激情的かつ繊細なトライアングル・sajou no hanaの思考を探る初インタビュー!
ゆびィンタビュー | 2020.07.28
そんなsajou no hanaの最新シングル「青嵐のあとで」が8月19日にリリースされる。タイトルチューンは、TVアニメ『とある科学の超電磁砲T』新エンディングテーマに起用。カップリングには同アニメ15話の挿入歌となった「ここにいたい」。さらに、ライブでは披露されていたミドルにシリアスなナンバー「Hypnosis」を収録。今年2月には「リスアニ!LIVE 2020」で圧巻のライブパフォーマンスを繰り広げたsajou no hana。2020年夏、依然続くコロナ禍のなか、リモートで3人に話を訊いてみた。
PROFILE
sajou no hana
数多のヒットソングを手掛けてきた渡辺 翔がキタニタツヤ、sanaという新しい才能とタッグを組み、「sajou no hana」を結成。
TVアニメ『天狼- Sirius the Jaeger -』エンディングテーマ「星絵」を担当。同楽曲収録の1stシングルを2018年8月22日にリリース。この楽曲は『天狼』のために描きおろした楽曲で、作品世界に寄り添いながらも牽引していく重厚なサウンドになっている。その後、2018年12月26日には配信限定シングル「あめにながす」をリリース。
2019年1月から放送開始のTVアニメ『モブサイコ100Ⅱ』のオープニングテーマ「99.9」にMOB CHOIR feat. sajou no hanaとして参加。また同アニメエンディングテーマ「メモセピア」「グレイ」を担当。
渡辺 翔、キタニタツヤが作り出すジャンルに捉われない柔軟な音楽と、儚さと力強さが同居したsanaのボーカルで注目を集める。
- 最近はどんな感じで過ごされてますか?
渡辺 翔
もともと自宅仕事が多いので、生活のリズムは変わらないですね。ふとしたときに出かけられないのはストレスかもしれないですけど、それはそれで違う切り口で新しくできることはあるのかなって。sana
私は、ライブもとんじゃいましたし……結構やること減ったなって。逆に考える時間が増え過ぎちゃって、不安を抱えてました。渡辺 翔
ははは(笑)、そうだね。sana
結構多いと思うんですよ、将来に不安を感じる人って。そんな意味で、落ち込んだ毎日を送ってました。キタニタツヤ
ソロのライブがあったりはしたんですけど、僕も家で作業することが多いです。でも、家にこもって本を読んで映画を観てインプットするタイプではないんですよね。それより人と会って一緒にお酒呑んで喋ることのほうがわりとクリエイティブの役に立つんですよ。それが一気にごそっと無くなったんで、新しい曲を作ろうとしたときに悩んじゃいますね。- 音楽の聴き方やクリエイティブ面について新しい発見はありました?
渡辺 翔
ライブに行けなくなったのは大きいですけど、音楽の聴き方は変わらないですね。そういえば、もともと景色を観に出かけるのも好きなので、最近は迷惑かけないようにしながら車中泊とかしてみました。寝付きは悪かったですけど(笑)。sana
本来、家の中にいるのが大好きなんですけど、時間があるので近所を散歩するようになりました。もともと近所にあまり興味がなかったんですけど、「この家のお庭、大きいな」とか小さな発見がありました。キタニタツヤ
オンライン飲み会とか最初のほうは流行ってましたけど、やっぱりあんまりやらないというか。面と向かって喋りたいですよね。なので、クリエイターとの情報交換がなかなかできてないんですよ。- ああ、なるほどね。
キタニタツヤ
音楽って、音楽だけ聴いてても作れないなって痛感してる感じです。それが発見かな。渡辺 翔
そうかぁ。なるほど。- では、改めてsajou no hanaの結成秘話を教えてくださいませ。
渡辺 翔
きっかけは僕でした。作曲家として楽曲提供をしてきて、もちろん楽しかったんですけど、基本的にはオーダーを受けてのクリエイティブだったので、もっと自由に作れる場が欲しいなって。飽き性なんですよ。もっと刺激が欲しくてバンド結成に至るという。キタニタツヤ
最初、sanaさんていう歌の上手いコがいるよってとこからですよね。渡辺 翔
そうそう、とあるオーディションがあって審査員として参加してて、sanaさんがグランプリを獲って。sana
え、グランプリだったんですか!渡辺 翔
あ、グランプリというか受かってたんですよ。でも、そのときはまだバンドの構想はなくて。数年後に会ったら成長されててびっくりして。キタニタツヤ
それで翔さんとやることになったんですよね。で、僕が入ったのはそのあとで。そのふたりのプロジェクトが進んでるってときに、翔さんは編曲をやらないから、音を作れる人間を探そうってなって、そのタイミングで僕が同じ事務所に入ったんです。それで若いクリエイターいいじゃん!ってなって3人組になりました。渡辺 翔
まず、音源で知ったときにめちゃめちゃかっこよくて。最初聴いたのが、ボカロ+自分で歌ってたタイプの曲で。すごい個性だって思ったんですね。刺激になりました。sana
最初はなんて言うんだろう、すごい怖い人だと思って(笑)。全員
(笑)。sana
動画とか観て、今まで関わったことがないタイプのクリエイターだと思いました。すごいなって。キタニタツヤ
ビビってた?sana
ビビってた(笑)。けど、話していくうちに優しいお兄さんということがわかって。新しいことに挑戦していく人ですね。キタニタツヤ
sanaさんとは1曲目を作り始めた頃に会って。歌上手いなって、そこで翔さんはどんな曲を作るんだろうなってニヤニヤしてました。- sajou no hanaのアーティストらしさって、どんなところで確立されていきました?
