いっぷう変わったインタビューだ。なにしろこのアルバムには、メンバーによる全曲解説ムービーが付いている。このDVDがよくできていて、楽曲の成り立ちやそこに込めた思いがきちんと伝わってきて、胸が熱くなる。だから正直、インタビューで聞くことがないのだ（苦笑）。そこで「なぜ全曲解説ムービーを付けたのか」、その理由を聞いてみることにした。
　The Birthdayはあまり饒舌なバンドではない。自分たちの作ったものの真意は、音を聴いてもらえばわかるからだ。余計な解説はリスナーの“聴く自由”を奪ってしまうこともある。だが、今回はあえて自ら語っている。
　遅ればせながら、アルバム『COME TOGETHER』は歌を聴かせる曲、疾走感を駆り立てるロックナンバー、内省的なバラッドなど、The Birthdayの魅力のすべてが収められている最高傑作だ。《I LOVE YOUは最強》と叫ぶ「くそったれの世界」から始まって、《この星の未来は目がくらむほど光に包まれている》と歌う「COME TOGETHER」まで、The Birthdayのスピリットが身体にザクザク食い込んでくるロックアルバムだ。

EMTG：まさかThe Birthdayが、自分たちで全曲解説をするとは思わなかった。一体、誰のアイディアなの？

クハラカズユキ（Dr）：チバの案。セルフライナーノーツを付けようって。

EMTG：えーっ、チバくんが言い出したの!?

クハラ：そう。４人それぞれちゃんとカメラを回して、コメント撮って、字幕も付けようって言って。今までハンディカム１台で撮ったライブ映像を付けたことはあったけど、セルフライナーは初めて。

EMTG：チバくんが言い出したのって、意外だなあ。

チバユウスケ（Vo・G）：そうですか？（笑）

EMTG：どうしてライナーノーツを付けようと思ったの？

チバ：THE WHOが『Tommy』っていうアルバムを作ったときのことを、今残っているメンバーのピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーが語るっていう映像があって、この曲で使った機材はこうで、こんな風にレコーディングしたっていうのを見てて、面白いなと思った。ああいう感じでやりたいな、ああいうDVDが付いてたら楽しいのかなって思ったんだよね。

EMTG：それは楽しいよ。

チバ：いつもインタビュー記事がアルバムより先に出ちゃうけど、本当は音を聴いてから読んだ方が楽しいんじゃないかって思ってた。だから今回は、先に音を聴いてもらって、その後、DVDを見たら面白いんじゃないかって。

EMTG：そうだね。インタビューを読んで“聴いたつもり”になるより、実際に音を聴いてから「これはどんな風にできたんだろう」って思いながら記事やDVDを見た方が楽しいよね。で、DVDを作ってみて、どうだった？

クハラ：「あいつ、こんなこと思ってたんだ」って思ったりしましたね。

EMTG：メンバー同士では、そういう話はなかなかしないもんね。

クハラ：そう。でも、あらかたは、みんな同じこと思ってたんだって感じだったけど（笑）。 自分たちで見てても面白かった。だからたぶんお客さんにとっても、いいサービスになってるんじゃないかな。今後もやっていこうかっていう話も出てる。

EMTG：あはは、気に入ったんだ。

チバ：俺もTHE WHOのを見てて楽しかったからね。

EMTG：メンバー一人ひとりがしゃべることに不安はなかったの？

チバ：もう大丈夫なんじゃない。

EMTG：ベースのヒライハルキくんが、俺がいたからこういう音になったってことに自信を持ってそうなのが印象的だった。

クハラ：確かに、そういうところはあったな。

EMTG：それがこのセルフライナーノーツの面白さだね。ところで、画面の端っこにインタビュアーの耳が映ってたけど、あれは誰？

チバ：あれは、“のうやん”！（注：The Birthdayの所属事務所の能野社長）。

EMTG：すごく特徴のある形の耳なんで、気になった。

チバ＆クハラ：あはは。

EMTG：チバくんは、このDVD見てどうだったの？

チバ：実は俺、まだDVDもらってないんだよね。編集段階では見てるけど。

EMTG：なんじゃ、そりゃ（笑）。アルバムを買ったみんなが、音を聴いた後で楽しんでくれるといいね。そして、もう一つ意外だったのは、アルバムタイトル。“COME TOGETHER”って「みんな一緒に」って意味で使われる言葉だけど、それをThe Birthdayが言うとは思わなかった。

