ゆびィンタビュー vol.06 NEVERSTAND
ゆびィンタビュー | 2019.02.04
ビクター・Getting Better RecordsとTHE NINTH APOLLOがタッグを組んだレーベル「Narisome Records」の第一弾アーティストとして登場した大阪出身の4人組NEVERSTAND。前作『AM6:58』から2年近くのブランクを経て、ついに新作ミニアルバム『The Gleam of a Candle』がリリースされた。メロディックパンクが主軸だった前作までに較べて圧倒的に広がった音楽性、そして込み入った感情をつぶさに見つめ、その中でなんとか出口を探そうともがく歌詞。ここにきていよいよこのバンドの本質があらわになったような手応えのある作品だ。聞けば、前作から今作に至るまでには、バンド内部で「危機」ともいえる状況があったらしい。それを乗り越え、ここから彼らは確かな一歩を踏み出す大阪にいる彼らに東京からSkypeをつないでのインタビューで、メンバー全員の言葉を聞いた。
PROFILE
NEVERSTAND
大阪府出身のロック・バンド。メンバーは小路知也(vo,g)、横井優(g,cho)、岡本卓馬(b)、松本嘉一(ds)の4名。2012年に結成。シングル、ミニ・アルバム各1枚を経て、2015年に〈RO69JACK 2015〉で優勝し注目を浴びる。翌年に初の全国流通盤となるミニ・アルバム『Move on』を発表。約30本のツアーも盛況に終える。2017年4月に2枚目のミニ・アルバム『AM 06:58』をリリース。そして2019年1月に1年9ヵ月ぶりとなるミニ・アルバム『The Gleam of a Candle』がリリースされた。
全員
こんばんは! よろしくお願いします!- よろしくお願いします。いい作品ができましたねえ。
全員
ありがとうございまーす!- 前作よりも深みが増したというか、大人っぽくなったというか。
小路知也
そうですねえ。バンド歴が長くなるにつれていろんなことができるようになっていく、それをうまくまとめられたかな。横井優
でも、レコーディングしたの去年の8月とかなんですよ。遠すぎて覚えてないな(笑)。でもサウンド面でいうと、いろんな機材使っていろいろ試したんですけど、その中にも、やりすぎないようにシンプルにっていうのでやりました。それがいい具合に噛み合ったんじゃないかな。カイチ
うん、シンプルに組み立てるというのは意識したね。前作以上に引き算の部分が増えて。よりボーカルの歌詞の内容とかが浮き出てくるというか。いろいろ見える作品になったんじゃないですかね。岡本卓馬
曲順も前作と似ている並びになっているんで、聴き比べたら楽しいと思います。小路知也
個人的には、前作ってすごいシンプルだったんですよ。こう思ったからこう書いた、っていう。でも年を経るごとに考え方も変わったし、今回はいい意味で悩みながら書いた曲たちになってるかなと思います。- 確かに、安易に結論を出さないというか、いろんなこと考えて、その上でなんとか一歩前に行くっていう感じはありますよね。
小路知也
はい。- 前作はここから行くぜっていう勢いが出ていたけど、今作はちょっと立ち止まって振り返ったり考えたりっていうのが歌詞にも出ているなと。
小路知也
前作出してから、今まででいちばん浮き沈みがあったし、障害もあったし、本当に大丈夫なのかって思うこともたくさんあって。曲作りに関しても、ライブでどうやったらいいかっていうのも、やってて苦しかったことは実は多かったです。でもそうやって泥の中這いつくばってなんだかんだ前に進んできたからこそ、やっときれいなもんが見えたかなって。横井優
小路の歌詞にも出てると思うけど、メンバー間の関係性がよくない時期があって。自分たちの中にもこうしたいっていうのがあるけど、それをうまく伝えられなくて、ケンカとかして。今になってそれがよかったのかな、ちゃんと向き合えたから。小路知也
うん。横井優
今回のCD出すのも楽しみだし。ツアーも久しぶりなんで楽しみなんですけど、もっと先を見れるなって思えてますね。- 具体的なことはわからないけど「なんかあったんだろうな」っていうのは作品を聴いて感じる。なんとか前に進まなきゃっていう試行錯誤が滲み出てますよね。それがこのミニアルバムのいちばんグッとくるところ。
- もしもーし。
横井優
はい、はい。聞こえますか?- あ、聞こえます。今回『The Gleam of a Candle』ってタイトルですけど、「gleam」って聞き慣れない言葉だよね。これは敢えて選んだんだろうなって思うんですけど。
小路知也
これは僕が探していたんでしょうね。あの……が……で……。- ごめん、ちょっと聞こえない。
横井優
いいこと言ってたのに(笑)。- もう一度お願いします(笑)。
小路知也
単純に、「light」とかって言葉だと、僕にとっては明るくて眩しすぎて。素直に「すげえ!」とか思えないんで。どっちかというとあったかい光を求めていたみたいなところはあります。自分も誰かにとってそうなりたいし。それでタイトルにしました。- カイチくんが最初に言ってたけど、今回は確かに歌が立っているんですよね。そういうふうにしようと思ったのはどうして?
