音楽コンシェルジュ、ふくりゅうが月に一度だけママをつとめる都内某隠れ家スナック。2020年要注目のアーティストを迎えてお届けする、ゆるふわ酒呑みトーク。第3回目は、Netflixで全世界公開されたフル3DCGアニメーション『攻殻機動隊 SAC_2045』エンディングテーマ「sustain++;」など、初夏へ向けて話題作のリリースが続くMiliに注目です。
※4月は臨時休業しました

ふくりゅう
いらっしゃい! Miliのおふたりさん。というか、こんなご時世なので当スナック・トーク企画もZoom飲み会=オンライン・スナックとなりました。ちなみに、ふたりは今年の2月に長野に活動の拠点を移されたそうですね。

Yamato
そうなんです。長野はクリエイターにとって物作りに集中しやすい環境なのでオススメですよ。最近、事務所を辞めたり、いろいろ節目もあったので。それこそ、自然に囲まれた環境で音楽を作りたかったんです。

Cassie
毎日、空気が綺麗ですね。天気が曇っていても、外を散歩したら気持ち良さを感じられて。余裕がありますね。

Yamato
うん、他人を気にしなくていいというか。都心にいるのとは色々気にかけることが違いますね。散歩していて小川を見つけたりね。

ふくりゅう
へ~、それは素敵だなぁ。RPGのゲームみたいだね。

Cassie
ははは(笑)。

Yamato
平和ですね。人もみんないいし。

Cassie
広さもあっていいですよ。

ふくりゅう
いいなぁ。それじゃ、とりあえずひさびさに会えたのが嬉しいので乾杯!

Yamato&Cassie
乾杯!!!

ふくりゅう
ちなみにYamatoさんはどんなお酒が好きなんだっけ?

Yamato
ぼくは、ジャックダニエルのジンジャーエール割りが好きで。あと、チンザノとか。

ふくりゅう
けっこう呑むイメージがあります。

Yamato
最近は二日酔いが怖くてだいぶ控えめになりました(笑)。東京にいたころはBARとか行ってましたけどね。つまみは家だったら柿ピーです。なんか、亀田の柿ピー、ピーナッツとの比率が変わるじゃないですか? いまのバランスのままが好きなんですけどね(笑)。

Cassie
わたしは果実酒です。お酒呑んで“つまむ”って日本の習慣だと思いますね。今日はスナック風なのでカルパスを持ってきました(笑)。スナック、行ったことないね。Kasai(Yamato)さんにBARには連れてってもらったことがあります。

ふくりゅう
以前、Miliの地元、愛知県岡崎で行われたホールライブを観に行ったことがあって、その打ち上げでメンバーみんなめっちゃ呑んでたイメージがあるんですよね。3年前ぐらいかな?

Yamato
ああ、あの時は呑んでましたね。何を話してましたっけ?

Cassie
ははは(笑)。

ふくりゅう
攻め攻めな感じで(笑)。ネット時代のアーティスト論というか、熱く、そして楽しくお話しされてました。

Yamato
ああ、そうですね。

ふくりゅう
まさに、今につながる話だったんですよ。Netflixで放送されるドラマや映画を通じてアーティストが海外展開していくことなど。

Cassie
話したね。あと、Spotifyなどストリーミング・サービスの話など。

ふくりゅう
多言語での作品創作や、ネットを通じて海外での活動が当たり前のMiliにとって、NetflixやYouTube、Spotifyなど、動画やストリーミングサービスは接点近いですもんね。

Yamato
ふだんから、そんな話ばかりしてますね。新しいプラットホームが生まれてきたら必ずチェックしますし、当時からNetflixのオリジナルコンテンツに注目していたんですよ。

ふくりゅう
なるほどね。

Yamato
Netflixを活用することでUSの大半のエンタテインメントの市場へアプローチできるので。それこそ、オリジナルコンテンツだったら、なおさら注目度も違いますから。

Cassie
うん。もっと前から、それに近いことはずっと話してましたね。

Yamato
ポイントはNetflixオリジナルで、それこそ映画やドラマはネット発から地上波に出ていくという逆転現象が起こっていきますよね。特にNetflixは予算の組み方が全然違いますから。

ふくりゅう
市場は、国内を越えて世界ですもんね。

Cassie
そんな中でどんなアーティストが主題歌をやるかってことなんです。

ふくりゅう
もともとMiliは、バンドがボーカリストを探していた時にカナダ在住だったCassieさんをネットで見つけてオファーされた経緯があります。

Yamato
そうですね。

ふくりゅう
その後、実際に対面でリアルに会うことなくレコーディングもネット上でのやり取りという、まさにリモート時代の先駆けな。

Cassie
ネットを通じての遠隔作業からはじまりました。

Yamato
いまもまさに遠隔でのレコーディングですよ。ノウハウはどのバンドよりもあるかも。ちなみに、ディレクションは最低限に“任せる!”っていうそれがMiliですね。

