三月のパンタシア、“音楽×小説×イラスト”を連動させた最新アルバム『ブルーポップは鳴りやまない』
ゆびィンタビュー | 2020.10.02
ユニット名に由来する3月という季節=“終わりと始まりの物語を空想する”をコンセプトに活動する三月のパンタシア。ボーカル“みあ”が書き下ろす小説を軸に“音楽×小説×イラスト”を連動させたパーマネントなプロジェクトであり、現時点での集大成となるのが本作だ。
“みあ”が創造する“青春の衝動”、“未熟で青くさい気持ち”、“ブルーで憂鬱な気分”という、言いたくても言えない切なさ、もどかしさを具現化するために、人気イラストレーター・ダイスケリチャードが参加。さらに、音楽クリエイターとしてn-buna(ヨルシカ)、堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)、40mP、buzzG、みきとP、ぷす(ツユ)など、要注目のアーティストが楽曲を生み出していることに注目したい。主要楽曲がほぼ小説化され映像化されているなど、こだわりの作品について、“みあ”にたっぷりと作品の魅力を語ってもらった。大傑作っす!!!
PROFILE
三月のパンタシア
“終わりと始まりの物語を空想する” ボーカリスト「みあ」による音楽ユニット。
どこか憂いを帯びた「みあ」の歌声で紡がれるストーリーが、ときに優しく、ときに切なく、聞き手の心に寄り添い多くの共感をよぶ。2016 年6 月1 日にTV アニメ『キズナイーバー』のエンディングテーマ「はじまりの速度」でメジャーデビュー。2018 年11 月21 日には6 枚目となる「ピンクレモネード」(TV アニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」オープニングテーマ) をリリース。みあが書き下ろす小説を軸に“音楽× 小説× イラスト” を連動させた自主企画『ガールズブルー』をWeb 上で展開。2019年3月13日に企画『ガールズブルー』をテーマにした、2nd Album「ガールズブルー・ハッピーサッド」をリリース。2020年1月には自身最大規模となる豊洲PIT でのワンマンライブを開催。チケットは即日SOLD OUT。9月30日New Album「ブルーポップは鳴りやまない」をリリース。いま最も注目される音楽ユニットの一つになっている。
- めっちゃいいアルバム作品で。しかも、CDは小説も映像も網羅した豪華なパッケージで。
みあ
12曲全部楽曲が揃ったところで、あらためてバラエティに富んだ、多方面に弾けたポップなアルバムになりました。- アルバムタイトルの“ブルーポップ”という表現の仕方もハマってますよね。
みあ
三月のパンタシアは、アルバムを制作する時に最初にタイトルから考えるんです。3枚目のアルバムは、昨年の年末か年始あたりに決めようとしていて。- もう、既存曲が数曲溜まっていた状態ですね。
みあ
「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」という“いか天”と略す曲があったり(笑)。とか、未発表曲も5,6曲あって。アルバムにするかミニアルバムにするかを考えたんですね。- ああ、そうだったんですね。
みあ
それで、アルバムを作ろう!って決めた時に既存曲をあらためて振り返ったときに、すごくポップな曲が揃っているなって。- うんうん。
みあ
前作の2ndアルバムが『ガールズブルー・ハッピーサッド』というタイトルだったんですけど、それで三月のパンタシアのブルー感、“青春の衝動”、“未熟で青くさい気持ち”、“ブルーで憂鬱な気分”っていうのが世の中の人に少し伝わったのかなと思っていて。でも、もっとブルー感を知ってもらいたいなと思って、前作を継承しつつも進化させたいなと思って作ったアルバムです。- “ブルーポップ”って素敵なジャンル感。
みあ
三パシの音楽性をひとことで表すワードは何になるんだろうなと考えていたら、“ブルーポップ”という言葉が思い浮かんで。憂鬱な気分をポップな音楽に昇華していく、そしてその音楽がリスナーの心の中でずっと鳴り響きますようにという思いを込めて「ブルーポップは鳴りやまない」というタイトルを付けました。- なるほど、いっすね。
みあ
アルバムのタイトル自体は1月はじめには決めていたんです。でも、コロナ禍になって、よりブルーな気分というのが具体性を持つようになって……。だからこそ、気持ちが塞いじゃっている人はこのアルバムを聴いて、ブルーな気分を拭い去ってほしいなと。そんなアルバムが完成したと思っています。- お~、本当そうですね。アルバムを完成させた理由を全部語ってくれた感じだ。
みあ
ありがとうございます(笑)。- ちなみに、作る順番でいうと、小説が先になるんですよね。となると、「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」の元になった小説、『8時33分、夏がまた輝く』がこの中でいうと最初になるのかな?
みあ
そうです。- キャッチーで入りやすい導入ですよね。小説に音楽的要素がたくさん入り込んでくるのも好印象でした。
みあ
『8時33分、夏がまた輝く』の小説は、去年の夏にTwitter上で公開しました。そのオープニング曲が「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」で、エンディング曲が「恋はキライだ」なんです。アルバムの1、2曲目ですね。- 「恋はキライだ」が、“いか天”のアンサーソング的なんですよね。せつなくもキャッチーな曲で。今回のアルバムにおいて、小説『8時33分、夏がまた輝く』の存在は大きそうですね。
みあ
そうですね。“いか天”がアルバムの1曲目なんですけど、イントロからものすごく勢いあるサウンドで『ブルーポップは鳴りやまない』というアルバムを引っ張っていってくれる楽曲ですね。アルバムのテーマとして『8時33分、夏がまた輝く』は大きいかも。- このプロジェクトというか、アウトプットされた作品たちって、みあさんが実は一番楽しんでますよね。それが、リスナーにも伝わる構造というか。
みあ
あ、そうかもしれないです(笑)。自分が敬愛するアーティストの方々にお声掛けさせていただいて。小説にした作品が、イラストになって楽曲になって動画になっていくのは嬉しいですね。- その過程もワクワクしますよね。その楽しさがSNSやライブなどで、オーディエンスに伝わりますからね。今回、今年人気が一気に急上昇中の、ツユのぷすさんも11曲目「透明色」で作詞作曲で参加されていて。
みあ
ぷす君はとっても熱い人で。三月のパンタシアのライブに遊びに来てくれたんです。それで交流を持つことができて、TwitterのDMで「なにかご一緒できたら面白いこと出来そうですね!」みたいな話をしていて、アルバムのタイミングで声をかけさせていただきました。「透明色」は、ぷす君節が炸裂した曲ですよね。- うんうん。ぷすさんらしさいっぱいで。それでいて、みあさんの歌声がのることでスペシャル感というか、サビに入った時の切なさの加速度が素敵なんですよ。
みあ
嬉しいです。- そして、今回もヨルシカのn-bunaさんも「煙」で作詞作曲で参加されていて。ギターリフがめっちゃかっこいいんですよ。
みあ
もともと自分が、いわゆるボカロ文化が大好きだったんですよ。三月のパンタシアの活動をはじめるにあたって、どんな音楽性にするかってところで、自分が大好きだったクリエイターの方々に自分が歌う曲を書き下ろしていただけることは幸せですね。自分で小説を書いたり歌詞を書く上でも、言葉選びのセンスなど皆さんから刺激を受けますね。- 80年代的な例え方になっちゃうんですけど。「My Revolution」というヒット曲を出したシンガー渡辺美里のもとに、その後J-POPシーンを形作っていった小室哲哉、大江千里、岡村靖幸、小林武史、佐橋佳幸など、たくさんのクリエイターが集まり、それぞれ作家の魅力も拡がっていった歴史がありますが、そんなことを思い出したりしました。だって、三月のパンタシアの5年間を振り返ったら、ヨルシカのn-bunaさんが初期から楽曲提供をされていたり、昨年ヨルシカのブレイクがあったり感慨深いものもありますよね。
みあ
それは光栄すぎますよね。- 三月のパンタシアを通じて、より音楽の楽しみ方、アーティストとの出会いが広がりますよね?
みあ
たしかに。自分もTwitterでリスナーの反応をみるんですけど、こんな楽しみ方があるんだと思ったのが、三月のパンタシアの楽曲だけを聴いたときに、誰が作った曲かをサウンドだけで予想する人がいるんですよ。ああ、面白いなって。- なるほどねぇ。それと、今回、初回限定生産盤では、小説もCDにパッケージで付くのも楽しみですよね。
みあ
文庫本サイズなんですけど、けっこうぶ厚いんですよ(笑)。みあ、どんだけ書いてるんだ、みたいな(笑)。- ははは(笑)。
みあ
読み応えあると思いますよ。- 小説のテーマや書きたいことはどんなきっかけで生まれるんですか?
みあ
楽曲のイメージがなんとなく浮かんでいて、それをもとに別れの話にしようとか、楽曲イメージが先行して書いたり。ふと、物語を書きたくなることがあったり。- それぞれですよねぇ。
みあ
ちなみに、今年の7月に公開した小説に『サマースプリンター・ブルー』があって。- 3曲目「サマーグラビティ」のもとになった曲ですね。
みあ
そうなんです。これは毎年、三月のパンタシアは夏と冬に小説を公開して、新曲も合わせて出すという自主企画をやっているんですけど、3月ぐらいに内容を考えたときに、まさに新型コロナウイルスのタイミングで。2月ぐらいに収束するんじゃないかって思っていた人が多かったと思うんですよ。でも全然そんなことはなくって。いろんなミュージシャンがライブを中止したり延期をするようになって、なんとなく明日に対する不安な気持ちが渦巻くようになって。- ああ、その頃ですね。
みあ
そんなときに、三月のパンタシアとして何を届けるべきかを考えるようになって。それで、笑って読んでもらえるような、そんな手触りの、読みやすいんだけど、読むのが惜しくなるみたいな。主人公が恋愛に向かって走り出すんだけど、がむしゃらすぎる滑稽さというか。そんな内容を笑って読んでもらえたら嬉しいなって。- 前向きな気持ちにさせてくれますよね。
みあ
前向きな気持ちや明るさを主人公に託しましたね。- そうかぁ。そして僕も大好きな「サマーグラビティ」は、イントロから突き抜けるヒット感あるナンバーですもんね。曲を作られた40mPさんさすがだと思いました。5曲目「醒めないで、青春」の元になった小説『青い春の少女たち』も、コミカルなテイストがあったり、元気をもらえますよね。この雰囲気の世界にずっといたいなっていう感じというか。
みあ
ありがとうございます。よくインタビューで“全部実体験なんですか?”など質問されるんです。でも、自分的には全部それぞれ“みあ”なんですよ。でも、書いていること全部が実話ってわけではなくて。全部の主人公のどこかしらに、自分が経験してきたことの気持ちが投影されているんです。- そういうことなのですね。そして、「たべてあげる」のリリックビデオのビジュアル展開、素敵でした。YouTubeでのコメントも素敵な反響ばかりで。ある種、楽曲の楽しみ方を教えてくれる批評性あるコメントもあって素晴らしいなと。
みあ
公開タイミングで、TwitterもYouTubeもチェックするんですよ。どんどんコメントしてくれる人が増えてきているのが嬉しくて。- ですよね。
みあ
公開を待ち望んでくれて、リアルタイムで感想を書いてくれるのは嬉しいですね。- なんとなくなんですけど三月のパンタシアって、ユーザーによる感想を楽しむのも含めて三月のパンタシアの表現になっているんだなって思ったんです。それぞれがそれぞれの解釈で小説や音楽、映像、イラストを解釈して楽しまれていて。より作品に愛着が持てます。
みあ
YouTubeのコメント欄で、楽曲に対して自由に話してくれるのがとっても嬉しいんです。“わたしもこういう経験がありました~”とか。そこのなかでも物語が拡がっているんですよね。物語が物語を生んでいる感じですよね。- なるほどねぇ。今回もかなり満足度の高いアルバム作品が完成したんじゃないですか?
みあ
バラエティに富んだ感じなので、聴いてくれる人によって推し曲にばらつきが出そうですよね。なので、早くみんながどの曲がそれぞれ好きなのかを早く知りたいですね。好きな理由とか。- いやぁ、いい曲ばかりですよね。
みあ
今回、リード曲は決めてないんですよ。でも、そんな存在になるのが今年の夏に小説と合わせて展開した「サマーグラビティ」になるのかな。- 「サマーグラビティ」、超キラキラポップですよね。そして、アルバムの最後にめっちゃ盛り上がるライブ感あるナンバー「ランデヴー」で締めるというのもいいですね。
みあ
想いとしては<物語はまだまだ続いていく>っていう歌詞で終わりたかったんです。そして、ライブでお客さんと一緒になって盛り上がりたいナンバーですね。- うんうん。
みあ
今後、音楽のあり方もいろいろ変わっていきそうですよね。でもまずは、今三月のパンタシアはネットを中心に活動しているので、三月のパンタシアが描く“ブルーポップ感”を世の中により広げて、染めていきたいなと思っています。侵略したいです(笑)。- 楽しみにしております!!!
【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
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リリース情報
ブルーポップは鳴りやまない
2020年09月30日
SACRA MUSIC
02.恋はキライだ
03.サマーグラビティ
04.逆さまのLady
05.醒めないで、青春
06.たべてあげる
07.ミッドナイトブルー
08.青い雨は降りやまない
09.不揃いな脈拍
10.煙
11.透明色
12.ランデヴー
お知らせ
黒ひげ エース
自粛期間中に漫画の『ONE PIECE(ワンピース)』を読んでいて。いま、めちゃくちゃ面白いところなんです。エースっていうルフィのお兄ちゃんの話で。白ひげや黒ひげとか出てきて、“黒ひげ”ってどんな関係性だったっけって調べていたんです。ネタバレになってしまうので控えつつですけど、ものすごく熱いですよ。
■ライブ情報
三月のパンタシア LIVE 2020「ブルーポップは鳴りやまない」
10/23(金) 18:30 OPEN / 19:00 START (予定)
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。