The Birthday、円熟の境地でなお転がり続けるロックンロール!
The Birthday | 2013.10.25
お馴染みの「Sixteen Candles」が流れ、ステージに現れたチバユウスケの「ハロー!」という野太い声を聞いただけで、これから始まる事への期待と確信が生まれ、フロアからは大歓声が返された。The Birthdayのオータム・ツアー「Black Doctor Fight Again 12 Nights」の、最終日となった新木場スタジオコースト。
重量級の疾走感でぶっち切り、一瞬にして自分たちの音で場内を満たした「SとR」から「ゲリラ」「ホロスコープ」と豪快でキレのいいナンバーを畳み掛けるように続けると、フロアの揺れは早くも最高潮に。このツアーは新作リリースに合わせたものではなく、敢えて言うなら12月にリリースされるシングル「LEMON」のための前哨戦といったところ。だからセットリストも新旧の曲が入り交じり、「オオカミのノド」など意外な曲が入っているのが嬉しい。12ヶ所を回り存分に温まっているバンドの演奏は無駄が無く小気味良い。
「こんばんは、The Birthdayです。新木場コーストはワンマンでは初めてです」とクハラカズユキが挨拶。ちなみに、このツアー2カ所目だった川崎チッタも同じくワンマンでは初。その映像がシングル「LEMON」の特典映像となる。百戦錬磨の彼等にも未体験のことはまだあるようだ。フジイケンジが「パーティがまた始まる!」と「Buddy」の冒頭で叫んだのも珍しいこと。そんな新鮮さも加わったこの曲では、歌うオーディエンスと絶妙の呼吸でチバが応酬し、ヒライハルキのベースが唸る「SATURDAY NIGHT KILLER KISS」で前半のピークを迎えると、ふっと一息つくように落ち着いた照明になった。
ぶっきらぼうだが思いがこもったチバの歌が染みた「ひかり」に続いて演奏した待望の新曲「LEMON」は、ズシリとした演奏が引き立てるチバの歌を全身で受け止めたくなる曲だ。バラードだからといって容赦ない爆音で攻めてくるのはThe Birthdayの得意とするところ。ちょいとアゲる「狂っちゃいないぜ」を挟んで、ギターを置いたチバがブルースハープを手に身体を揺らし、ミラーボールの光の中でブルージーなセッションになる「Red Eye」に。チバはベースソロを弾くハルキを指差して注目を促したり、フジケンのギターとブルース・ハープで掛け合いをしたりと楽しげに展開して行く。クハラの短いドラムソロが引き締めて曲のテーマに戻る頃には10分近い長尺になっていたが、4人の見事なグルーヴに引き込まれっぱなしだった。
再び疾走感溢れる演奏での「Nude Rider」ではハルキが「新木場ー!」と叫び、エンディングで青いライトがクハラにキュッと集まると、それを合図に「なぜか今日は」のイントロがフロアを沸かせた。一斉に上に伸びた腕が手拍子を打ち、続く「マスカレード」は男臭いコーラスとソリッドなビートに歓声が重なった。チバが「オーイエー」と声をかけて始めたスケール感溢れる「SUPER SUNSHINE」は圧巻。シンプルなギターコードとビートだけで成り立たせるこの曲を、楽器の機微やテンポを変えて起伏をつけながら存在感を際立たせた歌で牽引する。これも長い曲だが剥き出しのヴォーカルにガッツリ掴まれてしまった。
圧倒されたオーディエンスに、軽い調子でチバは「新木場って何区?」と問いかけた。一斉に応えが飛び交い、「日本のベニス」なんて声もあったがステージには届かなかったようで、チバは「何言ってるか全然わかんねえ」と「涙がこぼれそう」のイントロを弾き、「カモン!」と声をかけ、《俺さ、今どこ》の大合唱に「新木場だ!」とシャウトで応えた。この瞬間からフロアはカオス。そのパワーを受けた「さよなら最終兵器」はチバが《さよなら最終兵器》と繰り返すと数えきれない拳が突き上げられた。目の前の海が福島と繋がっている新木場で聴くこの曲は、作られた時の意味を離れて、いろいろなことを想像させ考えさせた。チバは歌が持つそうした力を知っている。だから何も言わずに歌い、止まらず「READY STEADY GO」へと進むのだ。高い天井を突き抜けるようなチバのシャウトと頭の芯まで響く大音量で曲を終えてステージからの去り際に、クハラが着ていたびしょ濡れのTシャツを「ジャッ」と絞ってフロアに投げた。4人が流す汗はハンパ無い。
1stアンコール1曲目「BABY YOU CAN」の終盤で歌詞に重ねて「何にもしてねえから、まだまだ転がって行こう」とチバは言い、「もう1曲」と「愛でぬりつぶせ」へ。2ndアンコールでは、クハラが現われ「クアトロツアーやります。曲を作ってレコード作って、来年は嫌ってほどツアー回りたいと思います。嫌っていわないでください」と言うとドラムを叩き、ハープを吹きながら現れたチバが「ローリン・ベイビー!」と叫んで曲へ。ここでも間奏でメンバーをチバが紹介するという新基軸があり、何度もクハラの名前を叫んだのが印象的だった。オーディエンスとはアカペラで歌い、フジケンやハルキとジャムり、チバはこのツアー最後の夜を存分に楽しんだ。他のメンバーも然り。チバの「サンキュー、またね」の言葉と共にステージから消えた4人に、いつまでも拍手が送られていた。
【取材・文:今井智子】
【撮影:新保勇樹】
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リリース情報
セットリスト
Black Doctor Fight Again 12 Nights
2013.10.12@新木場STUDIO COAST
- SとR
- ゲリラ
- オオカミのノド
- ホロスコープ
- Buddy
- LOVE SICK BABY LOVE SICK
- SATURDAY NIGHT KILLER KISS
- ひかり
- LEMON
- 狂っちゃいないぜ
- Red Eye
- Nude Rider
- なぜか今日は
- マスカレード
- SUPER SUNSHINE
- 涙がこぼれそう
- さよなら最終兵器
- READY STEADY GO
- BABY YOU CAN
- 愛でぬりつぶせ
- ローリン
お知らせ
The Birthday『Quattro×Quattro Tour’13』
2013/12/05(木)梅田 CLUB QUATTRO
2013/12/06(金)広島 CLUB QUATTRO
2013/12/12(木)名古屋 CLUB QUATTRO
2013/12/13(金)渋谷 CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。