東京カランコロン、メンバー全員が力を合わせた最新作『5人のエンターテイナー』
東京カランコロン | 2013.11.22
- EMTG:すごく5人のバンド感が出ていますよね。どういう構想がありました?
- いちろー:2月に前のアルバム『We are 東京カランコロン』を出して、4月、5月で初めてのワンマンツアーを回ったんですけど、ファイナルの赤坂ブリッツが5人でやり切ることのあの時点での完成形になったんです。あと、ツアーでは「16のbeat」もやって、その後にシングルでもリリースしたんですけど、「プロデューサーさんとかをつけず、ライブでやってることをそのまんま音にしよう」っていう自然な流れで録って、すごくいいものになったんですよね。そういうのもあり、今回のアルバムは自ずと「5人でやれることをやって、プロデューサーさんとかもつけずに5人でやる」っていうことになったんです。
- せんせい:このアルバムを作っている時は、すごくテンションが高かったです。そこまで苦労はしなくて。楽しんで曲作りをしていましたね。その「楽しかった」っていうのが、いろんな曲に表れているなと思っています。
- EMTG:1曲目の「誰かのエンターテイナー」が5人のアカペラで始まるというのは意表を衝かれましたけど(笑)。
- いちろー:そうでしょうね(笑)。最初はただ「アカペラの曲をやりたい」っていうアイディアだったんです。アカペラってやっぱり飛び道具だから、アルバムの後半とか、バンドサウンドを聴くのに疲れた頃に入れるつもりだったんですけど、1曲目になっちゃいました(笑)。これをどこにいれるか考えていた時はアルバムのタイトル自体も決まっておらず。セルフプロデュースであることを反映して『DIYカランコロン』とかいうような案もあったんですけど……どうもしっくりこなくて。そんなことを考えていた末に思いついたのが『5人のエンターテイナー』だったんですよ。
- EMTG:つまり「誰かのエンターテイナー」が、アルバムの全体像に輪郭を与えた?
- いちろー:そうでうすね。「誰かのエンターテイナー」の歌詞ができた時に「大事な曲だな」って思って、「これが1曲目にあって、アルバムのタイトルを『5人のエンターテイナー』にして、最後が「J-POPって素敵ね」で締め括られたら、すごくいいな」と思ったんです。そうするとこのアルバムで言いたかったことが全部1本の線で通るし、聴いている人にも伝わるんじゃないかと。
- EMTG:どんなことを伝えたいと思っていました?
- いちろー:「自分達はなんで音楽をやっているのか?」っていうのをちゃんと説明しないといけない……というか説明したいと思ったんです。それだけこの前のツアーで得たものが大きかったので、ちゃんとみんなに返したかったんですよね。「聴いてくれる人がいるから、自分達がいる」っていう想いは、「エンターテイナー」っていう言葉に全て含まれるなと。
- EMTG:だからこそ「誰かのエンターテイナー」を1曲目に?
- いちろー:そうなんです。メンバーとかレコード会社の人とかを集めて「正直言って飛び道具だけど……」って言いつつ理由も説明しました。そうしたらみんなも「いいんじゃない?」って賛成してくれました。
- EMTG:僕も賛成です。この曲で始まって「J-POPって素敵ね」で終わる構成って、今の東京カランコロンが音楽を作って鳴らす意味を示す大きな柱になっていると思います。
- せんせい:「誰かのエンターテイナー」って、アルバム全体をまとめてくれていますよね。今までわたしの中にずっとあった「お客さんに応えたい、楽しませたい、元気になってもらいたい」っていう気持ちが、この曲がアルバムの1曲目にくることでひとつの答えとなったなと思いました。わたしの中にあった感情に対して答えを出してくれましたね。
- EMTG:せんせいが作詞をした「J-POPって素敵ね」といちろーさんが作詞をした「誰かのエンターテイナー」って対になっていますよね? どちらも音楽の持っている素敵なパワーと、それをみんなに届けることの意味を歌っているのを感じるので。
- せんせい:《J-POPって素敵ね》っていうフレーズは、いちろーさんが曲を作っている段階から出てきていたんです。でも、他の部分の歌詞が全然できていなくて。この他の部分の歌詞はいちろーさんと話しながら書いたんですけど、「この曲の歌詞、「誰かのエンターテイナー」と繋がっていたら面白いよね」と。その時点でこの2曲が最初と最後になるのが決まっていたというのもあったので。だから使っている言葉や表現に繋がりがあったりするんです。言いたいこと、見ている方向は一緒ですね。
- いちろー:「どういうことを僕らは歌いたくて聴かせたいのか?」、そういうことを今回すごく話したんです。それはワンマンツアーと今年の夏のフェスも大きかったんだと思います。夏フェスって「盛り上がったもん勝ち」みたいなところもあるじゃないですか。でも「人が集まって盛り上がったら、それがいい音楽なの?」というのをやりながら思ったんですよ。歌のパワーってノリの良さということとは違う。「ちゃんとお客さんの1人1人に伝わっていく音楽を作るのが、自分達がやるべきことだな」と。自分達がやりたいと思ったアイディアを全部試したアルバムの最後で「やっぱJ-POPですよね?」って締め括れるのが、すごくいいと思いました。そういうのが反映されたアルバムになりましたね。まあアカペラで始まるし、最後の「J-POPって素敵ね」はおいたん(G・Cho)の歌で始まるし、相当むちゃくちゃなんですけど(笑)。
- EMTG:(笑)言いたいことの柱がしっかり構築されているからこそ、個性が強いそれぞれの曲がごく自然に連なっているんだと思います。例えば「マッハソング」なんて、めちゃくちゃ潔いカッコよさじゃないですか。
- いちろー:ただ「マッハな曲をやりたい!」ってだけだったんですけどね(笑)。
- せんせい:どんどんウチのドラムの最速が更新されています。そのうち、2バスのドラムセットになってたりして(笑)。
- EMTG:この曲とか「走れ、牧場を」や「言え言え言え」って軽快でパワフルなサウンドでありつつ、前向きになれるメッセージもこもっていますよね?
