熊木杏里インタビュー特集、第2回「ミニ・アルバム『and...Life』」
熊木杏里 | 2011.09.27
10月5日にレコード会社移籍第1弾となるミニ・アルバム「and...Life」をリリースする熊木杏里。前回の特集では、変化を味方にしながら自分自身を成長させてきたこれまでの人生を振り返ったが、第2回となる今回は、いよいよリリースとなるその新作を通し、彼女が見つめる"今"にスポットを当てていく。「人生をもう一度歩み直したようだった」という期間を経て完成した全7曲。そこには、ふるさとを思い、幸せを噛みしめ、心からのエールを送りながら今を生きる彼女の姿があった。
- EMTG:10月5日にいよいよミニ・アルバム「and...Life」が移籍第1弾としてリリースされるわけですが、オリジナルのアルバムとしては久しぶりになりますね。
- 熊木杏里:はい。レコード会社を移籍しようということになってからの時間が割と長かったので、その中で感じることがたくさんあったんですよ。そのおかげで辿り着いたアルバムだなと思いますね。
- EMTG:その間はどんな風に過ごしてこられたんですか?
- 熊木杏里:歌を歌ってる人というよりは、人生をもう一度歩み直してるというか。社会勉強をもう一度してるような感じでした。歌う人というよりは、マネージャーじゃないけど、ある意味自分が自発的にいろんなことをやっていかないといけなかったから、普段使わない脳みそを使いましたよ(笑)。勉強になったことがたくさんありましたね。自分自身が、結構変わったと思いますよ。
- EMTG:自覚がありますか。
- 熊木杏里:ありますね、うん。
- EMTG:じゃあそういう部分が、今回の作品に出て来てるということになるわけですかね。
- 熊木杏里:そうですね。その時にちょっと落ち込んだりへこんだりしてた自分がいたから書けてるんだろうなと思うし。苦しかったことって結構忘れるけど、それが身を持って今こうして作品になってるっていう実感があるので、全部良かったって思えるように、このアルバムが世に出て行かないといけないなと思ってます。
- EMTG:そのアルバムに、「and...Life」というタイトルが付きましたね。
- 熊木杏里:この言葉は割とすんなり出てきました。今回は応援ソングだったり、人とさよならしてしまう歌だったり、結婚の歌だったり、自分の故郷への思いだったりを歌にしてるんですけど、そういうものが集約されて、自分は毎日を、今を生きているんだなって。Lifeなんだなって思えたんですよね。
- EMTG:では「Life」という曲が、このアルバムを集約するような役割りなんでしょうか。
- 熊木杏里:そうですね。アルバムのタイトルが決まってから、表題曲になるような、まとめあげられる曲がほしいなと思って、「Life」という曲を書いたんです。私は今29歳ですけど、いろんな人生の分かれ道でもあるような年齢で、今、私はこういう状況でここにいるっていうことを込めたいなと思って書いてみたんです。
- EMTG:「きっと私が選ぶ道だから信じている」という歌詞がとても印象に残ったんですが、ここにはどんな思いが込められているんでしょう。
- 熊木杏里:私は早くにひとり暮らしを始めたんですけど、こうやって好きなことやってるっていうのは家族で私だけなんですね。だからみんながすごく応援してくれてるし、私のことを信頼してくれてるなというのがすごくわかるんです。「きっと私が選ぶ道だから信じている」っていうと、そういう周りの人たちのことを信じているように聞こえるかもしれないけど、もっとこう、自分のことをすごく信じてるっていうことなんですよね。これは友達にも自分にも言える ことなんですけど、人生を、いつでも愛しいなと思ってほしいんです。そういう風に私も生きていきたいなあって思ってるんですよね。
- EMTG:人生を愛しく思うってすごく素敵ですね。そういう視点は、たとえば「Flag」や「be happy!!」のような楽曲にも通じていくものかなと思いますが。
- 熊木杏里:「Flag」は、私の地元・長野に隣接する岐阜県を元気にしていこうっていうことで書かせて頂いた曲なんです。岐阜の方は織田信長への憧れとか感謝の気持ちがとても強かったりするんですけど、地元を思う気持ちとか、ふるさとを誇りに思う気持ちも一緒に掲げて進んでいこうよってところから書き始めました。だから、作詞作曲は「熊木杏里+岐阜県のみなさん」って感じかな(笑)。
- EMTG:光を感じさせるような、軽快な曲。すごく元気をもらえます。
- 熊木杏里:いろんな方の思いが入ってますからね。励みになるといいなと思います。「be happy!!」は結婚の歌でもあるんですけど、書いたのは震災の後だったんですよ。出会いたかった人に出会えて、そこから一緒に生きていくことがこれから出来るってことには、やっぱり感謝だなあっていうのがフッと出てきたんです。生きていけるんだったら、これから幸せになろうよって気持ちを込めました。
- EMTG:相手を想う、あたたかくて真っ直ぐな気持ちが伝わってくる歌詞ですね。
- 熊木杏里:これは余談なんですけど、うちの父は翻訳の仕事をやってるんですね。上手い具合に翻訳するってことで重宝がられてるらしいんですけど (笑)、翻訳ってすごく難しいじゃないですか。自分の言いたいことがちゃんと翻訳されてるかって。そんな父なんで、この曲の英語部分、「こんな気持ちなん だけどこういうときってどう言ったらいいのかな?」って相談したんですよ(笑)。
- EMTG:父親に愛の言葉を翻訳してもらうって素敵すぎます(笑)!
