フジファブリックがシングル「徒然モノクローム／流線形」をリリースした。

　昨年夏より新体制として再始動、３人でのフジファブリックの形を追い求めたアルバム『STAR』をリリースし、そのツアー「ホシデサルトパレード2011」(本シングルの初回盤に、Zepp Tokyoで行なわれたツアーセミファイナルの映像が収録されたDVDが付属)を経て、本作で高らかに鳴らされているのは“圧倒的な希望の光”だ。

　始まりを予感させるドラマチックなサウンドの後、まさにフジファブリック節なキーボードが飛び込んでくる「徒然モノクローム」。＜行き詰まった所がほら／それが始まりです＞という歌詞は、苦悩を経験した彼らだからこそ胸に暖かく響き、リスナーの背中を押してくれる。そして、キラキラと輝く宇宙空間をゆったりと、それでいて力強く遊泳するような「流線形」、映画「モテキ」のコンピ盤に提供した小沢健二のカバー「僕らが旅に出る理由」の全３曲を収録。どの曲も、何かが始まるようなワクワク感でいっぱいだ。

　もちろん、『STAR』にも希望の光を感じることは出来た。ただ、バンドの中心的人物であった志村正彦の急逝という悲しい出来事があり、はたして3人のフジファブリックはどういう形になるのか？という、新体制として動き始めたドキュメントを見るような感覚が、少なからずあったと思う。そんな杞憂へ完全にピリオドを打つような突き抜けた爽快感、そして、ライヴで得た未来への確信から生まれた力強い希望の光が、この作品には漲っている。「徒然モノクローム」のキーボードに“フジファブリック節”と書いたのだが、あのフレーズは“これからのフジファブリック”──過去と今、全てを抱えて走り出した彼らを象徴しているようであり、そこにたくさんの希望や未来を見る者は、私だけではないはずだ。

　フジファブリックは6月1日の新宿LOFT公演を皮切りに、全国ツアー「徒然流線TOUR 2012」をスタートさせる。彼らの抱く希望はそこで更に光を増し、これからも輝き続ける。

【文：山口哲生】