TRICERATOPS、「“FOR THE STARLIGHTS”TOUR」追加公演をレポート!
TRICERATOPS | 2015.01.19
「今年の終わりにもう1回みんなと会えるなんて、超うれしい」という和田唱(V&G)の言葉はそのまま、この日の観客の気持ちをも代弁していたのではないだろうか。年末に大きなご褒美をもらったような、一足早くお年玉をもらったような、そんなハッピーな空気が充満したライヴとなった。『TRICERATOPS WINTER TOUR 2014 “FOR THE STARLIGHTS”』の追加公演の2014年12月30日の赤坂BLITZ。このツアー、いわゆるアルバム・ツアーではない。本ツアー最終日の12月10日がニューアルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』のリリース日で、最新アルバムからの曲も入っているのだが、新作だけが軸というわけではなくて、新旧のナンバーが混じった構成となっていた。追加公演では初披露の曲が入ってくるなど、6曲ほど入れ替えもあったのだが、彼らがこの時期に届けたかったお馴染みの曲と新曲とが絶妙のバランスで配置されることで、デビュー時からブレることなく貫いていることと進化し続けていること、そのふたつの要素がはっきり見えてくるステージとなった。
オープニングナンバー「KING OF THE JUNGLE」は林幸治(B)のベースでの始まり。和田のギター、吉田佳史(Dr)のドラムが加わって、一気に立体的なバンド・サウンドが展開されていく。客席からのハンドクラップも加わり、会場内に熱気が充満していく。ツアーの締め、そして2014年の締めのステージということもあって、気合いの入った渾身の演奏なのだが、彼らは力むことなく思いをしっかり歌の中に込めていた。勢いがあってワイルドでありながら、ひとつの音もおろそかにしない丹念さと緻密さも備えている。和田が「キックとベースのアルバム」と称した『SONGS FOR THE STARLIGHT』という最高傑作アルバムを作ったことで、ライヴのハードルも必然的にかなり上がっていたはずだが、彼らはそのハードルをものの見事にクリアーしていた。強靱かつ柔軟なグルーヴと芯の強さと懐の深さを備えたサウンド、ニュアンス豊かな歌声、息の合ったハーモニーは今の彼らだからこそだろう。
ニューアルバム収録曲の「ポスターフレーム」では柔らかな和田の歌声と3人のハーモニーが気持ち良かった。曲調は優美なのだが、リズムは躍動感とアタック感とを備えていて、ソフトであることとパワフルであることが両立している。ギターとベースの印象的なリフで始まった「僕はゴースト」は哀愁漂う演奏でありながら、個々の音がソリッドでエッジがあって、せつなさとタフさとが共存している。こうした様々なエッセンスが混じり合って、TRICERATOPSのオリジナリティーあふれる音楽が生まれている。客席からのカウントで始まった「Now I’m Here」、和田のギターソロから始まった「GROOVE WALK」など、踊れるロックは序盤から全開だ。「汗かいた? それがロックンロールだよね」と和田。
体ではなくて、内面の感情が揺さぶられたのは中盤のアコースティック・コーナー。スモーキー・ロビンソンのカバー「Ooo Baby Baby」では和田のスイートな歌声、3人の見事なコーラスと歌心あふれる演奏に聴き惚れた。ルーツ・ミュージックへの深いリスペクトがあるからこそ、TRICERATOPSの音楽が特別な輝きを獲得しているのだということがよくわかる。平井堅や福山雅治の歌の物真似で会場内の笑いを誘う場面もあった。MCは忘年会的なノリなのだが、いざ演奏が始まると、この瞬間にしかない集中力あふれるプレイを展開していく。ニューアルバム収録曲「ふたつの窓」では和田のヒューマンな歌声にグッときた。ラヴソングであると同時に、ともに困難を乗り越えていこうという決意表明の歌としても響いてきた。ともにというのは、バンドとリスナー、そしてメンバー同士。
