憧れの渋谷公会堂で、熊木杏里デビュー10周年記念コンサート開催!
熊木杏里 | 2012.05.23
客電が消えると美しいピアノの音色が流れ、ステージを覆った白い紗幕に薄らとシルエットが浮かび上がり、ピアノの伴奏に乗って歌い始めた熊木杏里。“10th Anniversary Year Concert 光の通り道~one night road~”のオープニングを飾ったのは、タイトルでもある「光の通り道」。ワンコーラス歌い終えたところで紗幕が切って落とされ、水色のシャツに花柄のロングスカートという春らしい衣装に身を包んだ熊木が姿を現すと大きな拍手が起こった。未来を見据えた力強くも透明感ある歌声が冴え渡り、一瞬にして場内は浄化されたような清らかな空気感に包まれた。
“こんばんは、熊木杏里です”と挨拶し、“渋谷公会堂ですね?”としみじみ。“いつからか、ここでやりたいなって思いながら渋谷の街を歩いていました”と彼女。“今日は、10年みんなと振り返りながらも、これから先の未来もみんなと歩いていけるような1日にしたいと思っています”と言うと、ファンは大きな拍手で応えた。ステージの上手側にセットされた、ラグマットやソファ、テーブル、スタンド等が置かれたリビングにゆっくりと歩いていき、ソファに腰掛ける。ピアノをBGMに、音楽の世界に飛び込む前の両親との会話を、ポエムを読むように語った後、「私をたどる物語」を歌った。そして「一期一会」「春の風」「やっぱり」……と、次に歌う楽曲へ誘うポエムを挟みながら披露していった。それは、熊木杏里というシンガーソングライターのヒストリーの1ページ、1ページをめくっていくかのように歌を紡いでいった。
10年前のデビューした時は、自分の中にある気持ちだけをそのまま世に放っていた、と振り返った彼女。そこから“こんな自分でいいのかな?”と思い始め、その後、いろんな人と関わっていく中で生まれる想いもある、ということを知ったそう。そして“10年目にしてちょっとだけ周りのことも見えるようになってきたのかな??って思います”と照れ笑いを浮かべた。そんな熊木を囲むようにバンドメンバーがステージ中央に集まって座り、吉田拓郎氏の「言葉」からインスピレーションを受けて作ったという「「がんばります」」。を、アコギ、ベース、メロディオン、カホンを中心としたアコースティックサウンドで聴かせた。さらに、蒼井優出演の資生堂CM『化粧のちから』編にて熊木が歌うカヴァー曲「ふるさと」を披露。セピア色に染まったステージの中、何の邪念もない澄んだ歌声は、聴く者の心に懐かしい原風景を映し出した。
「君まではあともう少し」から後半戦スタート。ステージの左右を軽やかに歩きながら、笑顔で楽しそうに歌う彼女。それまで椅子に腰掛け聴き入っていたファンも立ち上がり、アップテンポのノリの良いナンバーに合わせて手拍手で演奏に加わる。ステージと客席との一体感を生み、温かく楽しい空気が広がった。“私の道もみんなの道もまだまだ終わらないから。これからも一緒に──私は歌を歌って、みんなも毎日を生きて、そうやって繋がっていけたらいいなと思っています”と彼女。そのためには、自分が心のままにいること、そして大切なことはいつも心の中にあるのだ、と語り、本編ラストに披露されたのは『光の通り道』から「心のまま」。まさに現在の熊木の心のままを映し出した歌に、彼女の想いとメッセージが詰まっていた。
アンコールでは、“この曲をやらなきゃいけないなと思います”と言い、2002年の記念すべきデビュー曲「窓絵」を披露した。鳴り止まないアンコールに応え、ピアノ伴奏のみで「お祝い」を歌い上げた。“11年目に向けてがんばりたいと思います。また会えますように……。ありがとう!”と笑顔で手を振ってステージを降りて行った。
デビュー当時から飾り気のないストレートな言葉ながら、この10年間の心の変化も歌を通して届けた熊木。きっとこれからも彼女は、世代を超えて聴く人の心に温かく響く歌を歌い続けていくだろう。
【取材・文:牧野りえ】
【撮影:杉田 真】
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リリース情報
セットリスト
- 光の通り道
- シグナル
- 私をたどる物語
- 心の友〜WiLSON〜
- 一期一会
- 春の風
- やっぱり
- 君の名前
- 今日になるから
- 「がんばります」
- 羽
- ふるさと
- こと
- 長い話
- 君まではあともう少し
- A day in my life
- モウイチド
- ムーンスター
- Loveletter 〜桜〜
- 心のまま
- 窓絵
- 新しい私になって
- お祝い
お知らせ
音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2012
2012年7月19日(木)音霊 OTODAMA SEA STUDIO(神奈川県逗子海岸)
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルHPをご覧ください。