カイチ
これを作っている過程はちゃんと4人で向き合った期間だったと思ってるんで、ちゃんと4人で演奏しているというのを出したくて。「ボーカルを引き立たせる」というのはそういうことかもしれないですね。ちゃんと4人が同じ大きさで、均等に楽しめるようにアレンジしたかな。- だから歌だけ前に出すということじゃなくて、歌とバンドが一体化している、同じ方向を向いている状態を目指したってことですよね。それって結構大きな変化だと思います。
カイチ
はい、そうですね。- 実際、ライブとかでも出る音は変わった?
横井優
まあ、爆裂に変わったよな。小路知也
ライブにかんしてはモロに人間が出るので。どこまでいっても生モノなんで、仲が悪いときのライブと、話し合って「こうしよう」って決めたあとのライブを比較したら、笑えるくらい違うと思いますよ。- そんなにガラッと変わったんだ。
小路知也
でもそうあるべきやと思うんですけどね。いつでもかっこいいのがベストだと思いますけど、それで毎回……。- あ、戻った。
全員
イェーイ!(笑)小路知也
えーと、ライブは生モノなんで……今なんて言ってたっけ?(笑)- はははは。
小路知也
言葉も生モノなんで(笑)、もう何言ってたかわかんなくなった。でもそうやってダメになったあとによくなった自覚があるからこそ、ダメになった意味があったのかなっていうのを、ライブをしたときにいちばん実感しますね。- そうやってバンドとして密になって作ることで、小路くんの根っこの部分みたいなものがよりあらわになっているような気もする。小路くんが本質的に持っている切なさとかこんがらがった部分が出ているというか。
小路知也
ハッピーだけだと眩しすぎますからね。楽しいのはいいと思うんですけど、それだけで終わっていいのかなって思うし。僕、ひねくれてるんで。ひたすらまっすぐに生き続けていく人への羨望もありますけど、自分にはできない。そういう複雑な部分は出てるかなと思います。- 相当、行ったり来たりしながら生きてるんだなって思います。
小路知也
そうですね。- メンバーから見て、小路くんってどういう人?
横井優
レコーディングしてたとき、去年の8月くらいのときはまだメンバー間がギスギスしてて。その中で小路が悩んで何回もやり直してるのを見て「不器用なりに頑張ってるんやな」って思って。前だったら僕、怒ってたと思うんですよ。「つべこべ言わず書かんかい」って言ってたと思う。- うんうん。
横井優
でも今回はその、できへんなりに頑張ってる姿をちゃんと見れるようになって。「じゃあ俺も文句言わんとギター練習しよう」とか思った(笑)。そういうところはリスペクトしますね。- 卓馬くんはどうですか?
岡本卓馬
僕ですか? うーん……。小路知也
大丈夫大丈夫、おまえは(笑)。岡本卓馬
ま、ひねくれてるっすね。小路知也
でも俺さ、ひねくれてるって言われることも、まっすぐだって言われることも、どっちもあるよ。だから「ひねくれてる」と「まっすぐ」は別もんじゃないんかなって……。横井優
卓馬に喋らしたれよ(笑)。岡本卓馬
なんか「これやりや」って言ったらめっちゃ嫌がるから。「俺がやりたいって思うような言い方で言って」って言ってくるから(笑)。- 何それ?
