FAITHのリミックス企画第1弾は、ラッパー空音との「19」コラボレーション!FAITHボーカルのAkariと、リミックスを手がけた空音のスペシャル対談をお届け!

ゆびィンタビュー | 2020.07.30

 FAITHのリミックスコラボレーション企画第1弾として配信リリースされた「19(空音 Remix)」。同世代のラッパー空音をリミキサーとして迎えたこのリミックス、原曲のメッセージ性やパワーを空音による日本語のリリックがさらに力強く後押しするようなコラボになっていてすばらしい。19歳の気持ちをそのまま封じ込めたようなこの楽曲を、奇しくも『19FACT』という10代最後のアルバムをリリースしたばかりの空音が再構築するという巡り合わせもなんだか運命的だ。なぜFAITHは空音に声をかけたのか、空音はどんな気持ちでこのコラボに臨んだのか。そして「19歳」という年齢、ふたりの世代観まで、FAITHで作詞を担当するAkari Dritschler(Vo)と空音の対談をお届けする。

PROFILE

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FAITH


 長野県伊那市発、Akari Dritschler[アカリ ドリチュラー](Vo) 、ヤジマレイ(Gt/Vo)、レイ キャスナー(Gt/Vo)、荒井藤子(Ba) 、ルカ メランソン (Dr)からなる平均年齢20歳の男女5人組バンド。
 2015年、別々の高校に通うメンバーが伊那GRAMHOUSEに集まり結成。メンバーのうち3名が日米のハーフというユニークな構成。90年代洋楽をルーツに感じさせるサウンドにメインストリームのメロディが融合した、新世代が鳴らすグローバルポップ。ボーカルAkariの瑞々しく伸びやかな歌声も魅力。2020年1月リリースのMajor 1st Album 『Capture it』が全編英詞の新人としては異例となる全国71ものラジオ/TV局・番組でアルバム収録曲がパワープレイに選出。ラジオオンエアチャート2020年上半期総合2位を獲得するなど話題を呼んでいる。

PROFILE

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空音


 2001年生まれの19歳。兵庫県尼崎市出身。
 耳に残るフックのメロディ、叙情的なリリックをグルーヴ感のある歯切れの良いラップに乗せてリスナーに届けるアーティスト。
 高校生の時にリリースした 1st EP『Mr.mind』が、そのクオリティの高さから早耳リスナーを中心に注目を集める。
 2019年12月にリリースした自身初の1st フルアルバム『Fantasy club』はデジタル配信サイトを中心にヒットとなり、同作品収録の楽曲「Hug feat. kojikoji (Album ver.)」のミュージックビデオは、YouTubeで1,000万回再生超えの大ヒットとなる。
 そして、2020年6月24日に前作アルバムからわずか半年でリリースされた2nd アルバム『19FACT』は、Apple Musicの「ヒップホップ/ラップ」チャートで1位、「総合」チャートで6位獲得と、ヒップホップというジャンルの枠を飛び出し、幅広いリスナーに支持されている。

  • 今回のリミックスコラボをやろうと思ったきっかけは何だったんですか?
  • Akari

    このリミックス企画自体は、1月にアルバム『Capture it』のリリース記念インストアライブで神戸に向かう道中、メンバーが「19」のショートバージョンの音源をパソコンで作ってて、「これリミックスしたらめっちゃかっこ良さそう!」ってみんなで盛り上がったところから始まったんです。それで同世代とか歳が近いアーティストでリミックスしてくれる人を探し始めたんです。
  • 空音くんにオファーしたのは?
  • Akari

    もともと空音くんを知っていたんですけど、空音くんも私たちのことを知っていてくれたっていう繋がりもあって、「『19』をお願いするなら絶対、19歳の空音くんがいいな」っていう。
  • 空音くんのことはどういうきっかけで知ったんですか?
  • Akari

    いちばん最初はSNSで知って。そのあと、去年地元に帰った時に友達の車に乗っていたらめっちゃいい曲が流れてて、Shazamしたらそれが空音くんとkojikojiさんの「Hug feat. kojikoji」だったんです。「あっ!やっぱカッコいい」って感動して。
  • 空音というアーティストにはどういうイメージを持ってました?
  • Akari

    すごくいい詞を書くアーティストだなって。私、普段から歌詞を先に聴くタイプなんですけど、空音くんはストレートな歌詞が多くて素敵だなって思ってました。言葉選びも好きで。それに、今回リミックスしてもらうので連絡したり、「FAITH TIME」っていう私たちのインスタライブの企画にも出てもらったりして話をしていくと、実際すごく強い意志を持ったアーティストだし、めちゃくちゃいい人っていうのが伝わってくるし(笑)。
  • なるほど。空音くんはFAITHのことはどこで知ったんですか?
  • 空音

