て(ちょっと静かにしてね、の合図)た後、最初の曲「A Woman Needs Jazz」を歌い始める。松尾潔氏のプロデュースによるこのオリジナル曲は、スタンダードとしての香りとポップスとしての親しみやすさを併せ持つナンバー。きわめて上質のアコースティック・ジャズ・サウンドのなかで、愛らしさと切なさを同時に感じさせてくれるボーカルが響き、思わずウットリした気分になってしまう。
さらにコール・ポーター(数多くのスタンダードを生み出した、20世紀を代表するアメリカの作曲家)の名曲「You’d Be So Nice To Come Home To」を軽やかに歌い上げた後、「“JUJUの日”も4年目。今年は恐れ多くもブルーノートで、子供のころから憧れ続けているジャズを歌わせてもらえることになりました」と挨拶。彼女にとってこの日が、どんなに特別なものであるかがはっきりと伝わってきた。
心地よくスウィングする「Night And Day」からは、さらに豊かで奥深いボーカルが広がっていく。恋をする女の子のキュートな感情が瑞々しく描き出される「Candy」、島健(ピアノ)、納浩一(ベース)、山木秀夫(ドラム)によるインタープレイに反応しながら、芳醇なボーカリゼーションを披露した「Girl Talk」、「子供のころから大好きな曲。歌詞の意味がわかってきたのは、ずっと後でしたけど」というMCに導かれ、震えるような切なさを表現した「Lullaby Of Birdland」、村田陽一(トロンボーン)、山本拓夫(サックス)といった超一流ミュージシャンによるホーン・セクションが躍動、ラテンのテイストのメロディによって会場のテンションをグッと上がった「Quizas,Quizas,Quizas」、JUJUとジャズの相性の良さ、そこから生み出されるあまりにも豊かな音楽にすべての観客が魅了されていく。こんなに贅沢な場面には、そうそう立ち会えるものではない、と本気で思う。
そして個人的にもっとも深く心に残ったのは1987年の映画「バグダッド・カフェ」のテーマ曲として世界的に知られる「Calling You」。この曲の印象についてJUJUは「大人のもの悲しさ、その奥にあるたくましさを感じた」と話していたが、そのコメントはそのまま、彼女のボーカルの手触りにつながっていた。さまざまな悲しみを経験することで人は、少しずつ大人になっていく。そんな人生の機微をこんなにもエモーショナルに表現できる“大人の”シンガーがどれくらいいるだろうか? この曲における、強く凛とした強さと美しい憂いがひとつになった歌は、彼女の真骨頂と言っていいだろう。
松尾潔の作詞、川口大輔の作曲にオリジナル曲「みずいろの影」で本編は終了。そしてアンコールは、「私的な解釈は“酔いどれ人生”(笑)。この曲を知ったことで、ますますジャズが好きになりました」というMCに導かれた「Lush Life」(作曲はデューク・エリントンとの共同作業で有名な天才作曲家、ビリー・ストレイホーン)。ジョン・コルトレーンの名演で知られるこの曲を彼女は、島健とのデュエットによって美しく歌い上げる。その光景はまさに“ジャズシンガー・JUJU”の魅力そのものだった。
11月30日には初のジャズ・カバー・アルバム『DELICIOUS』をリリース。スタンダードの名曲を(単なる懐古趣味ではなく)こんなにも生き生きと描けるシンガーを僕は他に知らない。JUJUがジャズを歌うことは、すべての音楽ファンにとって、本当に大きな幸福だと思う。
【 取材・文:森朋之 】
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リリース情報
セットリスト
- A Woman Needs Jazz
- You’d Be So Nice To Come Home To
- Night And Day
- Candy
- Cry Me A River
- Girl Talk
- Lullaby Of Birdland
- Feelin’Good
- Quizas,Quizas,Quizas
- Calling You
- Ev’ry Time We Say Goodbye
- みずいろの形 ENCORE
- Lush Life
- A Woman Needs Jazz
- You’d Be So Nice To Come Home To
- Night And Day
- Candy
- Cry Me A River
- Girl Talk
- Lullaby Of Birdland
- Feelin’Good
- Quizas,Quizas,Quizas
- Calling You
- Ev’ry Time We Say Goodbye
- みずいろの形 ENCORE
- 奇跡を望むなら...
- Lush Life