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5人のエンターテイナーが奏でた、最高に楽しい音楽の時間!東京カランコロンのツアーファイナル

東京カランコロン | 2015.07.23

 ステージを覆っている紗幕に投影されていたメンバー5人の両目。アルバム『UTUTU』のジャケット写真同様、片目がずっと閉じられているのであれば気にならないのだが、時折、誰かしらの目がまばたきをするので、何だかソワソワしてしまう……という不思議なお出迎えが待っていた中野サンプラザ。いちろー(Vo & G)とせんせい(Vo & Key)による影アナウンスを経て、いよいよ開演となった。SEが流れ、紗幕上に映し出されたツアー中の各地の写真。そして、かみむー氏(Dr)のスティックカウントを合図に1曲目「恋のマシンガン」がスタートした。幕が切って落とされ、ライトで照らされたステージから一気に迸ったカラフルなサウンド。待ちわびていた観客は、大喜びしながら身体を揺らして手拍子。東京カランコロンの華やかな魅力が、会場の隅々にまで広がっていった。

 躍動感溢れるサウンドが猛烈にカッコよかった「16のbeat」。いちろーとせんせいによる可愛らしい動きのコンビネーションダンスが途中で飛び出した「フォークダンスが踊れない」の後、最初のMCタイム。「ずっとツアーを回ってきて、今日がファイナルです。おこし頂きありがとうございます」、挨拶をしたいちろーであったが、ふと「それ何?」と佐藤全部(B)が持っている棒状の物体について尋ねた。「自撮り棒を使ってとれた魚。写真撮れなくて、魚とれたの。ピチピチしてます!」、自撮り棒の先端から垂らした紐の先に取り付けた魚のぬいぐるみを示した佐藤。なるほど。自撮り棒を釣竿に見立てているわけか。彼が着ている白いTシャツが真っ黒に汚れているのも目を引く。“中野ワンマン”と手書きしてあるみたいだが、水性インクで書いちゃったもんだから汗で滲んでいる……佐藤のシュールな存在感が際立つインターバルとなった。

 インディの頃に中野サンプラザの地下のスタジオでよく練習をしていたというエピソードが語られた後、さらに演奏が続いた。「夢かウツツか」と「そうだ、フェイシャルへ行こう!」によって生まれた熱い盛り上がりを、サイケデリックなムードへと転じたのは、おいたん(G & Cho)のエモーショナルなギタープレイから始まった「ビバ・ラ・ジャパニーズ」。日本地図、花札、富士山など、和的なイメージの映像が薄暗いステージに投影され、妖艶なサウンドがじっくりと展開。ホールのライブならではの凝った演出が発揮されていた。続いて「僕の辞書」。間奏で佐藤によるトランペットプレイも飛び出し、観客は大喝采。最新アルバム『UTUTU』に収録されている曲の多彩な魅力が、次々示されていった。

 中盤に用意されていたのは、せんせいが鍵盤をプレイしながらじっくり歌声を届けるコーナー。怖い童話のようなおどろおどろしいムードが漂う「左耳から白旗」がまず披露されたが、機材トラブルが発生。スタッフが調整するのを待つ間、佐藤がクネクネと奇妙な動きをして場を繋ぐ……そんな場面も挟みつつ突入した「△□」。郷愁を誘うメロディが胸にグッと沁みた。そして、このコーナーのラストを飾ったのは「かいじゅうになって」。ピアノを弾きながら歌い、音が出るおもちゃを使って効果音を添えるせんせいの笑顔がとても優しい。童謡のような風味を帯びた3曲が、観客を魅了していた。

「普段のイベントとかではできない曲をやる、ワンマン恒例のゾーンです。今日は特別に、みんなもドキドキさせてやろうかなと」、いちろーが言って突入した“どきどきゾーン”。まだリリースされていない曲が最初に届けられた。「未完成な曲がありまして。みなさんの歌声を入れてCDにできたらいいなと思っていて、このツアーで録っています」、これからやろうとしている曲の説明と観客に歌ってもらうパートのレクチャーを経て、レコーディングへ。「♪ララララ~」という大合唱と手拍子がホールの天井にまで響き渡り、メンバーたちはとても満足そうな表情を浮かべていた。

 どきどきゾーンは、さらに続いた。瑞々しいメロディが観客を温かく包んだ「スパイス」。その次は「J-POPって素敵ね」。「♪J-POPって素敵ね ララララ」という部分を「♪中野サンプラザフォーエバー ララララ」や「♪ホールでワンマ んって素敵ね ララララ」とアレンジして歌ったおいたんと一緒に、観客も元気いっぱいに声を響かせた。そして、どきどきゾーンを締め括ったのは「ネオンサインは独りきり」。CDのブックレットにメンバーの担当パートが“うたとダンス”と表記されていたこの曲。まさしく、その通りのパフォーマンスが繰り広げられた。まるでダンスボーカルユニットのように横一列となって大熱唱した5人。全力投球のダンスも繰り広げられ、突然でんぐり返しを始める佐藤の暴走も炸裂。全員が渾身のキメポーズをしてエンディングを迎えたが、「ほんとすみません……」と実に照れくさそうな彼らであった。

