レビュー

ヤユヨ | 2020.12.14

 デビューミニアルバム『ヤユヨ』をリリースした今年の8月前後から配信も含めたライブやイベント出演を重ねていて、熱量と瑞々しさを兼ね備えた音楽性への注目度が着々と高まっているヤユヨ。





 このたび配信リリースされた新曲「君の隣」は、彼女たちの存在をさらに幅広い層に示すことに繋がるだろう。初冬の恋愛模様を映し出すこの曲は、「幸せ」に常に付き纏う「切なさ」を鮮やかに描写している。



 「幸せ」という状態は、穏やかなムード、温かな色合いを完璧に帯びているわけではない。ある程度の年齢に達している人ならば、おそらくこの事実に大いに心当たりがあるだろう。幸せを噛み締めるほどに失うことが恐ろしくなり、募る愛しさは心を不安定に揺さぶり、共に過ごせない時間は凍えるような寂しさを突き付けて止まない。そんな厄介な性質を帯びながらも追い求めずにはいられないものを浮き彫りにしているのが「君の隣」だ。

 眠る前のひと時に湧き起こる胸が締め付けられるような感覚を捉えている<短い針が 30°の頃、15℃の部屋で 恋しくなるんだろうなぁ>という印象的な一節。自分の家に帰らなければならない時間が迫っている中での「こっちおいで。」という言葉が掻き立てる複雑な感情。伝わってくる温もりとともに胸の奥で広がっていく切なさ……これらを表現しているリコ(Vo/Gt)の歌声が、とても心地よい。

 リコはリスナーの心に綺麗なさざ波を立てるかのような歌声の持ち主だ。その響きは、ヤユヨの音楽に独特な奥行きを与えている。躍動感に満ちたナンバーにパワフルさの対極にあるとも言えるノスタルジーを加えたり、強気な言葉に脆さを滲ませたり、多彩なニュアンスを帯びた表現を常に届けてくれる。この歌声だからこそ、幸せと不可分でありながらも描写が容易ではなさそうな切なさが、「君の隣」に美しく刻み込まれたのだろう。彼女の稀有な歌声を堪能することができるという点でも、この曲の魅力は大きい。

 楽器の演奏面に着目しても、ヤユヨの音楽は非常に魅力的だ。歌メロの煌めきを効果的に後押しするフレーズを連発して、絶妙なポイントでギターを実にうれしそうに鳴り響かせるぺっぺ(Gt/Cho)。サポートプレイヤー・すーちゃん(Dr/Cho)とのコンビネーションの良さを発揮しながらバンドアンサンブルの土台をしっかりと支えているはな(Ba/Cho)。頼もしいメンバーが奏でるサウンドに包まれながらリコの歌声が迫ってくる様は、何度も繰り返し味わいたくなる。ヤユヨの音楽にまだ触れたことのない人がいるならば、まずは「君の隣」に耳を傾けてみるのはいかがだろうか。「このバンドと出会えてよかった」という想いで胸がいっぱいになるはずだ。

【文:田中大】



■配信リンク

ヤユヨ
「君の隣」
https://lnk.to/yayuyo-kiminotonari



■ライブ情報

ヤユヨ初めましてのワンマンツアー2021
~eggman40周年と共に~

2021/03/28(日)東京 渋谷eggman
2021/04/09(金)愛知 名古屋 池下UPSET
2021/04/11(日)大阪 心斎橋Music Club JANUS



スペースシャワー列伝 第144巻?祭燦再始の宴?
2020/12/20(日)東京 渋谷WWW X
w/ KALMA / ヤユヨ

「磔磔のその夜に」
2020/12/25(金)京都 磔磔
w/ 突然少年 / あすなろ白昼夢

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
2020/12/26(土)~12/28(月)大阪 インテックス大阪
※ヤユヨは12/28(月)に出演

「ロッキン・ライフ in ライブハウス vol.1」
2020/12/30(水)大阪 心斎橋Music Club JANUS
w/ ナードマグネット / OKOJO / This is LAST / Split end

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

リリース情報

君の隣

君の隣

発売日: 2020年11月27日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: TALTO / murffin discs

収録曲

01.君の隣

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