チバ：どうして？

EMTG：だってThe Birthdayって、“人間はそれぞれ一人だ！”って歌ってきたと思うから。

チバ：うーん。

EMTG：もちろん、その上で一緒になれたらいいっていうメッセージをしてきたと思う。これまでになく、ストレートな言い方だよね。クハラくんは、このタイトルに照れたりしなかった？

クハラ：全然照れなかったですよ。

チバ：何回かにわけてレコーディングしてて、その途中、去年の暮れぐらいかな、「あっ、COME TOGETHERだな」って思ったことがあったんだよね。それがなんだったかは忘れたけど。

クハラ：レコーディングの中盤にこのタイトルで行こうって決まって、そのときはまだ「COME TOGETHER」って曲はなかった。曲が出来て歌入れしたとき、「あ、これは人間のことだけじゃなくて、うちらがいる景色全体、山とか星とか動物とか、一切合財を含んだ歌なんだ」って感じた。今回のアルバムの取材で、愛とか光とか、そういう言葉が多いのはどうしてなのかって聞かれることが多い。でも、チバが変わったとは思わない。言葉のチョイスの仕方にもよるけど、今回も今までと同じことを歌ってると思う。ま、チバは「それは違うよ」って言うかもしれないけど（笑）。

EMTG：そう言えば今回、「星の首飾り」とか「星に願いを」とか、たくさん星が出て来るなあ。

チバ：ダメ？（笑）

EMTG：いやいや、そんなことはないけど。なんか60年代のグループサウンズの曲のタイトルみたいで、ロマンティックだぁ（笑）。

チバ：ダメ？（笑）

EMTG：あと今回、これまで以上にメンバーのコーラスがたくさん入ってるね。

チバ：うん、多いよね。ただ曲によるんだよね。「くそったれの世界」みたいに、自分の声でやった方がいいものは自分でやってるけど、作ってるときにこれはメンバーのコーラスを入れた方がいいって思った曲が多かった。

EMTG：曲順はすんなり決まったの？

チバ：いつも通り、みんなでアイディアを出し合ったけど、最初と最後の曲はみんな一致してて、そんなにバラバラじゃなかったな。ただ俺がゴリ押ししたところもある。取材の撮影で千葉に行ったとき、車の中でメンバー全員でこの通りの曲順で聴いて、「これで行こう！」ってなった。

EMTG：フジイくんが入って3作目。歌モノあり、激しい曲調あり、深いバラッドありで、集大成的なアルバムになったね。

チバ：The Birthdayとしては7、8枚目だけど、俺は3枚目のアルバムっていう気がする。「ロックバンドは、3枚目のアルバムが集大成」ってよく言われてるけど、やってる方はそんなこと考えてないよ。でも、俺も好きなバンドの3枚目は何か特別だなって思う。ただ、自分からは“集大成”とは言えないな（笑）。

クハラ：俺は2枚目っていう感じ。フジケンが入って最初のは“ゼロ枚目”的な感覚だから。ただ“ゼロ枚目”は、この4人でやってる時間がまだ短いからこそできた曲もあったと思う。

EMTG：じゃ、最後もアルバムとは関係ない質問で終わろうかな？ローリングストーンズのライブは行きましたか？

チバ：行った。楽しかった。ただ、立ちっぱなしだったから、帰りの歩きがしんどかった。

クハラ：俺は背が低いから、ずっと背伸びして見てた。そんなにファンじゃなかったけど、面白かった。

チバ：3月4日に行ったんだけど、火曜日だったから「ルビー・チューズデー」やってくれるかと思ってたら、やらなかった（笑）。最終日にはやったのに。

EMTG：俺は最終日の3月6日に行ったから見れた。キースの生ギターが上手いのに驚いた。

チバ：それは上手いだろ（笑）。

EMTG：ありがとうございました。

【取材・文：平山雄一】