 どきどきゾーンの後は、いちろーとせんせいによるアコースティックのコーナー。まず、「ぽっかりsweet」が届けられた。いちろーがアコースティックギター、せんせいが鉄琴を演奏。椅子に座ってリラックスしながら響かせる歌声が、観客を和ませる。その次に披露された「マッハソング」では、ステージ上をゆっくり巡りながら伸び伸びと歌ったせんせい。バンドアレンジとはまた一味違う温かい空間を生み出した2曲となった。

「『UTUTU』というアルバムができたことによって、東京カランコロンは内側も外側も変わったと思っています。あのアルバムがこうやってみんなと出会わせてくれて……触れようと思ってくれたことを本当に嬉しく思ってます。来てくれてありがとうございます」、感極まった様子で時折言葉に詰まりながらも、心からの感謝を観客に伝えたせんせい。「僕らは流行に乗ってないバンドだけど、今日、何かが伝わってるんじゃないかなと。これからもしょうもないことに全力を注いで突き進むので、よろしくお願いします!」、いちろーも想いを語った。そして、「ほんとにいい曲ができた。大事な曲をやります」と言い、「ヒールに願いを」へ。エモーショナルなサウンドに彩られたメロディが、どんどん光量を増していく。観客は瞳を潤ませながら耳を傾けていた。昨年末からライブで披露されるようになり、アルバム『UTUTU』にも収録されたこの曲。既に東京カランコロンにとってのかけがえのない1曲となっていることを、まざまざと感じた。

「いっせーの、せ!」「泣き虫ファイター」「笑うドッペルゲンガー」……エネルギッシュなナンバーが連発された終盤。本編ラストの「終点から始発へ」を演奏し終わると、メンバーたちはステージを後にしたが、観客の間からアンコールを求める手拍子が起こった。すると、ステージ上のスクリーンに流れたVTR。映像内でせんせいと佐藤がグッズ紹介をしたのだが、2800円分買って1万円のおつりを渡すなど、どう考えても何かが間違っているやり取りがユルユルと展開し、観客は大爆笑。すると、なんとせんせいと佐藤が1階席に登場! 2人は歓声を浴びながら練り歩き、駄菓子を撒きながら、いちろー、おいたん、かみむー氏が待っているステージへと向かった。

 5人がステージに揃い、アンコール1曲目に届けられた「少女ジャンプ」。手拍子をしながら盛り上がる人々の勢いがものすごい。そして、「最後はこのホールをディスコにして帰りましょう!」と言ったいちろー。彼が情熱的に歌いながら踊った「true!true!true!」で終演を迎えたかに見えたが、観客の歓声は全く収まらなかった。「今日は特別にもう1曲やらせて。毎日が楽しく、日々が前向きになるようにという願いをこめて。久しぶりの曲をみなたん」……良いことを言っていたのに肝心のところで“みなさん”を“みなたん”と言ってしまったいちろーの顔が真っ赤。可愛らしいハプニングが観客を大喜びさせ、ラストの曲「ばいばい、また明日」へ突入した。牧歌的な雰囲気のサウンドが奏でられ、明るい大合唱が起こる。「このホールに響かせて!」、いちろーがマイクを客席側に向けて呼びかけると、一際高まった「♪ばいばい、また明日」という歌声。その響きに包まれたメンバーたちは、心底嬉しそうに笑顔を浮かべる。素晴らしい一体感が生まれたエンディングであった。

【取材・文:田中大】

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リリース情報

スパイス(東京カランコロンジャケット版)[CD+DVD]

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2015年06月10日

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[CD]
1.スパイス
2.お料理行進曲

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東名阪でワンマ ソツアー~友達になりたい!~ 3月12日 渋谷WWW

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お知らせ

■ライブ情報

the pillows presents 恋のマシンガンに気をつけろ!
2015/07/27(月)新宿 LOFT
w/ the pillows

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015
2015/08/02(日)国営ひたち海浜公園

MEET THE WORLD BEAT 2015
2015/08/08(土)万博記念公園自然文化園「もみじ川芝生広場」

OCEAN ROCK 2015
2015/08/18(火)音霊 OTODAMA SEA STUDIO

ロックロックこんにちはVer.19
2015/08/29(土)Zepp Namba

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015
2015/09/26(土)岐阜県 中津川公園内特設ステージ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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