音楽コンシェルジュ、ふくりゅうが月に一度だけママをつとめる都内某隠れ家スナック。2020年要注目のアーティストを迎えてお届けする、ゆるふわ酒呑みトーク。第6回目は、孤高のアーティスト、はるまきごはんに注目です。ボカロPにして、曲作り、歌唱、イラスト、アニメーション制作まて、すべてをひとりで手かける次世代シンガーソングライター。“再会”からはじまった“二人”の主人公をテーマとした物語。よりエモーショナルさが高まった約2年振りのアルバム『ふたりの』についてお話ししてきました。CDパッケージで手に取るべき大傑作ですよ!!!
ふくりゅう
いらっしゃい~。あら、はるまきさんじゃないですか!
はるまきごはん
こんにちは、スナック初めてなんですよ。お酒も呑めないんですけど。大丈夫ですか?
ふくりゅう
大丈夫っす。ソフトドリンクもあるので。というか、最近はるまき曲ばかり聴いてるよ。最新アルバム『ふたりの』が素晴らしすぎて。なんどもなんども曲を聴きたくなるし、物語も読み返したくなるし、聴くたび読むたびに発見があって。そんなこともあり、はるまきさんってファンタジーの世界の住人的なイメージがあったんだよね。
はるまきごはん
そうですか(笑)。ファンタジーがスナックにきちゃったみたいな……。
ふくりゅう
ははは(笑)。
はるまきごはん
もともとお酒は缶の「ほろよい」三分の一ぐらいで気持ち悪くなっちゃうんですよ。全然喋れなくなるし。身体に合わないんですよね。あ、ちゃんと作ったカシオレ(カシスオレンジ)は呑めます。薄めますけど(笑)。でも、基本的には呑まないですね。
ふくりゅう
なるほど。お酒のつまみ的なものは?
はるまきごはん
う~ん、お菓子は食べますけどね。グミとか。でも最近知覚過敏で死ぬほど痛くなるようになってグミ封じられました。
ふくりゅう
ははは(笑)。どんなグミ?
はるまきごはん
ハリボーが好きだったんですよ。たぶん、ハリボーが原因で歯のエナメル質をすべて持っていかれました。
ふくりゅう
ははは(笑)。はるまきさん、おもしろいなぁ。
はるまきごはん
よかったです。
ふくりゅう
それはそうと最新アルバム『ふたりの』は、はるまきさんの歌唱が素晴らしいですよね。喋り声も素敵なんですが、歌声がとってもいいんですよ。大傑作アルバムが完成しましたよね。なかでも「ナナ」という曲での、歌声の表現力がとっても胸に刺さりました。アルバムのアナザーサイドであるボカロ版では「リリ」と対となるという凄さ。これは、はるまきさんでなければ表現なし得ないすごいアイデアだと思いました。
はるまきごはん
今回、タイトルでもありコンセプトにもなっているのですが、キャラクターを2人たてているんです。アルバムを通して表現するには2枚組にして、それぞれのキャラクターを描くというのをやりたかったんです。
ふくりゅう
御自分での歌唱盤とボーカロイド盤であり、両者異なり補う面もあるという。
はるまきごはん
もともと「ふたり」というテーマで物語を作ると決めて、「再会」から二人のキャラクターそれぞれの視点で描いたMVを投稿していたりしていたので、アルバムも「ふたり」というテーマを活かせるものにしました。
ふくりゅう
いや、ほんと天才的な発想だと思います。しかも、CDアルバム『ふたりの』のパッケージでは透明ケースが2つに別れるギミックになっていて。背景のイラストカードと連動するという凄みに驚かされました。
はるまきごはん
なんなら、アルバム制作の半分以上が音源でない部分でした(笑)。
ふくりゅう
いやあ、物作りは時間かかりますよね。というか、ほんと発想がすごくって。音だけだと、物語の本質の伝わり方が変わってきますから。ぜひ、ストリーミングサービスでしか聴いていない人はCDパッケージを手に取って欲しいですね。
はるまきごはん
実現するためにも、CDを作る会社さんと何度も話しました。データを作るとき、透明スリーブと下のイラストが連動するにはズレがあってはダメだったので、神経使いました。
ふくりゅう
はるまきさんの表現は、音楽や映像だけでなくイラストや物語、世界観、解説、そして手に取れるパッケージにもこだわりが込められているということですね。
はるまきごはん
僕は、ボカロPとして音楽を始めて、で、今は自分の声も使ってどちらもやってはいるんですけど、ミュージシャンのオマケでイラストや動画をやっているわけではないんです。表現したい世界があって、それを伝えるために自分のできることを全部やっているだけなんで。それは作品をよく見れば見るほど、伝わるのかなと思います。
ふくりゅう
お~、それこそはるまきごはんの本質なのですね。
はるまきごはん
おまけで絵も動画もやってるって思われるのが一番悔しいので、すべてをそう思われないくらいの完成度になれるのが目標です。音楽から知ってもらった人にも、いつか音楽以外の部分も好きになって貰えれば嬉しいです。
ふくりゅう
うんうん、まさにそうですね。
はるまきごはん
なので、音楽以外の部分も詰まっているCDを手にとって欲しいです(笑)。
ふくりゅう
たしかに、ほんとそう思います。圧倒的クリエイティビティ。どんなきっかけからアルバムの構想が生まれたのですか?