渡辺 翔
コンセプトとかは特になくって。会議もしないし。でも、各々が持つ“sajou no hana感”はしっかりあるんです。ただ、あえてボヤかしてるところもあって。キタニタツヤ
ある種、お互いにすり寄せ合ってますね。渡辺 翔
ズレはしないのは、ここまでやってきて確信はあるんです。この3人だからsajou no hanaなんだなって。sana
歌詞的には“心が強くない人に向けて”曲を作っていってる感じはあります。実際、私もメンタル的には本当に最弱レベルの人間なので(笑)。だから、聴いてくれるリスナーさんたちに優しく寄り添っていけたらなって。- 3人とも影響を受けてきたルーツなどはバラバラ?
キタニタツヤ
バラバラな気がしません?sana
バラバラ(笑)。渡辺 翔
微妙に被ってるところはあるんじゃないかな。キタニくんがロックが好きなところとか。でも、ロックでも時期によって変わりますよね。sanaちゃんはディズニー系が好きだよね?sana
曲はほとんど映画やアニメから知ることが多かったんです。そこから歌の世界に興味を持ちました。キタニタツヤ
舞台もめっちゃ観に行ってたよね?sana
ああ、あれは音楽とは関係ないかも。キタニタツヤ
そう? 舞台音楽ってあるじゃん? ミュージカルとかさ。渡辺 翔
それは違うんだ?sana
うん、観るのが好き。キタニタツヤ
そうなんだね。翔さんと通じるのは、Plastic Treeとかかな。渡辺 翔
中学時代、ずっと好きだったんだよね。とはいえ、僕も結構広く聴くんで。キタニタツヤ
僕自体はもっと男くさいのがメインで好きだったりもするので、そういう意味ではあまり被らないかもしれないですね。- 今回、せつないエモさ満載のギターロックチューン「青嵐のあとで」がリリースとなります。楽曲がどんどん展開されていく感じがまた良くって。キタニさん詞曲で、アレンジには翔さんも参加されています。
キタニタツヤ
TVアニメ『とある科学の超電磁砲T』のタイアップなんですけど、今回の“とある”ってサイエンスフィクションなんだけど主人公が若いんです。友情や人間関係に焦点を当てて、そこをピックアップして音楽にしました。青春時代の人との関わり方って、大人になった関係性とは違うじゃないですか? そのコミュニケーションの若さを描いた曲ですね。- 説明が上手いなぁ。サウンド面では?
