グループ魂とザ・クロマニヨンズの２マン。ライヴのテンションの高さでは引けを取らない2バンドの顔合わせが面白くないわけはない。実際、期待を遥かに上回るライヴで、何よりも両バンドのポジティヴなエネルギーが融合して、この上なくハッピーな空間を作り出していた。

　SEに乗って全身光り物で登場した港カヲル（皆川猿時）が、連続テレビ小説『あまちゃん』でお馴染みの「南部ダイバー」を歌った幕開けから、グループ魂ならではの軽妙な毒気と笑いとパンク魂溢れるライヴに会場は湧いた。革ジャンの破壊（阿部サダヲ）とＴシャツのバイト君（村杉蝉之介）が絶叫し、暴動（宮藤官九郎）がギターソロで前に出てくればフロアは大騒ぎ。女子高生や警察官のコスプレと下ネタ満載のMCを凌駕する、パンキッシュなエネルギーに溢れた演奏でオーディエンスを引き込んで行く。人気俳優に国民的人気番組の脚本家と出演者がこんなことを（笑）と思うがバンドの方が先なのだから仕方がない。むしろ、その落差が以前よりもキャラに磨きをかけている。

　「職務質問」という曲にひっかけて暴動が立て続けに職務質問された体験を話したり、マイク・スタンドに並べて刺したスリッパを破壊が次々とフロアめがけて豪快に投げ飛ばしたりと、傍若無人にステージを進めて行く。その一方でファンキーなイントロからコール＆レスポンスで盛り上げた「Over 30 do The 魂」は、歌詞に合わせたアクションとグルーヴィな演奏で笑いと興奮の渦に叩き込み、サービス精神は留まるところを知らない。過剰なまでのMCも前のめりな演奏も、全てひっくるめて唯一無二のパフォーマンスとして楽しませるのがグループ魂とばかりに、その本領を惜しみなく発揮していた。

　ザ・クロマニヨンズも唯一無二のバンドであることは言うまでもなく、SEが流れトレードマークの拳を描いたバックドロップがおりてくると大歓声が沸き起こった。「オーライ！ロックンロール！」と甲本ヒロトが叫んでスタートした「タリホー」で、一気にフロアは沸点へ。激しく身体を動かしながら観客を飲み込むように歌うヒロト、気持ち良さそうにソリッドなギターを弾く真島昌利、ちょっと猫背の小林勝はパンク・バンドのベーシスト以外の何ものでもなく、陽性なツーバス・ドラマー桐田勝治はバネの利いたビートを叩き出す。そのまま「紙飛行機」「ギリギリガガンガン」、最新シングル「炎」と続く。初のシングルA面集『13 PEBBLES』をリリースしたばかりだからだが、のっけからシングルになったキラーチューンの連発に、ヒロトがグループ魂の曲名を引用して「俺も努力しないでモテたい」「グループ魂も見れてよかったなあ」と言う頃には彼等の名残は消えていた。

　ヒロトのハープが加わる「エイトビート」や力強いコーラスで骨っぽさを増す「グリセリン・クイーン」はライヴでは定番となっている曲だが、「流線型」や「飛び乗れ!!ボニー!!」は久々のライヴでの演奏が新鮮に感じられた。切れ味の素晴らしい「スピードとナイフ」、グループ魂がMCのネタにした「オートバイと皮ジャンパーとカレー」の後には、ヒロトがMCで「”カチカチ”です」とグループ魂の曲名を挟みこんでお返し。こんなことも２マンならではだろう。この夜のハイライトは「ナンバーワン野郎!」だ。3.11後に自粛解禁となったTVCMの第１弾となった曲で、ヤカンを持ったガンダムが立ち上がる映像だった。この曲に合わせてダイバーシティの側に立つガンダムが動いているような気がしたのは私だけではないのではないか。
　そして「雷雨決行」の「夢が俺たちを見張ってる」と歌うところで、ヒロトは両手を双眼鏡のように目に当ててフロアを見渡した。彼らは何も言わないが、歌に刺激されて頭の中で何かが動き出す。ザ・クロマニヨンズの曲には、そんなロックンロールのマジックが詰め込まれている。「突撃ロック」「燃えあがる情熱」とバンドの力を剥き出しにしたナンバーで本編を締め、アンコールにはフロント3人が上半身裸で登場。ヒロトは、グループ魂とイベントなどで一緒になった事はあるが初の2マンであることに触れ、「いつもなら薄まるけど、今日はハッキリ言ってやりづらかったです」と冗談めかして吐露。だが互いがアウェイに感じるような刺激的な空気を、両バンドは楽しんでいたようだ。
　アンコールの「弾丸ロック」「クロマニヨン・ストンプ」は、１曲目に演奏した「タリホー」のカップリング。5月14日に出るカップリング集『20 FLAKES』を踏まえての選曲だったのだろうが、メイン・トラックに引けを取らない2曲は最後を存分に盛り上げた。

　「またやろう！　絶対やらしてください！」ヒロトは言った。十分こなれた曲を楽しみながら演奏している、そんな風情のザ・クロマニヨンズは、いつにも増してライヴが楽しそうだ。この後も相手を変えて続く2マン・ツアーでザ・クロマニヨンズは、自分たちのスタンダードとなる曲に一段と磨きをかけていくに違いない。

【取材・文：今井智子】
【撮影：柴田恵理】