- 熊木杏里:(笑)。電話だったんですけど、10分後ぐらいにかけ直してくれて、「それだったら"I’m in love with you"とかいいんじゃないか」って。
- EMTG:じゃあこの曲のクレジットは「熊木杏里+熊木父」ですよ(笑)。
- 熊木杏里:そうか(笑)。
- EMTG:でもこうしてお話を伺ってくると、「熊木杏里」というアーティスト名の奥にはいろんな人とのつながりや気持ちがあって成立してる音楽なんだなと思いました。
- 熊木杏里:そうなんですよね。このアルバム、本当にいろんな人の顔が浮かんでくるんですよ。前回も少しお話ししましたけど、これまではそういうたくさんの人のつながりの中で、すごく自由にやって来てた気がするんですね。だけどこれからは、じゃあ自分はそこからどうしていくかっていう新たな段階だなと。本当に大切な人を大事にして、音楽的にもそういった信頼の中でもっと固めていけたらなと思ってるんですよね。
- EMTG:その第一歩となるこのアルバムの最後には、「ホームグラウンド~ふるさとへ~」という曲が収められてますね。ここにも、今のお話にも通じるメッセージがある1曲だなと思いました。
- 熊木杏里:レコード会社を移籍するまで、ひとりというかフリーの時に長野の人が応援してくれてたっていうのもすごく嬉しかったし、あらためて、故郷への思いを通して応援ソングのようなものが作れたらなと思ったんですよね。もともとは長野朝日放送の番組がきっかけで生まれた曲なんですけど、私は子供の時から野球が大好きだし、長野は野球をやってる少年達がすごく多かったりするので、そのあたりのことも絡めてあるんです。ランナーは最終的にホーム(ベース)を踏むために戻ってくるわけですけど、ここからスタートして、いろんな経験をしてまた戻ってくるっていう原点というか。私自身もそうですけど、今、ふるさとを離れて頑張っている人たちにも届けばいいなと思っている大切な1曲です。
- EMTG:具体的な場所だけじゃなく、つながっていく人だったりすべてがホームグラウンドなんですね。
- 熊木杏里:そう。その気持ちはこれからも忘れたくないなって思います。
- EMTG:12月にはツアーも決定。来年はデビュー10周年を迎えられるんですよね。
- 熊木杏里:はい、今回のツアーは本当に楽しみです。来年はひとつの区切りの年。10年前から応援して下さってる方もたくさんいるので、何かちょっと特別なこともやれたらいいなって考えてるところです。
- EMTG:楽しみにしています!ありがとうございました。
【 取材・文:山田邦子】
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お知らせ
■ライブ情報
熊木杏里TOUR 2011「and…Life」
2011/12/9(金) 大阪umeda AKASO
2011/12/11(日) 東京国際フォーラム ホールC
2011/12/23(金・祝) ボトムライン
熊木杏里クリスマスコンサート~ふるさとへ~
2011/12/18(日) 長野・千曲市更埴文化会館 大ホール(あんずホール)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください