東京カランコロン、いちろーの本性が露わになる新作『笑うドッペルゲンガー』
東京カランコロン | 2014.07.16
- EMTG:「笑うドッペルゲンガー」と「HentekoPop is dead」。この2曲は対になっているんですね?
- いちろー:そうです。「笑うドッペルゲンガー」は、「もし僕が音楽をやっていなかったら?」っていうもう1人の自分。そして「HentekoPop is dead」の方が音楽をやっている自分です。実は順序で言うと、「HentekoPop is dead」の詞と曲の方が先にできて、その後に「笑うドッペルゲンガー」の詞が付く前の曲ができたんです。「笑うドッペルゲンガー」の方で個人的に思っていることを書くのでも良かったんですけどね。でも、楽曲自体がカッコいい雰囲気だったので、むしろ自分の本音みたいな部分を少し客観的に見たものにしようかなと。ちょっと笑えるぐらいのものの方が曲としてバランスがいいのかなと思ったんです。それプラス、「HentekoPop is dead」で自分の個人的なことを書けちゃったので、それをもう1回やる必要もないなと。
- EMTG:では、まず「笑うドッペルゲンガー」のお話からいきましょうか。これ、感情移入して聴く人も多いんじゃないですかね。「もし自分が今へと至るための選択をしていなかったら?」って、みんな結構考えたことがあると思いますから。せんせいは、「音楽をやっていなかったら?」って想像したりします?
- せんせい:わたしの周りの友だちも結婚して子供ができたりしているんです。そういうのを見ると「わたしも子供がおっても全然おかしくない年齢やな」とかは考えたりします。でも「もし音楽をやっていなかったら?」っていうのは想像もできないんですよ。「絶対音楽じゃないとダメ!」っていうほどではないんですけど、だからといって音楽をやっていなかったとしても、「歌いたい!」ってなっていたやろうし、「絵を描きたい」って言ってたやろうし。不器用だからそれ以外できない気がするんです。なんやかんや言いつつ今みたいなことをしてたやろうなと。今、グッズを作っていますけど、そういうこととかは結局やるようになっていると思います。「OLさんになってたら?」って想像しても「絶対になられへんな」ってなりますし(笑)。
- おいたん:僕は東京カランコロンを組んだ頃はまだ会社員だったんです。だから「そのまま続けてたらどうだったろうな?」っていうのは思います。でも……ダメでしょうね。実は最近、毎晩悪夢を見るようになっちゃって。会社で「お前全然使えない!」って、年下の新入社員にアゴで使われたり。バンドをやめてバイトを探そうとしても、「音楽もダメだったのに普通の仕事もできないんですね?」って言われる夢も見ました(笑)。そういうのが強迫観念で音楽をやっている部分もあるんだと思います。「あの時代に戻りたくないから頑張らなきゃ!」っていう想いがありますから。
- EMTG:おいたんさんは、「笑うドッペルゲンガー」の彼みたいな気持ちだったんですか?
- おいたん:僕は会社員をやりながら休みの日は音楽をやっていたから、まだ良かったです。でも、「会社やめます」って言った時、「そういうのは25歳までにしてね。はいはい?」みたいなことを言われて、「このやろー!」と(笑)。親に泣かれたのも辛かったですよ。「わたしの育て方が悪かった!」って(笑)。
- EMTG:(笑)「笑うドッペルゲンガー」は、サウンドもすごくカッコいいですよ。
- いちろー:これはプロデュースをしていただいたAxSxE(NATSUMEN)さんの力が大きいです。前作の「恋のマシンガン」とは逆に振り切りました。「恋のマシンガン」は1つ1つの音がその場所にしっかりあって、輪郭がハッキリしているサウンド。でも、「笑うドッペルゲンガー」は、いい意味で全部の輪郭が混ざり合って、どれがどれか分からなくなっている感じですね。
- せんせい:AxSxEさんにお願いしたかった理由が、全部答えとして出ている曲やと思います。あと、今回は1枚を通して「なるべくわたしは出ないようにしよう」っていうのがあって。でも、だからこそ自分が出ることによって出る空気感、つけられる変化は、すごく考えました。わたしがいなければ、「笑うドッペルゲンガー」は、全面的にカッコいいものになったと思います。でも、わたしの歌やフレーズが入ることによって、空間が歪むような妙な感じとか、コミカルな感じが出たんじゃないですかね。「ん!?」っていうミスマッチの心地よさで色をつけたかったんです。
- EMTG:では、 2曲目「HentekoPop is dead」のお話へ移りましょう。これ、今までに言われたこと、想ったことを全開で吐き出しているんじゃないですか?
- いちろー:そうですね。
- EMTG:《内輪ノリのバンドだからね》とか、いかにも言われてそう。
- いちろー:よく言われますね(笑)。でも、「お前ら分かってねえんだよ!」って歌うと、分かってくれている人は、「えっ? 分かってるし」ってなると思うんです。だから「そう言われてることも分かってるよ」っていう部分も出しています。実はこの曲、最初は「音楽的な自殺をする」っていうのがテーマだったんです。仮タイトルが「カランコロンのスーサイドソング」(笑)。でも、それを押し出し過ぎると自虐的すぎる曲になってしまうなと。だから、「それでも自分たちはこういう風に音楽をやっていく」っていう要素も入れました。
- EMTG:おいたんさんは、この曲はどのように感じていますか?
