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チリヌルヲワカの東名阪ツアー『ヲワカフルコース2014』をレポート!

チリヌルヲワカ | 2014.12.23

 ステージの脇にはアーティスト登場用のバルコニーと階段、ステージの前にはダンスフロアが広がり、二階席と三階席はゴージャスなラウンジ風。つまり昭和な遊び心に満ちた東京キネマ倶楽部は、チリヌルヲワカによく似合う。
 寒い風の中を急いでキネマ倶楽部に入ると、フロアはチリヌルヲワカをたっぷり聴けることを楽しみに詰めかけた音楽好きのオーディエンスでいっぱいになっていた。

 ユウ(vo&g)、 阿部耕作(dr)、イワイエイキチ(b)、 坂本夏樹(g)の4人も、自分たちにピッタリの舞台に上がって嬉しそう。ステージ右手には“お立ち台”が用意されていて、彼らの気合いの入り方がわかる。秋の下北沢CLUB Queでのライブはセッション色が濃く、ストロング・スタイルの演奏が目立っていた。が、この日の1曲目「印-しるし-」は、それとは少し様子が違っていた。特にギターはあまり歪ませず、テケテケした昭和の音色がかえってアンサンブルを目立たせていていい感じ。パワーだけで押すことなく、迫力を感じさせる。実力派バンド“チリヌルヲワカ”の良いところがしっかり伝わってきて、いきなり楽しい滑り出しとなった。

 坂本のギターがグワーンとフィードバックを起こしつつ、続いては「甲と乙」。早速、坂本がお立ち台上でギター・ソロを取る。「印-しるし-」と同じく、これも曲中でリズムが変わるトリッキーなナンバーだ。

 「どうも、こんばんは。年内ラストのライブとなっております。今回のツアーは、誰かがリクエストしてくれた曲ばかりです」と、ユウが話し出す。ここでふと気が付いた。今日のセットリストは、ファンからのリクエストで構成されている。ということは、チリヌルヲワカのファンは大胆なリズム・チェンジが好きなのか。演奏力とユーモアを兼ね備えたメンバーだからこそ、こうした“難曲”を安定して聴かせることができる。その意味で言えば、テクニックを活かした曲が愛されているということだ。それはミュージシャンとしてとても幸せなことだと、思わず微笑んでしまった。

 次のシークエンスで、ライブは最初のピークを迎える。細かいギター・リフに大きなメロディが乗った「ひとみごくう」から、グルーヴィーなワルツ「ミルク色の峠」がよかった。ユウも坂本もイワイもよく動くが、あくまでアンサンブルを重視した演奏で、丁寧に盛り上げる。ここで、ずっと心に引っ掛かっていたことの原因が判明した。

 この日、4人を最初に見たときの違和感は、ユウと坂本の持っているギターが原因だったのだ。ユウが使っている“Sugi”のギターを坂本が持ち、ユウは坂本のギブソンSGを持っている。いつもと逆のセッティングだ。しかも、その“ギター・チェンジ”が、この日のクリアなアンサンブル・サウンドに大きく貢献していた。そんなことを考えていたら、ユウがしゃべり始めた。

「今回のツアーから、ギターをチェンジしてみたんですけど。リハで替えてやってみたら、いいねってなって」。坂本が「どうも素晴らしいギターをありがとう」と返す。すると、ユウは「あ、でも交換したわけじゃないですから」。「えーッ、そうなの??。俺はSGをあげたつもりだったのに」。場内にクスクス笑いが起こる。この日のユウと坂本のやりとりは絶好調だ。

 そんな雰囲気の中、カバーのリクエスト曲も楽しめた。
「このバンドがいなかったら、私はバンドをやってない。この機会にやってみたいと思います。そのバンドは、今夜、大阪での最後のライブをやってます」とユウが言って歌い始めたのは、THE BOOMの「星のラブレター」だった。確かにその晩、THE BOOMは大阪でのラストライブをしていて、17日の日本武道館を最後に解散する。スカのビートが始まり、♪愛してます 好きにしてよ 君に会いに行くよ♪とユウが歌う。胸に迫るものがあった。そのとき、この日、2回目のピークがやってきたのだった。

 メンバー一人一人が来年の抱負を語った後、ユウが「来年、私たちは10周年。ブランクもありましたが、止めなかった。もっとたくさんの人にライブを楽しんでもらいたいです。来年もよろしく。後半に参ります」。
 イントロでユウがギターを掻き鳴らしながらワンフレーズを歌う「やまみちにて...」から、大騒ぎのライブに突入。「天邪鬼」では坂本が客席の中に入っていき、期待どおりバルコニーからステージにジャンプして帰還を果たすマッドな世界へ。

 アンコールでは、4人がバルコニーから現われるなど、やりたい放題。「せっかくアンコールをいただいたんで、新曲やります。来年の春ごろにはリリースして、ライブもたくさんやりますよ」。

 その新曲が、とてもよかった。ポップなリフを、普通は使わない音域でギターが刻む。そのバランスが気持ちいい。もし難解なリフを、普通は使わない音域でギターが刻んだら、スリリングかもしれないが、すっと心に入ってこない。このポップとスリルのバランスが、チリヌルヲワカの現在の好状況を表わしていた。

 来年が本当に楽しみになった。なので、僕は帰り道、キネマ倶楽部のそばにある、名物居酒屋で、小学生と一緒に並んで1串70円の焼鳥を食べて帰ったのであった。ああ、満足!

【取材・文:平山雄一】
【撮影:yasuyuki kimura】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル チリヌルヲワカ

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リリース情報

チリヌルヲワカ『it』

チリヌルヲワカ『it』

2014年04月25日

ヤマミチレコード

1.it
2.空蝉
3.印−しるし−
4.スナイパー
5.逆光
6.アマツカゼ
7.針と糸

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セットリスト

チリヌルヲワカ東名阪ツアー
ヲワカフルコース2014
2014.12.13@東京キネマ倶楽部

  1. 印-しるし-
  2. 甲と乙
  3. マシーン
  4. 答案用紙
  5. 連鎖
  6. ひとみごくう
  7. ミルク色の峠
  8. 姫事
  9. 絶対値
  10. 星のラブレター
  11. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
  12. 終末
  13. やまみちにて...
  14. it
  15. ホワイトホール
  16. 作りかけの歌
  17. 天邪鬼
  18. ヒトダカラ
Encore
  1. 新曲
  2. 々々々~トリプレット~
  3. カスガイ

お知らせ

■ライブ情報

EMTG MUSIC presents 袖の下レコード×ぽわん合同企画「探せ!袖の下 」×「鳴らせ!袖の下」 対決バトル『サガソデ♪ナラソデ♪』Vol,1
2015/01/21(水) 下北沢シェルター

ガガガSP 全国行脚ツアー2015「ガガガを聴いたらコンニチワ!!」
2015/05/09(土) 名古屋CLUB UPSET
2015/06/06(土) 水戸LIGHT HOUSE

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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