ニューアルバムの「GRRR! GRRR! GRRR!」を彷彿させるベースとドラムのセッション「HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE!! (GRRR! GRRR! GRRR! ver.)」での柔から剛への転換も鮮やかだった。文句なしでかっこいいプレイに体が動く。この強靱なグルーヴこそがTRICERATOPSの音楽の骨格だ。さらに「Mirror」からクリームのカバー「I’m So Glad」へ。ロックバンドとしての彼らの自在な演奏のなんとスリリングなことか。ニューアルバムの曲、「GOOD ENOUGH」はこの日が初披露なのに、早くも観客がシンガロングしていた。初めてアルバムで聴いた瞬間からライヴで演奏されるのを心待ちにしていた、とてつもないパワーを持った曲だ。渾身の演奏に胸が熱くなると同時に、会場内が感動しているその熱い波動にさらに胸が熱くなる。この曲の歌詞を借りるならば、まさにこの光景こそがミラクルだ。「Raspberry」「WE ARE ONE」と、このミラクルは持続していく。本編ラストの「スターライト スターライト」では頭上でミラーボールが輝き、フロアには強靱なビートとラヴが充満した。こんなにも人々をハッピーにしてしまう音楽はそうはない。見上げると、ミラーボールまでもが笑顔を浮かべている、ような気がした。
アンコールは「2020」での始まり。この曲がリリースされた2002年には2020年はまだまだ遠い未来と感じていたのだが、あと2日で2015年というこのタイミングで聴くと、また違った感じで響いてくる。5年なんかきっとすぐだろう。彼らが2020年にこの「2020」を演奏するのをなんとしても観てみたい。そんな未来に思いを馳せてしまったのは、彼らが今もなお、リスナーとともにある音楽を作り続けているから、そして進み続けているからだ。撮影自由ということで客席からたくさんの携帯がかざされる中で演奏された「Fall Again」、「FUTURE FOLDER」、さらになんとWアンコールでは「Jewel」! 愛にあふれた演奏に会場内が感動で包まれた。観客に捧げられたラヴソングがたくさん披露された夜となった。
「みんながいるから、オレ達はこういう状態でいられる。だからとにかく全力で返したい。また近々会って、いろんなものを交換していこう。これからも末永くみんなの近くにいるバンドでいたいと思っています。みんなも近くにいてください」と和田。この言葉がツアー・タイトルの“FOR THE STARLIGHTS”の意味を雄弁に表していた。この日、17年あまり同じメンバーでバンドが継続していることの素晴らしさとかけがえのなさを実感した。もちろんただ続けばいいというものではない。惰性で続けるくらいなら、スパッと解散した方が潔いし、何億光年も昔に消滅した星々がいまもなお光り輝いているように、バンドが解散しても、音楽は存在し続けていく。だが、バンドが最高到達点を更新していくのをリアルタイムで目撃出来る幸せ、初めて聴く新曲に驚き、感動する幸せ、そして再会を心待ちにする幸せは現在進行形のバンドだけがもたらしてくれるものだ。TRICERATOPSがこの時代のこの場所に存在していることの喜びを強く感じたステージだった。終演後、次なるツアーも発表になった。まだ演奏されていない『SONGS FOR THE STARLIGHT』の曲たちもフロアで鳴り響く瞬間を待ち望んでいるに違いない。つまりお楽しみはまだまだ続いていくということだ。
【取材・文:長谷川誠】
【撮影:山本倫子】
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リリース情報
セットリスト
WINTER TOUR 2014“FOR THE STARLIGHTS”追加公演
2014.12.30@赤坂BLITZ
- KING OF THE JUNGLE
- あのねbaby
- ポスターフレーム
- 僕はゴースト
- Now I’m Here
- GROOVE WALK
- Ooo baby baby
- PUMPKIN
- ふたつの窓
- HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE!! (GRRR! GRRR! GRRR! ver.)
- Mirror
- I’m So Glad
- GOOD ENOUGH
- CanとCan’tのパスポート
- Raspberry
- WE ARE ONE
- スターライト スターライト
- 2020
- Fall Again
- FUTURE FOLDER
- Jewel
お知らせ
ALBUM『SONGS FOR THE STARLIGHT』リリースツアー第一弾
2015/05/24(日)大阪 なんばHatch
2015/06/04(木)東京 Zepp Tokyo
2015/06/05(金)東京 Zepp Tokyo
2015/06/07(日)愛知・Zepp Nagoya
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。