はるまきごはん
もともと、前作の『ネオドリームトラベラー』が、夢という漠然としたテーマの中に複数のお話が混在する作品だったんです。それを作ったときにもっとしっかりしたキャラクターや物語の軸があって、その一部分ずつを楽曲で構成していく作品を作ってみたくなりました。とはいえ、コンセプトで縛りすぎると楽曲ごとの多様性がなくなってしまうので、モチーフを限定しないコンセプトにしました。そこで、“主人公が2人いて、2人の関係性を描く作品”にしてみたくなったんです。
ふくりゅう
それは面白そうなギミックが生まれそうな考え方ですね。さすがだ。
はるまきごはん
柔軟な懐を持ったテーマでした。統一性がありながらもいろんな曲があっても問題ないので。
ふくりゅう
めっちゃ考えたんですねえ。ちなみに、アルバムを通じて一番伝えたかったメッセージなんてあったのですか?
はるまきごはん
伝えたいことを言語化しようという動きは、アルバムを作りながらあったんです。企画概要書を作ってCD制作に携わるスタッフさんたちに共有したかったので。でも最終的には、そこは言語化しないからこそ作品になるのかなと言う結論になりました。
ふくりゅう
なるほどね。リスナー、ユーザーそれぞれが受け止めた感動は、人それぞれとなるのかもね。だからこそ、なんどもリピートしたくなるという。
はるまきごはん
僕の作品作りはずっとそうかもしれないですね。これがしっくりくる作り方なのかもしれません。
ふくりゅう
あと、今回もブックレットではるまきさんがアルバムのレコーディングで使用した機材を書き残されて説明されていることに感動するんですよ。はるまきさんに憧れるミュージシャンやリスナーにとってこんなに嬉しいことはないですよ。
はるまきごはん
アルバムにそういうことを書いているアーティストってあまりいないと思うんですけど、バンドスコアとか、それだけのためにギター弾かない人が買うのは重いんじゃないかなって。逆に、アルバムだったら自然な流れで知ってくれたら嬉しいですし。使っているプラグインなどは目まぐるしく変わっていくので、わりと1年もすれば違うものを使っているので、今はこれを使ってるんだぞっていう歴史の記録として自分のためにもいい資料になるんじゃないかなって。今回も書いた瞬間に、違うプラグインを使うようになったりしました(笑)。
ふくりゅう
ははは(笑)。よくアルバムのブックレットにミュージシャンのクレジットが載っている事はありますが、プラグインや機材を知れるってファンにとって大事なポイントですよ。
はるまきごはん
あー、確かにそうですよね。僕の場合、自分が弾いているのはギターかベースで。ベースも自分で弾いていたり打ち込みだったり二択なので。生にこだわりはないんですよね。僕は音源至上主義なところがあるので、生だから必ず良いとかではなく、完成した音源が良くなるものを選びたいです。そういう意味では、プラグイン音源も楽器と同じように大切なものだと思います。
ふくりゅう
そういう事なんですよ。いい試みですよね。そういえば、ウォルピスカーターさんに提供した「1%」のセルフカバーも素晴らしくて。どんなきっかけで生まれた曲なんですか?
はるまきごはん
これはウォルピスから依頼されて書いて。ウォルピスって高音系ボーカリストじゃないですか。でも、「1%」はけっこう低いんですよ。お互い自分の新しい側面を見つけることのできたクリエイティブだと思ってます。
ふくりゅう
はるまきさんの世界観が広がる曲だと思いました。めっちゃいい曲なんですよ。アルバムではほんと「約束」、「秘密」、「彗星になれたら」、「再会」、「誕生」などなど名曲ばかりで。あらためてアルバムを客観的に聴いてみたら発見などありましたか?
はるまきごはん
リリース後は、作っていたときと印象変わりましたね。このアルバムの中では「夜魔」の歌詞が気に入ってますね。
ふくりゅう
ああ、いっすね! トラック感もアルバムにおいては、不思議なアレンジになってますよね。
はるまきごはん
そうですね。暗い歌詞と明るいサウンドで表現したくて。そのギャップを出すことを目標にしました、
ふくりゅう
そうなんだね。
はるまきごはん
暗い歌詞なんですけど、明るいトラックに載ってまた印象が変わって、より好きになれました。
ふくりゅう
リスナーならではの感想や解釈を、SNSや動画のコメントで見られるのはお好きですか?
