indigo la End 過去最大規模のライブ 東京・国際フォーラム ホールAをレポート
indigo la End | 2015.12.09
川谷絵音(V&G)が率いるindigo la Endが12月3日(木)、東京・国際フォーラム ホールAでワンマンライブ「蒼き花束」を行った。この日は川谷の27歳の誕生日。彼らにとって過去最大規模のライブ(観客は約5000人。チケットはソールドアウト!)で4人は、質の高い楽曲/演奏をしっかりと聴かせてくれた。
この日のオープニングナンバーは、2015年9月にリリースされた両A面シングルの収録曲「雫に恋して」。AORの進化系とも言えるミディアムチューンが会場全体に響き渡り、オーディエンスも静かに身体を揺らし始める。さらに心地よいバンドグルーヴと“好きだったと言えなくても あなたの顔が見たいの”という切ないリリックがひとつになった「夜汽車は走る」、疾走感のあるリズムと長田カーティスのドラマティックなギターフレーズが印象的だった「ダビングシーン」、佐藤栄太郎(Dr)のシャープなドラムソロ、後鳥亮介(Ba)の派手なスラップベースで幕を開ける「花をひとつかみ」、サポートメンバーとして参加した佐々木みお(Cho)、服部恵津子(Cho、Piano)の美しいコーラスワークに彩られた「アリスは突然に」を披露。洗練されたアレンジメントと情緒的なメロディ、メンバーの卓越した演奏センスがバランスよく共存したステージは、ここにきてさらに深みを増しているようだった。
最初のMCで川谷は「ソールドアウト、ありがとう」と感謝の言葉を述べる。続けて「(バックステージにある)モニターで会場を見たら全然(観客が)いなくて、“ソールドアウトじゃなかったのかな?”って心配になった」と話し、そこからなぜかチケット売買サイトに関して思いの丈を吐露。……メンバーも「その話、もうやめない(笑)」とツッコミを入れるなど、気の置けないトークが繰り広げられた後、ニューシングルの収録曲「忘れて花束」へ。さらに服部の鍵盤がノスタルジックなムードを演出した「夢のあとから」、しっかり抑制された演奏と“今でも好き”という切実な思いを映し出す歌が溶け合う「幸せが溢れたら」など、じっくり聴かせるタイプの楽曲を続け、このバンドが持つ豊かな音楽性を改めてアピールした。
その後はアコースティックギター、カホンなどを中心としたアコースティック・コーナーへ。この時期にぴったりの切ない冬ソング「白いマフラー」(2012年にライブ会場限定でリリースされた「冬の、夕.ep」収録曲)、アップテンポの楽曲をバラード調にリアレンジした「さよならベル」が演奏され、会場をメランコリックな雰囲気で包み込む。そして「これまでアーティストに提供した曲のなかで、このタイミングで歌いたい曲があります」(川谷)という言葉とともにSMAPに提供した「好きよ」をセルフカバー。川谷、服部、佐々木の3人によるオーガニックなアレンジを含め、きわめてレアなシーンだったと思う。
この日は川谷の誕生日ということで、サプライズ的な演出もたっぷり。まずは長田がリードする形で「ハッピーバースデー」を観客といっしょに合唱。続いてステージにスクリーンが用意され、川谷と交流のあるアーティストからのお祝いメッセージが映し出される。
まずはNakajin(SEKAI NO OWARI)が「僕の誕生日の前日に絵音くんのイベントに行ったんですけど、イベントが終わった後、車で移動していたら24時になった瞬間に絵音くんが“おめでとうございます!”って言ってくれました」というエピソードを披露。続いてヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)が「絵音!好きだ―!」と叫び、Perfumeのあ~ちゃんは「(絵音が)どんどん痩せてるから“食べたほうがいいよ”と言ったら、“食べてるんだけど、痩せちゃう”って。そんなに幸せなことがある?」とコメント。最後にウエンツ瑛士が「絵音くんはいつも自分が出ているミュージカルも見に来てくれます。前は忙しいなか1幕だけ見てくれたんだけど、あとで“結末を教えて”ってうるさかった(笑)」と語るなど、川谷のプライベートが感じられるトークが続いた。 さらに「どうしても直接お祝いしたいという人が来ています」とステージに登場したのは、ゲスの極み乙女。の休日課長。川谷に花束を渡した休日課長は「川谷絵音の音楽が大好きです。これからもずっと、その声を日本中、いや、世界中に轟かせてほしい」と語り、会場から大きな拍手が起こった。
そしてライブが再開……と思いきや、今度はWEAVER (Piano & Vocal)杉本雄治が登場。川谷と同じ12月3日が誕生日の杉本は「(トークが)長いよ!」と言いながらも、お互いの誕生日を祝福。
ツインボーカルのスタイルで「瞳に映らない」を披露し、この日だけのレアなコラボレーションが実現した。
佐藤、後鳥によるアドリブ・セッションからライブはクライマックスへと突入。「悲しくなる前に」「夜明けの街でサヨナラ」をいうアッパーチューンを続けざまに放ち、オーディエンスのテンションを一気に引き上げた。
川谷はその後、客席に向かってゆっくりと語り始めた。初めての渋谷CLUB QUATTRO(2013年)のライブで思うように客席が埋まらず、メンバーの間でイヤな空気が生まれてしまったこと、2014年にバンドを脱退したオオタユウスケに対して「今日のライブを見てほしかった」と思っていたこと、そして、現在のメンバーに対する感謝。「こんなに話すはずじゃなかったんだけど」と言いながら自らの感情を吐露する川谷からは、この記念すべきライブへの強い思いがはっきりと伝わってきた。本編ラストは「夏夜のマジック」。ロマンティックな旋律と「夏になると思い出す別れの歌も 今なら僕を救う気がする」という歌詞が広がり、会場全体に大きな感動が生まれた。
アンコールでは2016年2月3日(水)にリリースされる5thシングル「心雨」(スマートフォン・アプリ「消滅都市」CMソング)を初披露。雨を想起させるライティングとともにパフォーマンスされたこのミディアムバラードは、彼らの新たな進化を告げているようだった。ライブのラストを飾ったのは、インディーズデビュー盤「さようなら、素晴らしい世界」(2012年)に収録されている「素晴らしい世界」。“一人で生きていく”という決意を綴った最後のフレーズを川谷は、溢れんばかりの感情とともにアカペラで歌い上げ、この記念すべきライブを締めくくった。
【取材・文:森朋之】
【撮影:井手康郎】
リリース情報
心雨
2016年02月03日
ワーナーミュージック・ジャパン
2.24時、繰り返す
3.風詠む季節
セットリスト
indigo la End One-man live 「蒼き花束」 2015.12.3@東京国際フォーラム ホールA
- 雫に恋して
- 夜汽車は走る
- ダビングシーン
- 花をひとつかみ
- アリスは突然に
- 忘れて花束
- 夢のあとから
- 幸せが溢れたら
- 白いマフラー
- さよならベル
- 好きよ
- 瞳に映らない
- 悲しくなる前に
- 夜明けの街にサヨナラを
- 夏夜のマジック
- 心雨
- 素晴らしい世界
お知らせ
COUNTDOWN JAPAN 15/16
2015/12/28(月)幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。