ふくりゅう
ああ、なるほどね。

Yamato
基本、曲を渡したら任せるんですよ。

ふくりゅう
それはMiliの場合、世界観がはっきりとしているからこそかもしれないね。見えているビジョンが確立されてそう。

Yamato
ああ、そうかも。気持ちを汲んでくれって感じなんです。伝わってなかったらボツみたいな(笑)。

Cassie
ははは(笑)。意外とやりたいことが明確なワケではないんです。毎回、作っていたらそうなっていくみたいな。

ふくりゅう

Yamato
はい。

ふくりゅう
Miliは、キラキラな曲もあればドロドロな曲もあって両極端で振り切れてますもんね。

Cassie
ははは(笑)。

Yamato
そうですね(笑)。

ふくりゅう
で、本題に入りたいんだけど、4月23日からNetflixで世界同時スタートした3Dアニメーション『
攻殻機動隊 SAC_2045』のエンディングテーマにMili「sustain++;」が決定しました。

Yamato
僕らも正直、驚きましたよ。

Cassie
話はいただきつつも、他に候補もあるだろうし選ばれないだろうなって思ってました(笑)。

ふくりゅう
どんな経緯から決まったんですか?

Yamato
レコード会社がフライングドッグさんで、そこからですね。でも僕らも所属しているワケではないので驚きました。

Cassie
うん、フライングドッグのプロデューサーがMiliを提案してくれて、監督お二人も気に入ってくれたみたいで。

ふくりゅう
攻殻機動隊シリーズは、日本を代表するポップカルチャーですよね。ハリウッドでも人気となった。

Yamato
押井さんの映画版の映像から入りました。ぼくも大好きで、今回の監督でもある神山健治監督のテレビシリーズ『攻殻機動隊 S.A.C.』も観てました。日本を代表するアニメーションであり、歴代の音楽を提供されているアーティストもすごい方ばかりだったのでプレッシャーもありました。

Cassie
プレッシャーありましたね。名作ですし、攻殻機動隊って楽曲の評価も高い作品なので。競争の心もあるんだけど、どうすればこのすでに素晴らしい作品のプラスになれるのか、何がMiliでしかやれないことなのかを考えましたね。

ふくりゅう
しかも、歌詞がMiliならではのアプローチで、なんとプログラミング言語で書かれていて。

Cassie
そうなんです。JAVAのコードで表現していて。これは私しかできないことだし、Miliの色だから。

ふくりゅう
テーマも、サスティナブルという作品にも通じる“持続可能性”をタイトルでも表現されていて。

Cassie
まず、シナリオというかあらすじを送ってもらったんです。そこに“サスティナブル・ウォー”というワードがあって。持続可能な戦争という。“サスティナブル”は、環境問題において海外でもバズワードなんですね。音楽的にも“サスティン”って言葉はあって。音を長く伸ばすみたいな。それと、人間関係の“サスティナビリティ”にも繋がるなって。

ふくりゅう
歌詞がプログラミング言語ってのも、攻殻機動隊だとズバリ、ハマりますよね。

Yamato
そうなんですよ。電脳世界ですからね。

Cassie
ありがとうございます。ど頭から決めてました。Miliらしさを活かすチャンスだねって。

ふくりゅう
そうだね。あと、楽曲の途中、Bメロでエフェクティブにバグりながらテンポアップする躍動感が鳥肌モノで。6分というMiliにとって長めな曲というのも特別感があって。

Cassie
平均3分ぐらいですからねぇ。

Yamato
基本は3分でやりたいことはやれるんですよ。

Cassie
もっと聴きたいならループして聴いてよって(笑)。

Yamato
そうなんです(笑)。でも、今回は6分間が必然的で。テクノの部分を聴いてもらって、最後に轟音にまみれる遊びを聴いてもらうためのゴールへ向かって構成していて。展開自体、USポップの流行りというとわかりやすいんですけど、そこにヒトクセやフタクセあるような。

ふくりゅう
アニメだとワンコーラスなエンディングだけど、フルで聴くべきだよね。

Yamato
3世代前ぐらいのテクノサウンドが鳴るのを狙っていて。レトロなものとモダンなものを織り交ぜたいなって。

Cassie
ひとつの曲の中で混ぜるっていうね。

ふくりゅう
今回、本作含め6月にリリースされるシングルはコンセプトシングルといった感じだそうですね。

Yamato
はい、他にも攻殻機動隊をイメージした曲をさらに2曲収録します。ミニマムな感じというかテクノサウンドなイメージなのと、ピアノとボーカルで。

Cassie
全部で3曲ですね。インストも入って計6曲。今回、曲の内容的には「sustain++;」は“あなたとわたし”みたいな、狭い人間関係で。他は、もうちょっと世界が広がるしっとりしている曲があったり、“自分対世界”っていうより大きなテーマで描いていたり。

