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チリヌルヲワカの年末恒例ライブ、東京公演をレポート!

チリヌルヲワカ | 2015.12.17

 毎年恒例となっている春のツアーと共に、こちらも毎冬恒例となっている、チリヌルヲワカの年末ワンマンライヴ・ツアーが今年も行われた。『鳴くよ鴬 咲くよ梅 ~師走のありが10祭~』と題され、東阪にて行われた今回の冬のツアー。東京は、こちらも彼らには馴染みのある東京キネマ倶楽部で行われた。
 今年、バンド結成10周年を迎えた彼ら。これまで放ってきた、数々のライヴでの代表曲や昔からの人気曲を惜しみなく放出した感のある、この日のライヴは、加えて新曲までも楽しむことができた。

 オープニングのインストナンバーは、ジャムセッション的に始まった。まずはギターの坂本夏樹が登場。ギターリフを会場に放つ。そこにドラムの阿部耕作がタイトなリズムを乗せていき、続いて登場したベースのイワイエイキチがダウンピッキングで楽曲にドライヴ感を注入していく。で、肝心のボーカル&ギターのユウは...と見渡すと…。あっ、いたいた! 2階のバルコニーに、だ。マーシャル2段積みの壁の前で、ソリッドなギターを3人が作り出すグルーヴに乗せて放つユウ。そのまま1Fに降りると1曲目の「甲と乙」に突入した。フロア前方の密度がグッと上がる。1曲目からライヴならではの構成や展開が楽しめた同曲。間にはレゲエ/ダブを交えたり、坂本~イワイと、ギター~ベースソロも織り交ぜ、チリヌルヲワカが4人の集合体バンドであることを誇示してくれた。
 続いての「it」は、小節ごとにテンポチェンジが目まぐるしく変わるところがポイントのナンバー。しかし、その辺りも彼らのファンには手慣れたもの。その目まぐるしいテンポチェンジにもしっかりと、しかも実に楽しそうな表情でついていく。「ヨスガ」に入るとライヴは更に走り出す。会場から湧くOiコールに煽られるように、場内のテンションは早くもレッドゾーンだ。
 このグループは、ちょっとしたやさぐれ感も魅力の一つだったりもする。その歌謡的なものとガレージ的な音楽性は、ちょっぴり妖異な雰囲気を持つ、このキネマ倶楽部にぴったりだ。同じ曲にしても他会場に比べ、やや、やさぐれ感がアップしているように映る。

「出来たばかりの新曲を演ります」とユウ。続いては今後のリリースが楽しみな新曲「ヤミとクモ」が放たれる。基本、ちょっと奇天烈でけっこう複雑な展開の曲が目立つのも特徴的な彼らだが、この曲は、そんな中でも、群を抜いて奇天烈度の高いナンバー。ファルセットを交えたユウのボーカルもかなりトリッキーだ。それとは対照的だったのは、続いてのデビュー当初のナンバー「苔の生したこんな代は」であった。雅(みやび)やかなメロディが織り交ざっているのが特徴的な彼らの音楽性。この日の選曲は、中でも今も綿々と続く、そのオリジナリティあふれるメロディの出自さえも感じた。
 中盤では先ほどの新曲「ヤミとクモ」とは全く対照的な、タイトル未定の新曲も披露してくれた。こちらはラモーンズばりのシンプルでパンキッシュなロックンロールナンバー。この2曲の対照的な楽曲が入るアルバムって...と、今後発売になるであろう新作へ想いを馳せてみた。

 折り返し地点とも言える箇所では、珍しい楽曲も飛び出した。というか、ライヴでは初披露だったという「アシンメトリ」だ。PSゲーム『シャリーのアトリエ~黄昏の海の錬金術士~』に起用されていた同曲。ユウのギターリフとスキャットも印象的であった。
 この日、白眉だったのは、坂本がアコギを弾き、それに乗せて歌われた「針と糸」であった。切なさとセンチメンタルさが同曲に乗って会場中に広がっていった。

 本編最後となったMCでは、今年の充実を振り返る言葉が目立った。
「いい一年でした。来年もよろしくお願いします。美味しいおせちが食べれそうです(笑)」(イワイ)
「ミュージシャンとして、今年は実りの多い、一皮むけたことが実感できた1年でした。来年もよろしくお願いします」(ユウ)
 坂本に至っては、30歳になり、そろそろいいアンプを、と、60万円のマーシャルのアンプを買うも、やはりいいギターも欲しくなり、一念発起でヴィンテージのフェンダーのストラト(350万円!!)も購入。その為にも来年は、より一層、このバンドで頑張って行きたい旨が、恒例のラップスタイルで告げられた。

 比較的初期の頃からの曲が多かったのも印象深かった、この日。やはり後半を盛り上げたのは、長年の歴戦を勝ち抜いてきた初期のナンバーたちであった。2ndアルバムから「姫事」「ホワイトホール」「天邪鬼」、1stアルバムから「はなむけ」「なずき」と、歌い続け、プレイし続けてきた代表曲たちが、会場の盛り上がりの火に油を注いでいく。中でも本編ラストの「なずき」は、「10年前に、ライヴに来てくれるお客さんのことを思って書いた曲」とユウが紹介し、プレイを始めただけあって、会場とステージを一つにするにはもってこいのナンバー。会場全体に一体感を溢れさせた。

 2回のアンコールに応えた彼ら。ダブルアンコールでは、これまたずっとライヴでやり続け、ラストにはぴったりの疾風ナンバー「シーホース」が飛び出し、この日のライヴを締めた。

 まさに結成10周年イヤーの終盤を飾る、ラストスパートの体(てい)を魅せた、この日のライヴ。全体的に攻め攻めで前のめり、今年1年の充実を物語っていたのと同時に、来たるべくアグレッシヴになりそうな2016年のチリヌルヲワカの躍進していく勇姿がうかがえた一夜であった。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:yasuyuki kimura】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル チリヌルヲワカ

リリース情報

アヲアヲ

アヲアヲ

2015年04月22日

ヤマミチレコード

1.陰日向
2.アヲアヲ
3.芝居生活
4.コレクター
5.リアル
6.保存
7.松の木藤の花

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セットリスト

鳴くよ鴬 咲くよ梅 ~師走のありが10祭~
2015.12.5@東京キネマ倶楽部

  1. 甲と乙
  2. it
  3. ヨスガ
  4. ヤミとクモ
  5. 苔の生したこんな代は
  6. アヲアヲ
  7. 新曲(タイトル未定)
  8. マシーン
  9. ヒトダカラ
  10. アシンメトリ
  11. 絶対値
  12. 針と糸
  13. 姫事
  14. ホワイトホール
  15. 松の木藤の花
  16. はなむけ
  17. 天邪鬼
  18. なずき
Encore
  1. 陰日向
  2. カスガイ
W Encore
  1. シーホース

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