音楽コンシェルジュ、ふくりゅうが月に一度だけママをつとめる都内某隠れ家スナック(※コロナ禍なので“というてい”でお送りします!)。2020年~2021要注目のアーティストを迎えてお届けする、ゆるふわ酒呑みトーク。第8回目は、2020年11月25日にリリースされたアルバム『必死』が話題のボーカロイドプロデューサー、syudouに注目です。すでにネットシーンで「ビターチョコデコレーション」、「コールボーイ」など多くヒット作を発表。ななもり。、Ado、宮下遊、いゔどっとなど、注目のネット発アーティストに楽曲を提供するなど作家としても注目されている彼。ダークヒーローかつキャッチーなサウンドテイストに垣間見れるヒップホップのスピリット。そして自身で歌唱するフェーズへ突入された思いなどなど、たくさんお話を伺ってきました。

ふくりゅう
いらっしゃい~。

syudou
こんばんは!

ふくりゅう
あら、syudouさん。2020年は、syudouさんの勢いをとても感じたよ。

syudou
ありがとうございます。とりあえずビールで!

ふくりゅう
お酒はビールが好き?

syudou
ビールから派生してハイボールやワインも好きなんですけど、一番好きなのはホッピーですね。

ふくりゅう
酒呑みだなあ。

syudou
あはは(笑)。最近、自分で思うほどお酒に強くないことを自覚するようになりました。でも、量を呑みたい人で。

ふくりゅう
まじか。じゃあ、お酒で失敗とかありそうだね。

syudou
しょっちゅうですね(笑)。でもちゃんと家には帰れるんですよ。

スタッフ
一緒に呑んでいたら「帰ります!」っていうので「大丈夫?」と思ったら、お店の出口の降りる階段を逆に登って行ったことがあって。どこに行くんだよと(苦笑)。

ふくりゅう
ははは(笑)。お酒が好きでよかったことは?

syudou
今だから言えますけど、曲になりますよね。普段生きていてどうしようもないことってあるじゃないですか? しんどいこととか。でも、友人とお酒を飲み交わすことで共有できたり、恥を晒すんですけど、人の恥も知れるので。

ふくりゅう
いま、コロナの流れでなかなか人に会いづらい世の中になっちゃったもんね。でも、syudouさんの作品って人間が描かれているよね。本質的な叫びとか、嘘のない思いとか。表現の仕方もまた言葉選びなどが絶妙で。

syudou
自分の経験で、自分の中にあること。自分が思ったありのままの気持ちを曲にしていますね。それが評価されないんだったら、曲どうこうの前に自分を変えないといけないなっていうスタンスなんです。

ふくりゅう
軸がしっかりしてるなあ。ちなみに、好きなお酒のおつまみは?

syudou
いぶりがっこという、たくあんを燻したやつで。美味しいっすよね。あと、丸くてチーズの中にカズノコがあるやつ。

ふくりゅう
あああ、カズチーね。あれ美味しいよね。ちょっと高めだけど(一袋500円ぐらい)。

syudou
人気なのでなかなか売っていないんですけど、見かけたら買っちゃいますよね。

ふくりゅう
うんうん。ちなみにsyudouさんというと昨年発表した「ビターチョコデコレーション」のヒットはシーンに大きな影響を与えたよね。TikTokでも人気で。電子音の使い方であったり、オリジナリティを強く感じたんだよね。syudouさんの楽曲は歌詞も素晴らしくって。ちなみに、自分では“syudouらしさ”って、どんなところから確立できたと考えている?

syudou
今作っているものに関しては“自分”を出そうというのがあって。遡るんですけど、僕はバンドだったり、ボーカロイドはけっこう長くやっていて。大学時代は音楽の作家にも憧れてデモテープをいっぱい作っていました。でも一向にうまくいかなかったんです。

ふくりゅう
そうなんだね。うまくいきはじめたきっかけは?

