行くぜロックンロール!ザ・クロマニヨンズがみせた貫禄のツアーセミファイナル!
ザ・クロマニヨンズ | 2012.07.05
6月24日。ニュー・アルバム『ACE ROKER』を引っ提げ、2月から始まった「ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012」のセミ・ファイナルがSTUDIO COASTで行われた。
かすかな潮風と、初夏の匂いに包まれる新木場の夕刻。STUDIO COASTへと、ザ・クロマニヨンズTシャツを着たファンが連なる。列には子連れも混じっている。この風景から見て取れるのは、かつて「僕 パンクロックが好きだ」と宣言した頃からロックンロールに筋を通してきた甲本ヒロト(vo)のスピリットが、今に繋がっている事実だ。
会場に足を踏み入れると、フロアは既に爆発寸前。SEが止み、人波がうねり出すと、MCが登場してアジテーションをひとつ。「爆裂戦士、ACE ROCKERがやって来たぜ!今ロックが立ち上がる時。できるよな東京!」。
ままならない事が多いこんなご時世にこそ、ロッカーの腕がなるというものだ。威風堂々、正面突破。貫禄のロックンロールをぶちかましてくれるはず、と期待が高まる。
ステージを隔てていた幕が落ち、『ACE ROCKER』のジャケットにある角のはえた頭のオブジェとロゴが誇らしげにステージに現れる。大歓声に迎えられて、颯爽と4人が登場。「ロックンロール!」。ヒロトが叫ぶ。「他には何も」でライヴは始まった。「やらずにはいられない事をやるだけなんだ」。挨拶代わりに、いきなり直球のメッセージを響かせる。
のっけから演奏はフルスロットル。「ロ、ロ、ロックンロール」というかけ声が勇壮な「欲望ジャック」、ライヴ序盤ながら、早くもコール&レスポンスが起こった「バニシング・ポイント」。アジテーション・ソングの「ゴー ゲバ ゴー」では2階席も大きく揺れる。フロアはもう、抑えがきかない状態に入っている。
痩せっぽちのヒロトが反骨に溢れた面構えで歌い、踊り、オーディエンスを鼓舞する。真島昌利(g)が、鬱屈を切り裂くようなカッティングとガッツと美しさのあるフレーズをかき鳴らす。小林勝(b)と桐田勝治(dr)のリズム隊が地鳴りのようなグラウンド・ビートでアンサンブルのボトムを支える。このファットなリズム隊は本当にいい役割を果たしている。
続いて「シャイニング」、「ハル」、「ライオンとサンシャイン」と、ここまで『ACE ROCKER』からのナンバーを一気貫通。ガレージロックの王道を聴かせるサウンドプロダクションがなされたCDとはまた違う、ライヴ独特のラウドなギター、ド迫力のリズムが一体となりアグレッシブに迫ってくる。
1分弱のMC。ヒロトが言う。「どこも同じでサルがヒゲをそったような顔してるよね。ここが東京だってわからないから、カタカナの『ト』って書いたTシャツをきてます」。この言葉からは、日本中どこにいっても同じようなお店や品物が並ぶ没個性化への寂しさ、一方で、原始人の頃から人間は一皮むけばみな等しく同じなのだ、という博愛が感じられた。
「やあ、東京!どんどんやるぞ!」と話を切り上げ、Tシャツを脱ぎ捨てるヒロト。中盤戦がスタートだ。「嫌なことは笑いとばしちまいな。うまくやれよ!」というメッセージを送っているかのような「ワハハ」、エロなラヴソング「連結器よ永遠に」、ブルースハープが哀愁を誘う「伝書鳩」、マイナーコードが性急さを掻き立てる「自転車リンリン」。ヒロトの上半身が汗で光る。オーディエンスが「ナイフ!」と叫び、ヒロトの握りこぶしで応えた「スピードとナイフ」では共闘の合図がカッチリと交わされた。「後ろの方までは届かん」と、2度目の短いMCでヒロトが客席にペットボトルの水をかけて回るも焼け石に水。フロアの熱と湿度はどんどん上昇していく。
