テーマ「おうちCAFÉ化最新グッドミュージック」(吉田可奈 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2021.03.12

2021年3月12日 UPDATE

吉田可奈 選曲
テーマ「おうちCAFÉ化最新グッドミュージック」

 家でのんびり過ごしているときに、プレイボタンを押すだけでそっと心に潤いを与えてくれるのが、素敵なBGM。テレワークや家事などの作業の効率を上げ、ブレイクタイムにじっくりと聴き入ればその深い世界観にどっぷりとハマってしまう……。そんな5曲を紹介します。

AAAMYYY「HOME」

 Tempalayのメンバーとしても活躍するシンガーソングライターのAAAMYYY。
 優しいアコースティックギターの音色に乗る、タイトル通り“家”をテーマにした歌詞はとても暖かくて、それでいてとても強くて……。安心できる家と、家族、そして家族以上になんでも話せる友達がいれば、どんなに大変なことが訪れようとも、“大丈夫”だと思わせてくれます。
 世代を問わずの背中を押すようなエールソングにも関わらず、少しも押しつけがましくないのは、すぐとなりでささやいてくれているようなウィスパーボイスだからこそ。曲の後半になるごとに音数が増え、吐息さえもサウンドに溶けていく様はとても心地よく、「ただいま」「おかえり」と言い合える存在の大切さをあらためて感じさせてくれます。
 これで彼女を知ったなら、ぜひTempalayのMVも見てみてください。驚くほどのギャップに感動するはず!

Awesome City Club「ceremony」

 映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアを受けて作られた「勿忘」で注目を集めている彼ら。昨年の秋にリリースされたこの曲は、当たり前の、普通の日常にある極上の幸せを歌った、やわらかくて肌触りの良いタオルケットのようなミディアムチューン。
 “ロマンスコメディのような恋がしたい”と皮肉りながらも、ふたりで飲む薄いコーヒーがとても愛おしいと歌うこの曲には、聴き終えたあとに、そばにいる人に優しくしたいと思わせる魔法がかかっています。サウンドはこだわりに満ちていて、ヘッドフォンで聴くほどにそのこだわりがあふれているのに、肩の力が抜けていて、すぐに心にストンと落ちてくる楽曲の構成はさすが。
 ちなみに、彼らの生活をのぞき見するような、パジャマ姿が見られるMVもとても自然体で素敵なので見てみてくださいね。

millennium parade「FAMILIA」

 鬼才、常田大希率いるmillennium parade。一音、一音、すべての音が身体中にまとわりついて最終的に他のことを考えることを停止させてしまうほどの力を持つ圧倒的な楽曲。ではこのテーマのBGMに向いているのかと言われたら考えてしまうが、とにかく聴いてもらいたいので入れてみました。
 Aメロのハイトーンの歌声メロディラインと、低音でまるですべてを食い尽くすかのようなハモリが重なることで、緊張感と、相反する温かさを奇妙に同居させる手腕はさすが。映画『ヤクザと家族 The Family』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、物語にぴったりと寄り添うだけでなく、主人公の心情をさらに表現したこの曲がエンドロールで流れることで完成するという、まさに主題歌の意味をしっかりと果たしているのも素晴らしいんです。
 夜中に聴いたら曲の世界観から戻ってこれなくなるので、昼下がりに、なるべく自然光が部屋に入り込む時間に聴くことをオススメします。

Vaundy「融解sink」

 「東京フラッシュ」や「怪獣の花唄」で音楽ファンを唸らせているVaundy。
 より音楽の自由度を感じる令和感漂う新しさと、どこか懐かしいシティポップ感を併せ持つ彼の音楽は、楽曲ごとに与える印象は違いますが、どんなジャンルにも上手く溶け込む心地の良い歌声が、ひとつ強い芯としてどの曲にも立っているからこそ、“次はどんな曲を聴かせてくれるのだろう”とワクワクさせてくれるのです。
 この曲は悲しみをすべて優しく、柔らかく包み込むような深みを持つチルソング。若手注目俳優の南沙良を起用し、彼女が水の中に落ちていくファンタジーのような映像は美しさだけでなく、奥深くに感じる悲しみ、苦しみも感じることができて、とても愛おしく感じるはず。ぜひ歌詞を深読みしながら聴いてみてください。

Kitri「Lily」

 繊細で美しいピアノと浮遊感漂う歌声の姉妹によるピアノ連弾ユニット、Kitri。
 両親が自主制作盤を大橋トリオさんに送ったことがデビューのきっかけという彼女達。一聴すると、とても美しく、心が浄化されるような歌声とサウンドでいながら、どの曲にもチクリとした毒が含まれていて、その毒が身体中に回ったら最後、一気にその独特な世界から抜け出せなくなるのです。
 この曲も例外なく、とてもドラマティックで美しいなかに、余白が多いからこそ考えさせられる“意味”が含まれていて、どこか物悲しく…。最後にはドキッとするような狂気さえもはらんでいて、また最初から聴きたくなるのです。真綿の中に混じる鋭利な棘に痛みを感じながら、体中にKitriのふたりの歌声が吸収される瞬間を楽しんでください。

(プロフィール)
吉田可奈
エンタメ系フリーライター。これまでYUIや西野カナ、L’Arc-en-Cielなどのオフィシャルライターを務める。現在はダヴィンチ、In Red、mina、NYLON、B-PASSなどで音楽ページをレギュラー執筆中。著書に『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん?』(ともに扶桑社)など。
Twitter:@knysd1980

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