syudou
2018年の頭に「邪魔」という曲を出しまして、あの曲からいい感じになったんです。

ふくりゅう
「邪魔」、最高にカッコいい曲だよね。歌っちゃうもん。今回、自らによる歌唱でアルバム『必死』にも入ってるね。

syudou
「邪魔」を出す直前ぐらいにしんどいことがいっぱい重なって。困ったもんだなと思っていたんですけど、自分の性格の嫌なところも全部詰め込んで吹っ切って作ったのが「邪魔」でした。そうしたら聴いてもらえたんです。

ふくりゅう
そうだったんだ。

syudou
ありのままでやって、それがダメな場合は自分を変えるべき、という考え方になりました。大好きなヒップホップからの影響なんです。ヒップホップの魅力って、どれだけ曲がいいか、その人がカッコいいかはもちろん、とても惨めな状況であってもユーモアを織り交ぜて提示できるかが面白さのひとつにあるんですよ。

ふくりゅう
なるほどねえ。しかも、今回アルバム『必死』に収録したラストナンバー「必死」は、完全にラップというかヒップホップになっていて。

syudou
ボーナストラックぐらいの気持ちで作りました。特典的な意味合いが強いんです。ファンからしたら、全然ボーカロイドじゃないじゃんっていう。

ふくりゅう
「必死」の畳み掛けて行くリリックがまたすごくて。

syudou
リリックという言い方が(ヒップホップっぽくて)嬉しいです。

ふくりゅう
ははは(笑)。辛辣な言葉なんだけど、遊び心がありながら、引き出しを広げている感じで。

syudou
僕が、普段聴いている音楽に近い感じですね。面白がってもらえたら嬉しいです。

ふくりゅう
そもそも音楽にハマったきっかけは?

syudou
家族が音楽を普通に楽しんでいる家庭で、楽器があったりしたんですよ。小学生の頃からバンプやアジカンを聴いて日本のバンドにハマって。姉とバンドをやったりもしました。中学生ぐらいから自我が目覚めて、能動的にディグりはじめてハチさんを知るんです。米津玄師さんですね。

ふくりゅう
おおお、どことなくハチの影響は感じられるもんね。

syudou
くらっちゃいましたね。2007年の初期からボーカロイドは知っていってました。でも大きかったのが2009年、そして2010年ですね。ハチさん「マトリョシカ」、DECO*27さん「モザイクロール」。そしてwowakaさん「ワールズエンド・ダンスホール」が2、3ヵ月の間にばっと上がった時があって、ヤバイなって。バンドとは違う文脈で、好き勝手やっている感じがイケてるって思ったんです。

ふくりゅう
素晴らしい出会いですな。音楽以外だとどんなカルチャーがお好きで?

syudou
ラジオが大好きで。しょっちゅう聴いてます。深夜に『オールナイトニッポン』を聴いたりとか。芸人さんのラジオ番組とか。

ふくりゅう

syudou
見よう見まねで。あと、コラム読み漁るのも好きで。曲を聴いて、作った人が何を考えているのかに興味があるんです。

ふくりゅう
大学生の頃に、音楽の作家への夢は諦めたことがあるそうで。でも、今ではななもり。、Ado、宮下遊、いゔどっとなど、注目のネット発アーティストに楽曲を提供されていてすごいなと。

syudou
自分だったら届かないお客さんに届くのが面白いですね。ボーカロイドだったらその時点で聴かないという方もいるので。生身の歌の方が飛距離があるんだなって。Adoさんを見ていても思いました。

ふくりゅう
Adoに提供した「うっせぇわ」なんて最強なパンクチューンだよね。ヒップホップ的でもある。

syudou
楽しんでますね。

ふくりゅう
それもあって、自分で歌唱するようにもなった?

syudou
それは、さっき話したように歌の方が飛距離があるんですよ。

ふくりゅう
今回、syudouさんは、ボーカロイドアルバムとしての決定打『必死』を完成させたけど、歌唱曲も入っていたよね。YouTubeにも頻繁にアップしていたけど。

syudou
歌っていきたいというより、活動の幅を広げていきたいんです。歌うことで今までの流れを変えたいというより、あくまでsyudouって奴がやっているということが大事で。変な話、何をやっても大丈夫だと思っていて。それぐらい魅力ある表現者でないと意味ないと思うんです。

