2014年第1弾リリースとなる両A面シングル。パスピエの進化が止まらない!
パスピエ | 2014.03.27
- EMTG:「MATATABISTEP」は、パスピエとしてかなり新しいタイプのサウンドですね。すごくフロアユースな部分を持った音だなと。どんな経緯で生まれたんですか?
- 成田:今回のリリースに向けてたくさん曲を作った中の1つです。今までの僕らにはなかったようなものにしたかったんですけど、クラブミュージック寄りにしたいということまでは思っていなくて。「数学的に曲を作ってみよう」と考えて、たくさんのリズムパターンを試したのが出発点でしたね。そこで「これ、面白いな」と思ったのがイントロのキーボードリフのリズムパターン。それに対して印象的なメロディをつけてみたら、僕にとってクラブっぽく聞こえたんです。
- EMTG:イントロで閃いたイメージが全体に作用したということですか?
- 成田:はい。あと、今ってバンドシーンの界隈で4つ打ちブームじゃないですか。いろんなアーティストさんは「ブームに乗っかるべきか? それとも敢えて別の路線へ行くか?」でいろいろ考えていると思うんです。クラブミュージックの方向で曲を作るとなると4つ打ちは避けて通れない。「じゃあそれをパスピエとしてどう聴かせようかな?」という風に考えました。
- EMTG:大胡田さんは、この曲のサウンドに対してどういう印象を抱きました?
- 大胡田:成田さんのキャラを考えると意外だなと(笑)。でも、音楽家としていろいろなものが出てくるのは自然なんだと思います。
- EMTG:先程「数学的」っていう表現が出てきたじゃないですか。論理的に分析しながら曲を構築することはよくあるんですか?
- 成田:そうですね。曲が似てきちゃうと、リスナーの中で比較が生まれると思っていて。同じようなものを作ると「あの曲の方が良かった」みたいなことになったりもしますし。そういう懸念があるので、毎回「パスピエって今度はこう来たか!」みたいなことをしたいんです。
- 大胡田:この曲は歌っていて楽しいです。《パパパリラ》とか歌っていますけど、擬音みたいなのを入れたのは多分初めてですよ。でも、曲がこういった雰囲気なので、あえて古典的なイメージの言葉を入れたりもしました。
- EMTG:《三半規管トリップ》って、いい言葉ですね。キャッチーです。
- 大胡田:ありがとうございます。まず、「タイムスリップ的なテーマで書きたいな」というのがありまして。わたし『バック・トゥ・ザ・フューチャー』好きなんです。それで「タイムスリップって三半規管に負担がかかりそうだな」と(笑)。そういうようなことを書きつつ、聴いてくれる人にいろいろ深読みしてもらえるものになったらいいなと思っています。歌詞はいろんな解釈ができた方が面白いと思うので。
- 成田:大胡田の歌詞は「対人(たいひと)」で歌っているというよりも、彼女の中の空想の人物だったり、彼女自身を俯瞰で見て描いているイメージなんですよね。だから曲のバリエーションがどれだけ広がっても、歌詞が押しつけがましいものにならないのかなと感じています。だからこそ僕もいろんな変化球を混ぜ込んで曲を作れるんですよね。
- EMTG:「MATATABISTEP」っていうタイトルも、インパクトが大きいですね。「マタタビ」ってあんまり日常会話の中で出てこない言葉だし(笑)。
- 大胡田:テーマが「旅」とか「トリップ」なので、それ系のタイトルにしようっていう話になって。そこで出てきたのが松尾芭蕉だったんです。「月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也」ってあるじゃないですか。
- EMTG:『奥の細道』の冒頭ですね。
- 大胡田:はい。「行かふ年も又旅人(マタタビト)也」っていうのを言っていた時に、「タイトル、マタタビいいじゃん?」ってなったんです(笑)。
- 成田:「マタタビ」ってダブルミーニング的な意味も出るし。そういう点でもいいタイトルだと思ったんですよね。
- EMTG:では 、2曲目「あの青と青と青」のお話へ移りましょう。
- 成田:ダブルリードですので1曲目と対照的なものを作りたいというのがありました。「あの青と青と青」は、大胡田のキャラクター感への挑戦というか。あまり温度を感じない大胡田の声というものを意識して作っていった部分が大きいです。彼女の歌声に対していわゆる「壮大」な世界観でそろそろチャレンジしてみていいかなと思ったんです。
- EMTG:和的なテイストもある曲ですね。パスピエの音楽ってもともと和的な風味も含んでいますけど、その背景って何なのでしょう?
