2011年は精力的にライブに挑んだトライセラトップス。この年2回目となるツアーはその名もシンプルに“WINTER 2011”と称して、冬を告げる風のように凛として、タイトな影を落としながらもロマンチックな、大人のライブを見せてくれた。

　新木場STUDIO COASTで行われた最終日のライブ、オープニングから照明を落としたダークな雰囲気の中で、ブルースが始まる。ここ最近のツアーではすっかり恒例となったアコースティックセットでの演奏、のっけから和田唱のスライドギターが胸騒ぎを起こす、「BIG BAG BLUES」。
「雨の日にようこそ！ オレたちはいい感じにエンジンかかってます。みんなの歓声とダンスでエンジンに拍車がかかります！」
　ウォーッという声が湧き上がる中、アコースティックな演奏は続く。そう、ダンスにはまだ早い？　いや、ただムーディに収まっているわけではない。椅子から腰を浮かせたままの姿勢でギターを弾く和田、彼の動向を注意深く見ながらビートを送り続けるドラムの吉田佳史、クールなベースでバンドの理性を握る林幸治……と、完成されたチームワークが強いフックをかけていく。

　ところが、めまぐるしい。今度はたった一人に歌いかけるような「WAITING FOR YOU」「プロポーズ」へ。こんなロマンチックなシーンもトライセラトップスならでは。ちなみに「プロポーズ」はKANのカバー。これまでも幾度となく演奏され、まるでオリジナル曲のような馴染み具合で、すっかり自分たちのものにしてしまっている。

　さて、いよいよエレキギターの登場、ピンクの照明が降り注ぎ、観客も一気に熱を上げる。これもトライセラのカバーの定番「CAN’T TAKE MY EYES OFF OF YOU」を披露、そして「GREEN」「SILLY SCANDALS」と続く。

　なるほど、これは、彼ら初のライブレコーディングによるアルバム『LOVE IS LIVE』に収録されている楽曲であった。この時点ではまだリリース前、しかしそのテイストを生々しく激しく美しく伝える予告として、このツアーは繰り出されているようにも思えた。しかし彼ら自身はそこには触れなかった。ただただ本気を見せるのみ。一音一音に宿る思いは、誠実に観客に届けられていた。

「今日は“WINTER 2011”ツアーの最終日です！」
　和田は、セットリストが少々マニアックであることを認めつつ、知らない曲＝（イコール）楽しめないライブではない、と断言した。2012年にデビュー15周年を迎える彼らの、実にバラエティに富んだオリジナル楽曲がけして埋もれることなく、こうして晴れやかにライブで演奏されることは非常に尊いことだ。彼らの確かな足跡がこういう姿勢にも現れている。

　そして『LOVE IS LIVE』の話題へ。
「文字通り、ラブソングばっかりのアルバム。ラブはライブだと思うからです。（“ライブ”とは）本物、リアル、生中継、まさに愛とはそういうもの。何が起こるかわからない。映画やドラマのようにうまくいかないんだよ。うまくいかないから歌ができます」
　間違いおかす君でもいい、生で抱いていたいんだ……と歌う、このアルバムのテーマともなるタイトル曲は、強い意志のあるラブソングだった。

　さらに「2020」「GOTHIC RING」と、充分に体中に染み渡ったリズムとメロディがバンドのスケールを増幅させていく。
　やっぱりすごいなぁトライセラは！ と、感心していたら突然、不可思議な時間はやってきた。「レディースアンドジェントルマン！ ヨシダヨシフミ！」と和田が大げさに紹介すると、なぜかカタコトのヨシダが「トキオー！」と叫び、しばし“おふざけタイム”。そこはまだまだ少年性の残るトライセラ、ってことで。次の曲にいきましょう、「LIP CREAM」からの、リズム隊によるグルーヴィーなセッション、その高揚感を蓄えながら「MILK & SUGAR」はさらに濃厚な演奏で、興奮を道連れに「あのねBABY」「FUTURE FOLDER」とトリッキーなアレンジを重ねていく。このライブ全体がひとつのドラマであり、１曲１曲の中にもそれぞれのドラマがある。そう思わせるライブだった。

　アンコールではもうひとつの新曲を。「その言葉の意味をよく考えたら、オレたち人間だけに与えられた特性、なんてステキな言葉であり行為なんだろう、って。曲にしなきゃ、と思いました」と前置きして、「仲直り」を。これまでの彼らにはなかったタイプのラブソング、新鮮。

　最後は、ハデにいきますか、と観客を煽り、「GOING TO THE MOON」「赤いゴーカート」、さらにダブルアンコール（このツアーでは今回のみ）で「NEW WORLD」を演奏、たっぷりと、じっくりと、はっきりと、トライセラトップスの“今”を見せた。
「みんなみたいなオーディエンスがいて幸せです！」
　まさにライブなラブが、ライブをラブに変えた瞬間だった。

【 撮影：山本倫子】【 取材・文：森田恭子 】