派手な動きのなかった照明がここで大きな動きを見せる。紫の光がマーブル状にうごめく「グリセリン・クイーン」を経ての「底なしブルー」は圧巻。フィードバック・ギター、ハープとギターの掛け合い、野太いコーラス、扇情的なストロボフラッシュがエネルギーの塊となりフロアに浴びせられる。「猛毒をラッパ飲み」という狂気を孕んだキメフレーズが得体の知れない力となりオーディエンスを飲み込んだ。
「このまま最後までいくぞー。ロックンロールだ!」。この夜を象徴するかけ声で終盤戦へ。「ひらきっぱなし」、「オートバイと皮ジャンパーとカレー」、「紙飛行機」を経て、勢いはまだまだ加速。ステップを踏みながらギターを弾くマーシー(真島)、大きくジャンンプするヒロト。いよいよクライマックスがやってくる。
ヒロトが胸を叩きながら「エイトビート」を歌う。ヒロトが突き出すマイクに向かってオーディエンスが拳を振り上げ、「エイトビート!」と叫び返す。エイトビートこそ鼓動であり、命を動かしているエナジーなのだ。そんな思いがビシビシ伝わってくる。ここから「引き返す訳にゃいかないぜ 夢がオレたちを見張ってる」と闘志にガソリンを注ぐ「雷雨決行」に繋ぎ、何度でも立ち上がる野郎どものテーマソング「ナンバーワン野郎!」と必殺のナンバーをキメて、すさまじい大歓声の中、本編は幕を閉じた。
「ACE ROCKER! ACE ROCKER!」。フロアを包む怒濤のかけ声に乗って、上半身裸になったメンバーが再登場。ヒロトはTシャツを無理矢理短パンのように履くというお茶目ぶり。アンコールの1曲目は「メキシコの星」。ピンク、イエロー、ペパーミントグリーンに色分けされた照明とミラーボールが回転、不器用なロマンティストという一面を引き立てる。続いてニュー・シングル「突撃ロック」をお披露目した後、「ギリギリガガンガン」、「弾丸ロック」と盛り上がり必至の鉄板ソングを畳み込んで見事にフィニッシュ。
ヒロトは「ありがとう。楽しかったよ。また絶対やろうな。ロックンロール!」と、マーシーは「またねー」と笑顔で語りかけ去っていく。ステージ袖に姿を消す直前、ヒロトはジャンプ一発。ペロンとお尻を出して駆け出していった…。
この日演奏された曲は24曲。MCはほとんどなかったものの、曲間でヒロトが鋭く発した言葉は「どんどんやるぞ!」「OKロックンロール!」「ぶっ飛ばしていくぞー」「ロックンロールだ!」等々、ひたすらロックンロール縛りだった。
今や、「ザ・クロマニヨンズ型ロックンロール」には寸分の隙もなし。信念に嘘をつかずに続けてきた者にだけ手にすることができる強靭さを誇っている。
「こんな時代、ロックンロールに何ができるのか?」。この夜、この問いにザ・クロマニヨンズは明確な答えを示した。ロックンロールは連帯力であり、潰される度に何度も立ち上がる力だ。あらためてそんな希望とガッツを与えてくれるライヴだった。
【取材・文:山本貴政】
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リリース情報
セットリスト
- 他には何も
- 欲望ジャック
- バニシング・ポイント
- ゴー ゲバ ゴー
- シャイニング
- ハル
- ライオンとサンシャイン
- ワハハ
- 連結器よ永遠に
- 伝書鳩
- 自転車リンリンリン
- スピードとナイフ
- グリセリン・クイーン
- 底なしブルー
- ひらきっぱなし
- オートバイと皮ジャンパーとカレー
- 紙飛行機
- エイトビート
- 雷雨決行
- ナンバーワン野郎!
- メキシコの星
- 突撃ロック
- ギリギリガガンガン
- 弾丸ロック
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