はるまきごはん
自分が作ったものを、聴いてくれた方がどう感じるのかはとても気になっていて。それこそ、僕はずっと漫画家になりたかったんですよ。小1か小2の頃は、自由帳に描いた漫画をラミネートして教室で貸し出すとかやってましたから。
ふくりゅう
おおお、それはすごい原体験があるのですね。
はるまきごはん
教室でみんな、僕の漫画を読んでくれたんです。
ふくりゅう
へ~。
はるまきごはん
面白かったかどうかはわからないんですけど、学校って漫画を持ち込んではいけないじゃないですか? 僕の漫画は脱法的な存在だったんですよ(笑)。
ふくりゅう
需要と供給がぴったりってことですよね。その体験ってけっこう、はるまきさんにとって大きそうですよね?
はるまきごはん
大きいですね。人に読んでもらいたい、みたいな。自分が作ったものを人が読んでくれるっていう体験なので、原点ですよね。
ふくりゅう
そして、11月15日にはライブも行われるという。
はるまきごはん
今、いろいろ考えています。ライブは、CDにアートブックが付いていたと思うんですけど、あれが動き出すようなイメージですね。コロナ禍でネガティブな感じだと皆さん思うんですけど、今回は配信もやりますし、これまで観られなかった方々に届くというのは嬉しいですね。前向きです。
ふくりゅう
それは楽しみですよね。では、スナック企画なので、最後に何か悩み相談などありましたらどうぞ。
はるまきごはん
僕すぐ、気を抜くと酸欠になってしまうのでライブで気をつけたいです。カラオケだとフル尺歌えなかったりするんですよ(苦笑)。でも、これまでワンマンを2回やれてるのは謎ですね。
ふくりゅう
やってますよね!
はるまきごはん
ライブだと大丈夫だったりするんですよ。だから大丈夫かな(笑)
ふくりゅう
ライブというスペシャルな場だと乗り越えられるんでしょうね。
はるまきごはん
そうですよね、酸欠になっている場合じゃないっていうか(笑)。すごい細かいところだと、モニター環境がしっかりしていると、少ない声量でもちゃんと届くんですよ。
ふくりゅう
今、そういう音響の進化って大きいですよね。
はるまきごはん
この前、はじめてイヤモニをライブで使ったんですけど、本当にレコーディングしているような感じでしたから。
ふくりゅう
ああ、なるほどね。
はるまきごはん
ライブは課題ですけど、しっかりやっていきたいですね。楽しみにしていてください。
ふくりゅう
他に、なんか普通に悩みとかないんすか?
はるまきごはん
ええ、なんだろう?
ふくりゅう
ふふふ(笑)。
はるまきごはん
僕は、人に悩みを相談したりしないんですよ。
ふくりゅう
そうなんだ! はるまきさんらしさだね。
はるまきごはん
なんだろうな。あ、家事がめんどくさくって(苦笑)。飯とかもいかに効率よく食べるかを考えちゃいますね。ウーバーイーツ頼んじゃうし。家事のアンドロイドとか欲しいです。なんて、相談のはずなのに自分で結論出しちゃうのよくないですよね(苦笑)。
ふくりゅう
ははは(笑)。
はるまきごはん
自己解決しちゃうんですよ。
ふくりゅう
あれだ、ナナの部屋をお掃除するロボット、マカロンが進化すればいいんじゃない(※アルバム『ふたりの』参考)?
はるまきごはん
あ、いいですね(笑)。
ふくりゅう
解決した。自己解決だけど(笑)。
はるまきごはん
まずは、アルバム『ふたりの』を楽しんでもらって、今後またいい音源を作っていくのでよろしくお願いします。
ふくりゅう
そういえばあと、最後に聞かれなかったけど話したかったことはあります?
はるまきごはん
ああ、そういえば洋楽はこれまでダイ・アントワードばっかり聞いていたんですけど。
ふくりゅう
ダイ・アントワードとはかなりぶっ飛んでますね。最高じゃないですか!
はるまきごはん
最近はラッパーのウィズ・カリファが好きです。
ふくりゅう
いっすね!
はるまきごはん
あと、トラヴィス・スコットやポップ・スモークとか。
ふくりゅう
え、ラップミュージック界隈もけっこういろいろ聴くんだね。はるまきさんからはギターポップ感を感じていたから、それは意外で面白いですね。なんだろ、トラックの世界観が好きなんですか?
はるまきごはん
そうですね。あ、ラップや歌も含めてアンサンブルが好きで。情緒的な曲が好きで切なさとかまとっているのがツボなんですけど、ウィズ・カリファの持つカリスマに垣間見える切なさが好きですね。全然、今作には関係ないんですけどね。
ふくりゅう
ははは(笑)。でも、今後の作品性にさらなる拡がりを予感させる、はるまきごはんのネクストがまた楽しみですね。
はるまきごはん
ありがとうございます。まずは『ふたりの』を是非聴いてみてください!!! 自分のやりたいことばかりやっているので。