    YouTubeで「19」のリリックビデオを見つけたのが最初でした。それで聴いて。その頃僕自身がわりと洋楽を聴いていて、好きなアーティストの曲を和訳して聴いたりしていたんです。アメリカとか海外のアーティストって、結構曲に対する遊び心があって、アメリカンジョークみたいなことが曲中でちゃんと入ってたりするじゃないですか。
  • うん、気の利いた感じの。
  • 空音

    そういうのって日本ではあんまりないなとか、若い子の意思を強く代弁して歌うアーティストって少ないなとか思ってた時にFAITHに出会って、めっちゃカッコいいなと思って。歌詞もAkariちゃんが書いてるんですよね?
  • Akari

    うん。
  • 空音

    だからほぼ同い年ぐらいの人がそういう歌詞を書けるということにすごく感動したんです。バンドのメンバーもカッコいいし……僕もファッションは結構大事にしてるんですけど、FAITHはメンバーがみなさんすごくおしゃれなんですよ。スタイルができあがってる感じがカッコいいなと思って。羨ましいなという気持ちもありつつ。
  • そんなFAITHから今回リミックスのオファーを受けてどう思いましたか?
  • 空音

    即答でした、「やります」って。僕もちょうど『19FACT』っていうアルバムをリリースする時期だったのでタイミング的にもよかったし、曲のテーマも共通点を感じました。だから本家に負けないぐらい、いい歌詞を書かないとなっていうプレッシャーもありましたね。
  • Akariさんは当然、空音くんのニューアルバムのタイトルが『19FACT』というタイトルだっていうこととか、そこに込められたテーマとかは知らない状態でリミックスをお願いしたんですよね。
  • Akari

    そうですね、オファーしたときはまだ知らなかったです。発表されて知ったときにタイミングがバッチリだなって思いました。
  • めぐり合わせって感じですよね。空音くんはどういうところにポイントをおいて今回のヴァースを書いたんですか?
  • 空音

    特にヒップホップっていうジャンルはそうなのかもしれないですけど、若干のヘイトであったり、周りから受ける批判であったり、そういう評価を結構気にする人もいると思うんですよ。けど自分の意見をちゃんと発信する力がないと、この歳だったらちょっとナメられてしまうと思うし。「19」も、リリックビデオに和訳が出てますけど、ちゃんと自分たちの意思があって、活躍していくなかで見返すっていう強い気持ちが見えたのがカッコいいなと思いました。それが自分の伝えたいことともシンクロしたという感じです。
  • 「19」にかぎらず、Akariさんの書く歌詞には「自分は自分である」ということとか、それに対してとやかく言ってくる人と戦うだとか、そういうメッセージが込められたものがたくさんありますよね。
  • Akari

    私、結構昔からそういうところがあって。FAITHはアメリカと日本のハーフのメンバーがバンドに私含め3人いるんですけど、私もアメリカに行く機会が何回かあって。で、行くと毎回感じるのが、自分のことを100%認めた上で、すごく自分という人間に誇りを持って生きてる人が多いなっていう。それまで周りの目を気にして窮屈さを感じてたけど、そういう生き方に触れて、私も自分を認めた上でじゃないと人の背中を押すような言葉も言えないし、もっと自信を持って生きなきゃいけないなって。それから、結構歌詞にも現れるようになりましたね。
  • なるほど。人は関係ない、自分を信じるんだっていうことですね。
  • Akari

    はい。「私は私だからあなたには関係ないし、あなたもあなただから私は何も言わないよ」っていうスタンスで行くのが一番いいことなのかなって思うんですよね。
  • 空音

    僕も最近はそういう気持ちが強くなってきました。前までは自分に対して批判的な意見を持つ人間に分かってもらおうというか、「自分の音楽で黙らせる」と思っていたんですけど、そうじゃなくて、やっていくことで自然に静かになるし、僕自身がそっちに目を向けなければ相手も気にならないし。それぞれの好きなことをしたらいいじゃないというマインドになってきました。
  • Akariさんは上がってきたものを聞いてどういうふうに感じました?
  • Akari

    まず日本語の歌詞の響きがすごく新鮮だったし、私が19歳の時に書いた曲に19歳の空音くんがリミックスして歌詞を書き足してくれて、私が埋められなかったところというか、言葉にしきれなかった気持ちまではっきりと言ってくれたのがすごく嬉しくて。この曲が19歳のままであり続けられるというか。私の歌詞から「I know them people like to speak, speak, speak, like we’re the creeps」をサンプリングしてくれたところとかも、曲の意図を汲み取った上で書いてくれたんだなって、メンバーも感動してました。
  • そもそも、FAITHにとって『Capture it』っていうアルバムと、そのなかに入った「19」っていう曲がもつ意味合いっていうのはどういうものでした?
  • Akari