カイチ
小路くんは、自分のやりたいことはすっごくまっすぐにやるんですよ。自分が楽しいと思ったものはめちゃくちゃ楽しめるけど、それに当てはまらないとできない。でも、自分の置かれてる状況とかはちゃんと分析できてるんですよ。全部俯瞰できてるけど、やりたくないことはやりたくないって言う。小路知也
メンタリストか、おまえは(笑)。そこで自分を曲げたらダメになっていくんですよ。それをやってると僕はただ、地獄の底に落ちていくだけなんで。それが今回いちばんわかったことですね。横井優
それが歌詞にも出まくってますね。おもしろい。- うん。普通歌詞を書くときって、ちょっと体裁を整えようとか、それらしくまとめようとかって気持ちが出てくるものだと思うんですけど、特に今作はその形跡が見えない(笑)。ダダ漏れですよね。
小路知也
そうなんですよね。結局ダダ漏れになるんですよ。じゃないと書けないんで、僕。僕、妄想してストーリーを作ってっていうのが無理なんですよ。それじゃ歌うときに力がこもらない。そのときの自分の気持ちを言葉にしていくっていうのじゃないと、ペンが進まない。横井優
「ペン」(笑)。小路知也
まあ、スマホのメモですけどね。こういうときは「ペンが進まん」って言うんや。- その歌詞ですが、今作は最後の「gleam」になるまでなかなか出口が見えないじゃないですか。最後の最後にちょっと光が見えるんだけど、本当の答えはこの先に待っているのかなって思います。この6曲では全然完結してないですよね。
横井優
おっしゃる通りです。できたときはそこまで考えてなかったんですけど、時間が経って先のことを考えるようになったら、本当にそうだなって思いました。今、いろんな伏線を回収している途中なのかなって。小路知也
ひとつの作品で「これ以上はない」ってものを作るのは目指したいところではありますけどね。- でも今日の話を総合すると、NEVERSTANDの場合はそういう作品はできないんじゃないかと思う(笑)。そういうバンドですよ。
小路知也
そうなんですよね(笑)。でも、嫌いじゃないですね、そういうの。
(通信が途切れる)
(通信が途切れる)
【取材・文:小川智宏】
<ミュージックビデオ>
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リリース情報
The Gleam of a Candle
2019年01月23日
Narisome Records
2. Embers
3. Phantom
4. Stella
5. My TinySong
6. Gleam
お知らせ
小路:俺「5億年ぶりに」って調べた。「マジ5億年ぶりに会ったって〜」とか言うけど、なんで5億年ぶりなのかって、5億年前のことを調べたんですよ。ほんなら、人類もまだ誕生してないし、脊椎動物がいっぱい出てきた時期らしくて。すげえよかったです、それが。
横井:5億年前のことが知れてよかったってこと?(笑)
岡本:僕めっちゃお酒飲むんですけど、お酒飲みながら金稼げたらいいなって思って、「ボーイズバー」で検索しました。そしたら酒飲みながら働けるし、飲んだぶんだけ稼げるから(笑)。
小路:やばい(笑)。
岡本:使えますかね、これ。
横井:バンドのサウンドメイキングを担当してるんですけど、ベースが音作り下手すぎて。「ベース ヘルツ」を調べました。このへん出したらこういうサウンドになるんやって。
小路:そのベースはボーイズバーで働こうとしてる(笑)。
横井:その前にベース練習せえや!
カイチ:いちばん最近検索したのは、「スーパーオーガニズム 当日券」。スーパーオーガニズムってバンド(※イギリス出身のバンド)が来日するんで、当日券あるかなあ……と(笑)。
横井:ちなみにカイチ以外、スーパーオーガニズムが何なのかまったくわかってないです。
カイチ:NEVERSTANDの音楽性とはまったく関係ない(笑)。
小路:いやいや、出てるよ、出てる(笑)。
■ライブ情報
NEVERSTAND 「Before melt tour」
02/23(日)大阪BRONZE
03/03(日)小倉FUSE
03/04(月)福岡Queblick
03/06(水)岡山 CRAZY MAMA2nd room
03/18(月)高田馬場PHASE
03/19(火)横浜F.A.D
03/20(水)群馬SUNBURST
04/01(月)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
04/02(火)金沢vanvan V4
04/03(水)名古屋Party’z
04/19(金)静岡UMBER
04/21(日)北浦和KYARA
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。