9月22日の横浜BAY HALLを皮切りに、全国28ヵ所をまわるツアー『TOUR 2012 “VISION”』をスタートさせたThe Birthday。

　ボーカル&ギターのチバの地元でもある神奈川。中でもこの横浜BAY HALLが在る中区は、横浜を代表とする有名な観光名所の集まっている場所でもあるが、その中心街から少し離れた海沿いに位置するアンダーグラウンドな臭いのするそのハコは、The Birthdayにとてもよく似合っていた。

　クラブイベントも行われるハコでもある、このBAY HALL。天井には大きなシャンデリアがかかっていたり、ダンスフロアを囲むようにグラスを傾けるために設けられたのであろう2、3段上がったフロアが設けられていたりと、殺風景なライヴハウスのフロアとは少々趣が違う。そして、どことなくレトロが香るその場所に流れ出した艶やかなSEは、その景色にピタリとハマった。

　４人がステージに姿を現すと、轟音のような声援が彼らを迎えた。

　最高の幕開けだ。
彼らはその声に応えるように音を放った。
「この前、横浜に来たときは日産スタジアムだったからさぁ。やっぱ、こっちの方が落ちつくよね?」（チバ）

　ちょっぴり気だるい口調だが、その言葉には親近感が漂っていた。そんなチバの声に、全身の力を込めて応えるオーディエンス。このホンネのぶつかり合いがたまらなく愛おしい。

　このツアーは、前アルバム『I’M JUST A DOG』から１年と１ヵ月ぶりの7月18日にリリースされた、通算6枚目のオリジナルアルバム『VISION』を引っさげた待望のアルバムツアー。そのことから、そのニューアルバムに収録されていた曲たちの数々も惜しみなく披露された訳だが、もちろん、このアルバムへと繋がれる強力なシングル曲となった「ROKA」や「さよなら最終兵器」も、しっかりと届けられた。この曲たちでは、オーディエンスが拳を振り上げながら、共に声を張る最高の景色を見せてくれた。

　「LOOSE MEN」の気だるくルーズなロックに体を揺らし、「PINK PANTHER」のスピーディーなリズム右手を上げ、メロウな「涙がこぼれそう」では共に歌い、モッシュを起こしたフロア。剥き出しのロックに吐き出される、剥き出しの感情たち。こんなにも純粋なモノはない。最高に胸を締め付ける瞬間の連続が私を含む、会場全体を何度も襲ってきた。

　そんな中でも、「Sheryl」や「爪痕」などでは、会場もピタリと静まり、４人の音と歌にオーディエンスも聴き入る。ギターのフジイ、ベースのヒライ、ドラムのクハラ、そしてチバが生み出すサウンドには、これほどまでの説得力があることを改めて実感し、The Birthdayというバンド力を敬った。

　この日、チバは曲ごとに、フジイやヒライやクハラと正面から向き合い、呼吸を合わせるように音を重ねた。余力を残すことなく叫び続けた約2時間半。またしても彼らは、最高峰を塗り替えるライヴを届けてくれたのだった。この熱が、ここから全国に広がっていくのかと思うと胸が熱くなる。声がかれるほど歌い、声がかれるほど彼らの名を呼び続けたオーディエンスの叫びは、４人の大きな力となったことだろう。

　2012年12月19日。全国をまわった彼らが日本武道館に帰ってくる日が、今からとても楽しみだ。

【取材・文：武市尚子】