- 成田:メロディにそういう要素を意識的に入れているところもありまして。日本人として生まれてきたからこそというのもあるんですけど。でも、そういう聴覚的な部分だけじゃなくて、視覚的な部分でイメージが醸し出されているところもあるのかもしれないです。パスピエの曲を聴くとリスナーは大胡田の姿なり、アートワークのイラストなりを思い浮かべると思うんです。そこから出ているイメージもあるのかもしれないですね。
- EMTG:その感じ、何となくよく分かります。大胡田さんって、柳の木の下がすごく似合いそうな感じもあるし(笑)。
- 大胡田:その感じは自分でも分かります(笑)。
- 成田:アートワークにもそういうところがあるかもしれないですね。それこそ『ONOMIMONO』も水彩チックですし。
- 大胡田:今回のジャケットも和を意識してみたんです。成田さんから日本画、浮世絵の本を借りたり日本の色について調べたりして研究しました。浮世絵の線の感じとかを採り入れてみたつもりです。
- 成田:僕、美術館とかへ行くのが好きで。先日、両国でやっている浮世絵展へ行って、そういう本を買ったりしたんです。
- 大胡田:その本を借りて、早速パスピエのアートワークに反映しました。
- EMTG:あと、この曲の歌、コブシを随所で利かせているのも独得だなと思いました。
- 大胡田:これは結構今までと歌い方が違いますね。情念というか、「念をこめる」みたいな言い方になるんですかね? 内側から湧き出るようなイメージの歌い方をしています。自分でも新鮮でした。
- EMTG:色彩の「青」が重要なモチーフになっている歌詞の世界観もすごく心惹かれます。「青」っていうのは「空」や「海」とか。母なるイメージ、普遍的な安らぎの象徴的なものを示しているなと。
- 大胡田:そうですね。歌詞の中で《マザー》って言っていますし。人間は歳を取っていくと結局青が好きになっていくというのを読んだんですけど。青って「還る場所」、そこから生まれてそこへ戻るみたいなものなんじゃないかなと。
- EMTG:たしかに空や海の青って、特に安らぎのイメージがあるかも。
- 大胡田:空も海も青なんですよね。絵を描く時は「青と青で隣り合わせかあ……」って困ったりもするんですけど(笑)。でも、それでも実際の空と海は綺麗ですから、自然の色ってすごいですよね。
- EMTG:続いてカップリングのお話へ。「万華鏡」はすごくストレートに盛り上がるサウンドだと思ったんですけど。
- 成田:これは結成して間もない頃に作った曲です。
- 大胡田:1回くらい録ったことがあった気がする。
- 成田:そうかも。デモくらいの感じだったと思うけど。なぜかずっと日の目を見なかったんです(笑)。
- EMTG:ギターソロから鍵盤ソロへと展開する部分とか、すごくカッコいいですよ。
- 成田:僕、今年からライブで2台のシンセを弾くことになったので、この曲のソロは見せ場になりそうです(笑)。
- EMTG:楽しみです(笑)。歌詞は夢や理想を追う気持ちが描かれていますね?