ふくりゅう
おおお、スピリットってことだね。それこそヒップホップに通じる考え方だ。

syudou
そうですね。とても影響を受けています。

ふくりゅう
ボーカロイド界隈で同期は誰になる感じ?

syudou
それこそYOASOBIのAyase、すりぃ、ツミキ、煮ル果実あたりですね。

ふくりゅう
おおお、2020年代を代表する錚々たる面々だね。そういえば、この前、Johnさん(TOOBOE)に取材したとき、ボーカロイドプロデューサー界隈で気になる人はと訊いたら、syudouさんのお名前を挙げていたよ。

syudou
わあ、それはめっちゃ嬉しいですね。

ふくりゅう
次なる世代がどんどん登場してるんだよね。syudouさんはいい意味でルーツが見えない感じがまた魅力で。

syudou
影響はヒップホップ界隈とか、見えないところからあるんですけどね。コレとコレを混ぜるみたいなギャップ感は意識しているかも。ユーモアを交えての表現って大事で、たとえば殺したいほど憎い人がいたとして、そのまま“殺したい”って歌詞にするのではなく、そこにユーモアを交えると作品になってお金を稼ぐことができるんです。

ふくりゅう
あああ、それこそがsyudouのオリジナリティある表現であり、新しさを生む秘訣なんだろうね。アルバム『必死』を携えて2021年、syudou大飛躍の年になりそうだね。楽しみにしています。

syudou
がんばっていきたいです。

ふくりゅう
そうそう、ここはスナックなんだけど、スナックってよくママに悩み相談とかするらしいんだけど、おいらママだから何か悩み相談なんてある? お酒もすすんできたんで。

syudou
日々悩んでいるんですけど、相談しやすいところでいうと僕は貧乏性が治らないんですよ。仕事での移動で、明らかにタクシーを使った方がいい場合でも歩いちゃうんですよ。

ふくりゅう
それはめっちゃいい心がけやん。その分、浮いたお金で美味しいご飯食べた方が健康的だよね。

syudou
たしかに(笑)。あと、最近、活躍されているアーティストの方とご飯をご一緒する機会が増えて。でも、そういう人と安い居酒屋とか行きづらくて。顔がわれている方(知られている方)もいらっしゃるので。そんな時、いいお店に行くんですよ。奢っていただけるんですけど、伝票見たときに金額でギョッとするんです。払えはするんですけど……。俺、後輩がいたときに奢れるかな、とか。そんな感覚をアップデートしていきたいっすよね。

ふくりゅう
わあ、なんかいい話だなあ。その感覚って大事だから初心を忘れずにだよね。それこそ、ご飯行くこともエンタテインメントになるもんね。ライブ感ある食事って実際あるし。

syudou
そうですよね。

ふくりゅう
コミュニティが広がっていくんだよね。まあ、後輩たちにもいい経験をさせてあげてくださいな。夢を与えて欲しいですよね。受け継がれるバトン、感慨深いなあ。

syudou
受けた恩を後輩に受け繋いでいきたいんですけど、そういう時に貧乏性が出そうで(苦笑)。

ふくりゅう
そういうことだよね(笑)。あれだ、ヒップホップスピリッツを忘れずにだね。カッコつけることも表現者にとって大事なことかも。そうだ、まずおいらに奢ればいいんじゃない? 美味しいお店紹介するから(笑)。あ、割り勘でもいいけど。

syudou
あはは(苦笑)。ぜひ、行きましょう。ふくりゅうさんに、いろんなお話聞きたいんですよ。音楽たくさん聴かれている方なんで。2021年の音楽シーンの予想とか。

ふくりゅう
それこそ本音でsyudouの活躍に期待してるよ。毎年選んでいる個人的な“2021年に期待のアーティスト30組”にも絶対に入れさせていただきます。あと来年は、音楽の広がり方の仕組みも変わってきつつあるので、ヒップホップ界隈のオーバーグラウンドへの広がりが楽しみだよね。神戸のNO NAME’Sとか面白くて。まだ東京じゃ全然知られてないんだけど。うん、今日は閉店時間になっちゃったから今度、呑みに行こう。

syudou
ぜひ!!!