ふくりゅう
そっか、3部作ということなんですね。楽しみです。しかも、今後、4月5日から放送がスタートしたTVアニメ『グレイプニル』エンディングテーマ「雨と体液と匂い」、そして大ヒットアニメ『ゴブリンスレイヤー』の劇場版新作となる『
ゴブリンスレイヤー -GOBLIN’S CROWN-』テーマソング「Static」を収録したダブルタイアップ・シングルと、6月へ向けて新作リリースが続きますね。

Yamato
『
グレイプニル』は、原作のファンでずっと読んでいたんですよ。簡単にいえばエロいんです(笑)。でも、そのエロの要素のバランスがよくって。主人公が着ぐるみになって、その中に女の人が裸で入り込むんです。その着ぐるみは体液まみれで。設定がすごいですよね。生々しいというか、艶やかというか。

Cassie
そうだねぇ。

Yamato
そんな部分をタイトルや歌詞、曲で表現してみました。どこかしらサスペンスらしさを表現してみたくて。そこを文学的にというか、ある種スルメ曲ですね。しっとり進んでいく感じが『グレイプニル』らしいかな。

ふくりゅう
ああ、なるほどねぇ。それはあらためて聴き直したくなりました。

Yamato
『ゴブリンスレイヤー-GOBLIN’S CROWN-』テーマソング「Static」は、先にピアノとストリングスでオケを作って。映画を観終わった時の余韻を大事に考えましたね。

ふくりゅう
静かにはじまって、壮大に終わるという。

Cassie
うん。メロディと歌詞に関してはダークファンタジーな世界観。グロさもあるんですけど、希望を感じる作品だと思って。そんな希望感を表現したいなと思って歌詞に込めました。

ふくりゅう
そうだねぇ。(時計を見ながら)……わぁ、Miliは聴きたいことがありすぎてあっという間にスナック閉店時間になっちゃった。

Yamato&Cassie
ははは(笑)。

ふくりゅう
では最後に、スナック企画なので、スナックのママへ何か悩み相談などありましたらどうぞ。

Yamato
悩みかぁ。

Cassie
なんかシリアスな話しかないねぇ(笑)。

Yamato
それこそ記事にできなそうかな(笑)。

Cassie
最近よく思っているのは、うちらMiliは海外のファンが多いから、自分たちの力で生きていけると思うんですけど、通常の日本のアーティストは音楽でちゃんとしながら生きていくのは大変ですよね? どうやって食べていけるか。自分の次の世代の人たちね。そんな人たちのために何ができるかを、責任を感じていますね。

Yamato
どうやって道を拓いていくかだね。現状の日本ならではのポップカルチャーが悪いとは思っていないんです。でも、ポップカルチャーがやっているビジネスの形は誰にも当てはまるものではないんですよね。表現者ごとに異なるべきというか、不健全さを感じていて。

ふくりゅう
そうだね、言っていることはよくわかります。ようやく最近だもんね、Spotifyなどストリーミングサービスも。昭和?平成のポップカルチャーとは違うアプローチで世界を見据えることができてきたっていう。今の時代ならではの闘い方がようやくやれるようになってきたと。そこに関しては、Miliは他のアーティストが観れていない景色を先んじて体験されているもんね。Miliがどんな想いで活動しているかというストーリーはちゃんと伝えていきたいよね。

Yamato
ようやく、“いま”スタートできるようになってきました。たとえば、業界慣習の問題などでメインストリームへ向かおうとすると幅が狭まるんですよ。でも、インターネットを活用することで、アーティストの広げ方は確実に広がるわけで。音楽業界全体で変わっていかないといけないなって思いますね。日本の音楽が世界で通じなくなってしまうので。懸念を強く持っています。

Cassie
音楽業界のビジネスモデルが、誤解を恐れずにいえば、アーティストを搾取するモデルから変わっていかないとですね。

ふくりゅう
そうだねぇ。しかも“アフターコロナ以降”のビジネスモデルは大きく変わらざる得ないと思うので注目したいです。音楽や芸術は“Withコロナの時代”には、さらに必要となる存在だと思うのでMiliがどんな表現を続けてくれるかに期待したいです。

Yamato
バンドやアーティストだけじゃなく、事務所もレーコード会社も大変なことになってきてますもんね。昨今、音楽業界はライブで稼いできたと思うんだけど、音楽ってそもそもそれだけじゃないと思うんですよ。あらためて考えないといけないですよね。

Cassie
それこそ“持続可能性”という言葉が世界で話題になってますけど、音楽業界もこの言葉ときちんと向き合っていかないといけないですよね。最近、悩むのはこれぐらいかなぁ。

ふくりゅう
たしかにね。ありがとうございます! うん、悩みの答えなんて僕は何も言えないですね(笑)。では、また呑みましょう~。