- 大胡田:はい。わたしがなりたかったものを全部書いたような歌詞です。
- EMTG:「先生」「小説家」「演劇」「写真家」……いろんなものになりたかったんですね。
- 大胡田:その中で、自分を表現する手段に一番あっていたのが音楽だったんだと思います。
- EMTG:「絵描き」「バンドマン」も出てきますけど、これは叶った夢じゃないですか。
- 大胡田:そうですね。絵も描かせてもらっているので(笑)。
- 成田:大胡田の人となりが分かりやすく表現された曲だとも言えると思います(笑)。
- EMTG:ある意味、履歴書ですね(笑)。そして、「Shangri-La」は電気グルーヴのカバー。
- 成田:僕、一昨年に『WIRE』に初めて行きまして。石野卓球さんのソロを聴いて「ものすごいストイックな音楽だな」と感じたんです。それで今回カバーをやるということになった時、電気グルーヴのああいうサウンドをバンドで表現するのって面白そうだなと思ったので。「Shangri-La」をやりたいと思いました。カバーって原曲に則るか全く別物を作るかの二択ですけど、今回のこれは後者ですね。
- EMTG:収録されている4曲について語って頂きましたが、内容が濃いシングルですね。初回限定盤のボーナスディスクにはさらに4曲のライブ音源も入りますし。
- 成田:初めてのライブ音源です。
- 大胡田:ライブ音源って照れくさいです。ライブってその瞬間のものですから、後から聞くとちょっと照れくさい(笑)。
- EMTG:(笑)「プラスティックガール」と「デモクラシークレット」はアコースティックバージョンですし、これはレアですよ。
- 成田:そうなんです。これも聴いてもらえたら嬉しいです。
- EMTG:今後のパスピエに関しては何か思い描いているビジョンはあります?
- 成田:僕としては「考えてもらえる音楽を作りたい」っていうのがずっとありまして。「音源聴いてライブへ行く」っていう決まった道筋みたいなものがありますけど、それ以外のことができたらいいなと。思考を働かせながらライブを観てもらうようなこともあっていいと思うんですよね。だからこそアートワークやライブで映像を流すようなこともしているんですけど。「1つだけじゃない楽しみ方」みたいなことがお客さんの中で芽生えたらいいなと思っています。でも、僕らはあくまでもバンドなので、まずは肉体的な部分で表現することに関しては変わらないつもりです。
- EMTG:去年末の赤坂ブリッツも映像とリンクしたライブの見せ方が刺激的でしたよ。
- 大胡田:ありがとうございます。またみんなが驚くようなことができたらいいですね。
新鮮なサウンドをあらゆる曲で届けてくれるパスピエ。最新作となる両A面シングル『MATATABISTEP/あの青と青と青』も強力だ。イントロでシンセサイザーが鳴り響くや否やリスナーを熱いダンスへと巻き込む「MATATABISTEP」。起伏に富んだドラマチックな展開、何処か和的な情緒を帯びたメロディが心地よい「あの青と青と青」。どちらも美しい刺激に満ち溢れている。そしてカップリング曲も素晴らしい仕上がりなので必聴! 今作の制作エピソードについて成田ハネダ(Keyboard)と大胡田なつき(Vocal)が語ってくれた。
【取材・文:田中 大】
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リリース情報
MATATABISTEP / あの青と青と青【初回生産限定盤】
2014年03月26日
ワーナーミュージック・ジャパン
[DISC 1]
1. MATATABISTEP
2. あの青と青と青
3. 万華鏡
1. Shangri-La
[DISC 2]
1. S.S (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
2. プラスティックガール (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
3. デモクラシークレット (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
4. 電波ジャック (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
1. MATATABISTEP
2. あの青と青と青
3. 万華鏡
1. Shangri-La
[DISC 2]
1. S.S (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
2. プラスティックガール (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
3. デモクラシークレット (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
4. 電波ジャック (2013.11.2 Live at LIQUIDROOM)
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●成田ハネダ(Key)
チケット 払い込み
この間、矢野顕子さんのライブチケットの申し込みをして当たったんですけど、チケット代の振り込み期間が過ぎてしまって。「なんとか間に合う手段はないものか?」と思って調べたんですけど……ダメでした。かなりヘコみました。もうやめましょう、この話は(笑)。
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ポスターのサイズのことを話していた時に、「紙のサイズのA5とかB4って何のことだろう?」と思って調べました。A判ってドイツの物理学者のオズワルドという方が提案した国際規格だそうです。B判は日本の美濃紙がもとになっているらしいです。だからB判って国内規格みたいですね。
■ライブ情報
パスピエ presents 「印象C」
2014/04/17(木)名古屋・CLUB QUATTRO
2014/04/18(金)大阪・BIG CAT
2014/04/21(月)東京・SHIBUYA-AX
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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