- おいたん:お客さんが抱くイメージって、勿論膨らんでいくものですよね。例えば「いちろーは穏やかないい兄さん」って思われがち。僕はそうは思っていないのに(笑)。そういう点で言うと「HentekoPop is dead」は、すごくいちろーらしい曲なんですよ。痛快で好きです。
- せんせい:わたしも「やっといちろーさんの本性が出た!」って思いました。歌にもそういう部分が出ていますね。実はいちろーさんの喉がひどい状態の時に録ったんですけど(笑)。でも、その分、いい感情が乗っていると思います。わたしといちろーさんは正反対の人間やから、わたしには絶対に書かれへんし、歌われへんものになっていますね。東京カランコロンをツインボーカルでやっている意味や、楽しさも改めて感じました。
- EMTG:いちろーさんらしいというのは、外部の人間である僕も何となく感じますよ。すごくダイレクトに想いを描いていますし、本音なんだろうなと。
- いちろー:楽曲がニルヴァーナっぽいなというのが、僕の中にあったんです。そこからこうなっていったんですよね。でも、これもいろいろダイレクトなことを描きつつ、「笑うドッペルゲンガー」ほどではないけど、ちょっと笑える感じになって良かったと思います。
- EMTG:程良くユーモアを香らせるのって得意じゃないですか?
- いちろー:いや、そうでもないんですよ。「HentekoPop is dead」も最初はもっとエグい感じでしたから。かなり苦労しながら直したんです(笑)。東京カランコロンってメンバーやスタッフとかの客観的な意見を経て、面白いエッセンスが加わりながらバランスをとれるようになっているんだと思います。
- EMTG:原形バージョンの歌詞も気になるところですが。
- せんせい:最初の歌詞は「傷つける人が多いからやめてください」ってことになっていました(笑)。
- EMTG:(笑)サウンドでも面白いことやっていますよね。《「インディーズの頃は好きだった」なんて言われます》の部分で、インディーズ時代の「マリメッコとにらめっこ」のギターフレーズを引用していたり。
- おいたん:はい(笑)。
- いちろー:良かったです。気づいてくれて。
- EMTG:サウンドの熱量の高さも聴きどころですね。
- いちろー:最近はクリックを使って録ることが多かったんですけど、これは使っていないんです。ヘンテコポップ全開で行きたかったので。だからテンポもいろいろ変わっています。基本的なギターとベースとドラムは、スタジオの同じ部屋で録りました。でも、その3つの楽器でサウンドを作り過ぎちゃうと、本当にニルヴァーナみたいなロックになっちゃう。だから随所でキーボードの間抜けな感じの音が出てくるようにして、カランコロンらしい感じにしています。
- EMTG:《ややこしい事したがるんです》っていうフレーズ通りの曲?
- せんせい:そうなんです(笑)。
- いちろー:まさにややこしいことばっかりしている曲です(笑)。
- EMTG:(笑)そんな2曲を経て、レディオヘッドの超名曲「Fake Plastic Trees」のカバーですね。これはどういう経緯で?
- いちろー:1曲目と2曲目は、洋楽が自分たちのルーツになっている面が結構濃く出ていると思ったんです。だからよりそういう部分を提示するために洋楽のカバーをすることにしました。今ってルーツが見えない音楽が出回っているような気もするんですよ。だからルーツは提示したいなと。あと、レディオヘッドとか知らない人にも、純粋にいい曲だなと感じてもらえたらいいなとも思っています。
- EMTG:充実した1枚になりましたね。去年出した『5人のエンターテイナー』以降、ますます創作意欲が迸っている気がするんですけど、どうですか? 新しい面もさらにどんどん切り拓いていますし。
- いちろー:新しいことをやりつつ、ちゃんと自分たちらしいことをするっていうのがテーマですからね。でも、言葉にするのは簡単ですけど、それって実際にやるのは難しいです。アルバムを聴いたことがある人は、東京カランコロンの幅を知ってくれていますけど、シングルのリード曲ではまだそういう部分を出し切れていなかったと感じていまして。今年はそういう部分をちゃんと出せたらいいなと思ってやっています。
- EMTG:いい曲、さらにいっぱいできています?
- いちろー:できていますよ。まだ出していない爆弾もいろいろあるので、「どういう形で届けるか?」っていうことに関して、今、慎重に選んでいる感じですかね。
- EMTG:爆弾ですか(笑)。爆弾といえばおいたんさんですけど(前作『恋のマシンガン』に「及川爆弾」という曲が収録されている)。
- おいたん:その爆弾はもうないです(笑)。
- せんせい:もう燃え尽きました(笑)。
- いちろー:爆発済みです(笑)。
- EMTG:(笑)そろそろ取材を終わりますが、最後に何かありますか?
- いちろー:あっ、ライブDVD(『ワンマ んツアー2014 ファイナルZepp DiverCity』)も同時に出るので、そちらもぜひ。自分で観てもテンションが上がりました。でも、「こんなだらだらしてるんだ?」って思いましたけど(笑)。
- EMTG:あの独特な空気感がこのDVDにも入っている?
- せんせい:はい(笑)。普通だったら編集されちゃうだらだらしたポイントも編集されていないですから。
最新シングル『笑うドッペルゲンガー』は、いちろー(Vo・G)がメインボーカル。この作品の構造はかなりユニークだ。まず「笑うドッペルゲンガー」は「もしいちろーが音楽をやっていなかったら?」という視点による曲。そして2曲目「HentekoPop is dead」は、東京カランコロンとして活動しながら感じていることが赤裸々に歌い上げられている。つまり、「笑うドッペルゲンガー」=パラレルワールド/「HentekoPop is dead」=リアルワールド……並立する2つの世界を浮き彫りにしているのが本作なのだ。どのような経緯でこれらの曲が生まれたのか? いちろー、せんせい(Vo・Key)、おいたん(G・Cho)に語ってもらった。
【取材・文:田中大】
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