- いちろー:やっぱり「お客さんに何を言いたいのか?」を話し合ったからだと思います。「マッハソング」は最後の最後までせんせいは歌詞で悩んでいましたけど、言いたいことがすごく詰まっている歌詞ですよ。
- EMTG:「走れ、牧場を」もグッときます。
- いちろー:「昨日走った自分を越えられるかどうか?」っていう闘いをしなくちゃいけないっていうことを言いたかったんです。どの世界もそうでしょうけど、結果とか数字って問われるじゃないですか。でも、それによって自分を見失うのって何かが違うなと。そういう意味でも、この曲って一番好き勝手にやっているんですよ。リード曲ではあるんですけど(笑)。
- EMTG:なるほど(笑)。あと、「キャラメル」とか「てのひら」とかを聴いて改めて思ったんですけど、何処か童謡にも通じるような郷愁を誘う要素も、東京カランコロンの魅力的な一面だなと。
- せんせい:「キャラメル」と「てのひら」は、ほとんどわたしが作った曲です。「てのひら」は、わたしのソロの時の曲なので、よりわたしの色が出ていますね。「キャラメル」は『みんなのうた』で流れるような雰囲気のものを作りたいと思っていたので、子供でも口ずさめるような曲にしたかったんです。元々童謡とか好きなんですよ。
- いちろー:「みんなのうた」をやりたいってずっと言っているよね?
- せんせい:やりたい(笑)。ずっと昔からやりたいと思っています。
- EMTG:ラブソングの「指でキスしよう」も、素朴な温かさがあるじゃないですか。こういう雰囲気って、このバンドのポイントのひとつですよ。
- せんせい:その曲はカランコロンで初めて自分の言葉で書いたラブソングですね。カランコロンの曲として見たらすごく生々しいというか。女性っぽい曲なのかも。でも、わたしにとっては普通の表現。今回のアルバムってすごくやりたいことをやれているので、よりわたしの色が出ているのかもしれないですね。
- EMTG:こういう様々な曲達が抜群に煌きつつ、本編は「J-POPって素敵ね」で終わるわけですけど……何だか不思議なボーナストラックが(笑)。
- いちろー:みんなでラップしています(笑)。前からやりたくて。でも、あまりのクオリティの低さに「……これはボーナストラックだな」と(笑)。
- EMTG:聴いて和みました(笑)。さて。アルバムの全体像を振り返って頂きましたが、どんな想いがあります?
- せんせい:出るのがめちゃくちゃ楽しみです。
- いちろー:そしてツアーも楽しみですよ。今度は10ヶ所回るので。
- せんせい:前回より3ヶ所多いんです。今からもう楽しみですよ。最後爆笑で終わるのが見えています。
- いちろー:今回のアルバムはツアーを思い描きながら作りましたからね。「どきどきゾーン」でラップをやったり、アンコールで「J-POPって素敵ね」をおいたんがピンスポを浴びて歌い始めたり、最後は大合唱で……っていう絵がもう見えています。
- EMTG:なんか最近メンバー全員の歌の責任が増していません?
- いちろー:そうかも(笑)。自分のパートの楽器以外の部分も担うアルバムを作っちゃいましたから。
- せんせい:それも含めて楽しそう(笑)。
- いちろー:ツアーファイナルのZepp DiverCityでラップをキメますから(笑)。
2ndアルバム『5人のエンターテイナー』は、現在の東京カランコロンの中に渦巻くフレッシュな息吹をストレートに伝えてくれる1枚となった。全曲がセルフプロデュース。「5人で作る」ということをコンセプトに仕上げられた曲達は、様々なアイディア、サウンド、胸に沁みるメロディ&ハーモニーを満載した極上のポップミュージックだ。そして、音楽をリスナーへ届けることに対する情熱と喜びも鮮やかに浮き彫りにしている。紛れもなく彼らの代表作となるはずのこのアルバムについて、いちろー(Vo・G)とせんせい(Vo・Key)が語ってくれた。
【取材・文:田中大】
ビデオコメント
リリース情報
5人のエンターテイナー(初回生産限定盤)
2013年11月27日
avex trax
【CD】
1.誰かのエンターテイナー
2.マッハソング
3.走れ、牧場を
4.指でキスしよう
5.true! true! true!(新録)
6.キャラメル
7.30のbeat
8.16のbeat
9.F.L.O
10.言え言え言え
11.てのひら
12.J-POPって素敵ね
+ボーナストラック
【DVD】※初回生産限定盤のみ
・ワンマンツアーファイナル「ワンマ ん2013」5月12日赤坂BLITZ
・いちろー&せんせい Acoustic Live at QUEEN’S HOTEL antiques
1.誰かのエンターテイナー
2.マッハソング
3.走れ、牧場を
4.指でキスしよう
5.true! true! true!(新録)
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『5人のエンターテイナー』リリース記念全国ツアー“ワンマ んツアー2014”
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