テーマ「“もしも『mid90s』の日本版が公開されたら”な5曲」(高木“JET”晋一郎 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.10.09

2020年10月9日 UPDATE

高木“JET”晋一郎 選曲
テーマ「“もしも『mid90s』の日本版が公開されたら”な5曲」

 90年代中盤のカリフォルニアを少年の目から描いた、ジョナ・ヒル監督の自伝的映画『mid90s』が日本でもジワジワと上映館を増やすヒット作となっています。日本でも90sオマージュてんこ盛りのSITE作のマンガ「少年イン・ザ・フッド」(扶桑社)が重版出来するなど、90年代ストリートカルチャーが大きな注目を集める昨今。本稿では“もしも『mid90s』の日本版が公開されたら”というテーマで、そこで使われるかもしれない、架空のサントラを考えてみました。

電気グルーヴ 「Cafe de 鬼(顔と科学)」

 アルバム『SINGLES and STRIKES』(2004年リリース)収録。いきなり90年代リリースじゃないんですが、アルバム自体が90年代曲を中心にしたベストなのでご容赦を。監修のコンピ『テクノ専門学校』や後にリリースされるDJミックス『MIX UP』、田中フミヤ氏とのパーティ「DIS-CO」、そして「電気グルーヴのオールナイトニッポン」などなど、石野卓球氏の“布教”とも言える功績によって、世界的に見ても驚くほどのテクノ作品がリリースされていた90年代日本。特に94年リリースの『DRAGON』は「ブラジルのカウボーイ」や「バロン ダンス」のようなクラブ直結型のアシッドテクノと、「お正月」のようなポップネスを並列に繋げることでオリコン13位を獲得。「虹」や「ポポ」などは、ピエール瀧氏が出演していた「ポンキッキーズ」をはじめとするTV番組に使用され、お茶の間レベルまでテクノが浸透する契機となった。そして「Shangri-La」のスマッシュヒット。今年8月には「Set you Free」をリリースをするなど、電気はますます意気軒昂!

ピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」

 YouTubeがメディアプラットフォームとして確立したお陰で、過去のMVがオフィシャルの形で、しかも高画質でアップされるようになっています。例えば「PolystarTube」(https://www.youtube.com/user/PolystarTube)にはパーフリとZEEBRAと嶺川貴子とカジヒデキとオジロザウルスと細川ふみえが一緒に上がるようなカオスな状態で最高なのですが、ピチカート・ファイヴもオフィシャル・アカウントから過去のMVをアップされています。そしてそのMV群のシンプルかつおしゃれな事……。「東京は夜の七時」での現在は「KITTE丸の内」になっている「旧東京中央郵便局」や東京タワーに象徴される「東京を再発見」や、色の鮮やかさとファッションから生まれるトキメキが止まらない「ベイビィ・ポータブル・ロック」、それとは真逆のモノクロに彩られた「メッセージソング」など、ミニマムでシンプル、かつセンス抜群な映像は、セルフメイドでMVが撮れるようになり、バジェットよりもクリエイターのセンスが問われる現在の映像クリエイションを先導したと言っても過言ではないでしょう。

SUPER JUNKY MONKEY 「ばかばっか」

 もしかしたらその名前を知っている人口は、日本よりも世界の方が多かったかもしれない、ミクスチャーバンド:SUPER JUNKY MONKEY。個人的にはたしかTVKの「ミュージックトマト」でこのMVを観たのですが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズもかくやという、そのパワフルさと異常なサウンド感に一発で脳天を撃ち抜かれるほどの衝撃を受けました。そしてもう一つの衝撃はテレビ東京「タモリの音楽は世界だ」にライブ出演した回。SJMのアナーキーな演奏と、ばんばんダイブする客(確か全体では「ダイブ講座」のような切り口だった)、それに戸惑う中尾ミエ、盛り上がる林家こぶ平(現:林家正蔵)、笑う丹波哲郎という構図に悶絶しました。USビルボードの表紙や作品の全米リリースなど、海外こそ評価の高いグループでしたが、ボーカルのMUTSUMIの急逝によって活動は休止。しかし現在もマキシマム ザ ホルモンやRIZEなど、SJMへのリスペクトを口にするバンドは数しれません。

小沢健二 featuring スチャダラパー「今夜はブギー・バック(nice vocal)」

 スチャダラパー側の「今夜はブギー・バック(Smooth Rap)」は『スチャダラ外伝』(94年リリース)収録。日本語によるヒップホップをお茶の間レベルに浸透させた一曲。そして「ブギー・バック」のスチャのすごさは、「徹底して意味のあることを言わない」ことで、楽曲をエヴァーグリーンにしたことでしょう。特定の状況や世相を歌詞に映さないことによって、この曲は「この曲を受け止めたリスナーの意識が直に投影された曲」になり、ずっと不変の魅力を持ち続けることになりました。故に未だにライブでパフォーマンスされても、フレッシュなままであり、この曲を初めて聴いたときの自分と、今の自分をシームレスに繋いでくれます。だからこそ宇多田ヒカルやKREVAなど、数々のアーティストにカバーされ、多くのリスナーの「心のベストテン第一位」に輝き続けるのでしょう。新作『シン・スチャダラ大作戦』も最高なので是非。

スチャダラパーからのライムスター - Forever Young (Music Video Version)

 ECDが主催し、雷やキングギドラ、BUDDHA BRANDなど当時の日本語ラップのアンダーグラウンド勢が集結した日比谷野音でのイベント「さんピンCAMP」は、未だに伝説として語り継がれています。それはその翌週に同じ野音でスチャダラパーらを擁するクルー「LB NATION」が「大LB夏祭り」を開催したことで、期せずしてその2つが「メジャーVSアンダーグラウンド」という図式に見えてしまったことも影響していました(実際は仲が良かった)。しかしそこで生まれた「幻想」によって、ストリートのヒップホップが90年代末から爆発的に注目を集める契機となり、日本語ラップは活性化し、現在に至るまで日本のストリートミュージックの大きな一翼にヒップホップがあり続けることになりました。そして2020年、共にキャリア30年を超えた「さんピン」側のRHYMESTERと、「LB」側のスチャダラパーが遂にコラボレーション! しかも「まだまだいける」と歌う姿勢には思わず涙……。このサントラのエンディングはこの曲でどうですか?

(プロフィール)
高木“JET”晋一郎
ライター。ヒップホップ、アイドル、クラブミュージック、ポップスを中心に執筆。構成単行本にサイプレス上野「ジャポニカヒップホップ練習帳」(双葉社)、R-指定(Creepy Nuts)「Rの異常な愛情」など。構成連載にchelmico「キスがピーク」(TVブロス)、木村昴「HIPHOP HOORAY」(ヤングジャンプ)など。
https://twitter.com/TKG_JET_SHIN

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