キタニタツヤ
ははは(笑)、ありがとうございます。さっき「展開がいい」って言ってくれましたけど、歌詞とメロを先に作って、そのあとで歌詞に寄り添うように展開を考えていきました。主にBメロなんですけど。時間が移り変わっていく感じを書いてて、そこでガクンと落ちるような。ほかには抜けるような晴天のイメージもあって、Bメロになったらいきなり夕暮れになるというか。寂しくなるセクションを歌詞に合わせて作ったら劇的になりました。今までシンセサウンドが多かったんですけど、この曲に関してはシンプルにしたかったんで、ピアノを入れたギターロックになりましたね。渡辺 翔
イントロを相談されたので、コードの付いたオケに「こういうのはどう?」って話し合って作りました。バンドらしい動きですね。sana
漠漠然と昔が恋しくなる曲だなって。小説みたいですよね。空の描写だったり。そういうのを頭の中でイメージしながら歌えたかなって。妄想の世界の理想の夏だなって思いました。学生の頃とか、当時はそんなに周りの景色に目を向けることってなかったと思うんです。今思うといい景色だったんだろうなとか。ちょっとセンチメンタルになる儚い感じですよね。- 今の時代にもハマる世界観ですね。2曲目はメロウなテイストのロックチューン「ここにいたい」。こちらは翔さん作詞曲で、編曲がキタニさん。
渡辺 翔
人間関係が重要な物語だと思って、僕の場合、その中での“弱さ”ですね、誰もが抱えるであろう要素を切り取りたくて。友達関係、居場所とかあると思うんですけど、そういうところに自然と入れる人が僕は羨ましくって。ある程度、もうできている輪に入るのって難しくって。でも、学生生活は毎日なので、時間をともに過ごしながら徐々に仲良くなっていくんです。そんななか、声をかけてくれる信頼できる友達もいたり。そういった学生生活の中で感じた葛藤を描いてますね。キタニタツヤ
ある種、「青嵐のあとで」とセットな曲だと思うんで、「青嵐のあとで」はバンドセット+ピアノで、「ここにいたい」はバンドセット+アコースティックギターですね。温かみを求めて生音を使いたかったんです。sana
私は、歌詞に共感の嵐でした!- まさにそういう曲で。
sana
翔さん、すごいなと思いました。リアルで繊細な気持ちを表現してて。私、学生の頃に友達が少なくて悩んでたんです。ひとりふたりしか友達がいなくて。でもそのひとりふたりが、いてくれるだけですごく大切な存在で。数にとらわれて悩むこともあると思うんですけど、視点を変えればそのひとつの存在のすごさに気がつかされるんです。恵まれてるのに悩んじゃうっていう人に聴いてほしいです。渡辺 翔
最後のサビ<嫌いを好きっていう君がいた>ってところがあるじゃないですか。周りの人って、自分が向き合ってる“嫌いなところ”を悪いように考えないことがあるじゃないですか? 実際、自分が嫌だなって思うところが個性だったりもするんですよ。自分が嫌いな場所を、友達だったり周りの人たちが気に入ってくれることもあって、そこのフレーズが気に入ってますね。共感してくれたらうれしいです。- めっちゃセラピーになる曲ですね。今の時代、メンタルヘルス的にもとっても大事な。
渡辺 翔
普段は落ち込んでる人をさらに落とすようなタイプの曲を書きたいって思ってたりもするんですよ。僕自身、落ちてるときは落ちてる曲を聴きたいんですよね。だからこそ、その逆も書けるんだなって思いました。- そして、3曲目は「Hypnosis」。
キタニタツヤ
これは前々からあって、ライブではやってた曲なんです。1,2曲目が温かい質感の曲だから、そこに当てるんだったら突き落とすような暗い曲にしてみようと。音楽性も真反対の打ち込みメインで、人力じゃない冷たい感じ。弾いたギターを切って並べ替えて作ってます。sana
なんて言うんだろう、ほかの曲とは違ってシャープな感じの歌い方にガラッと変えたので、聴いてくれた方はドキッとしてくれるんじゃないかな。ライブで一度だけやってるんですけど、体の動かし方というかライブ感を意識して歌えましたね。渡辺 翔
憑依型で歌うというよりは、しっかり考えて歌うタイプの曲ですね。大好きな曲です。sana
1回だけしかやってないんですけどね。キタニタツヤ
1回だっけ?sana
そう。渡辺 翔
どこかでまたやりたいなって思ってた曲ですね。僕が好きなsajou no hanaで出すキタニタツヤの一面と、キタニタツヤのソロの一面があるとしたら、ソロの一面を少し感じたんです。でも、全部は寄ってない――そんな塩梅が好きで。ボーカル・sanaをわかってるからこその曲になってるのがいいですね。これは強みだなって。ぜひチェックしてほしいです。
【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
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リリース情報
青嵐のあとで
2020年08月19日
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
02.ここにいたい
03.Hypnosis
お知らせ
「青嵐のあとで」
https://whv-amusic.com/sajounohana/news/index00620000.html
■コメント動画
■ライブ情報
「沙上の夜 act2」
10/26(月)東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
w/ People In The Box
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。