    『Capture it』は私たちにとっては10代最後のアルバムで。ちょうど発売した日に私は20歳になったんですけど。これから20代になっていく、子供なんだけど大人びていたいみたいな、その間の時期に出すって決まったアルバムだったので、やっぱりそのままの気持ちというか、いろんなことに反発したいんだけど「10代だから」って見られるもどかしさとか、そういうものを詰め込みました。この先何年たってもこの頃の気持ちを忘れたくないし、もちろん考え方は変わっていくだろうけど、あの時こういう風に思って曲を作ったんだなとか、そういう感情を全部切り取って閉じ込めておきたいなっていう。
  • そういう意味でも空音くんの『19FACT』に重なるところはありますよね。
  • 空音

    僕は19から20へのステップはそんなに変わらないとは思っていて。そんなすぐに変わるものだとは思わないですけど、でも10代で感じたものとか、その時に持っていた感情であったり、そこからの生活の変化であったり……もちろん就職する子もいれば大学行く子もいるし、10代の出会いと別れってすごく激しいと思うんです。そこを僕も絶対大事にしたいなと思っていて、それを作品に残したいなと思いました。
  • うん。「19」に歌われている気持ちって、確かに19歳という一時期のリアルなんだけど、でも同時にすごく普遍的だなって思っていて。そのリアルさと普遍性がひとつになっている感じがこの2組はすごく近いのかなって個人的には思うんですよね。
  • 空音

    反発心とかって結局向上心にも繋がるのかなって思うし。いつまで経ってもその気持ちは忘れずに、もっといい方法を常に探していけたらいいんじゃないかなっていう思いは持ってますね。
  • とはいえやっぱり「19歳」っていう年齢は特別な時期だと思うんですけど。
  • Akari

    10歳から19歳の10年間って、人生のなかで身体的にも感情的にもいちばん変化が大きい10年なんじゃないかなって思うんです。だからこそ、その時期を誰と過ごすのか、何をして過ごすのか、どういうことを感じて人に伝えて生きていくのかってすごく大事なことだと思って。一瞬一瞬を本当に大事に取っておきたいなって思ったんですよね。その最後の19歳、たくさんの人にとって節目の年なんじゃないかな。
  • 空音

    僕にとっては19歳って「これからどうしようかな」っていう悩みがあった年で。僕はアーティストとして活動してるので、周りの子との違いみたいなのがすごく大きくて。たとえば僕は結構土日が仕事だったりするんですけど、みんな平日がすごく忙しいのに、僕は逆にそうじゃなかったり。それはすごく特別なことだしありがたいなと思うんですけど、僕の19歳はわりとそういうこととどう向き合うか、自分はどんなことをみんなに伝えていけばいいのかということをすごく考えさせられる年でした。
  • Akari

    私も、周りに進学する子や就職する子が多かったから、すごくよくわかるな。違いって意味では、自分にはFAITHがあったから今の生き方を選んだけど、その上で結成当時のメンバーで変わらずバンドができてるっていう状況はありがたいことだなって改めて思います。
  • 今Akariさんや空音さんが言ってくれたような、“19歳の自分が何をしていくか?”ということって、それこそアーティストとして表現をする立場だからこそ見えるものなのか、それとも同世代の子ってみんな気づいている、わかっている感じなのか、どっちなんでしょうね。
  • Akari

    う~ん、私的には、流れに身を任せている人が多い気がします。自分のやりたいことを主張してもいいのになとか、思うことはありますね。逆にそのやりたいこと自体がないっていう子も周りには結構いたり。「やりたいことが見つからない」という感覚がどういうものなのかなとかは考えたりしますね。
  • Akariさんの場合はそれをどうやって見つけたんですか?
  • Akari

    私は小さい頃ディズニーチャンネルがきっかけで音楽が好きになって、クラシックや声楽を習ったりとか、ピアノやったりミュージカルやってみたり。いろいろやってみた中で、高校生に上がるタイミングでFAITHと出会ってバンドを始めました。両親も結構「やりたいことはまずやってみな」みたいな感じで、トライさせてくれて。
  • そういう意味ではラッキーだったのかもしれないですね。
  • 空音

    僕自身も本当にラッキーだったなと思います。僕も就職を辞退して学校を卒業してから、もうバイト生活になると思っていたんです。でもこうして音楽をやることができていて。周りの子見ていると、そこの葛藤がすごく大変なんだなと思います。今この瞬間も働いている人がいるだろうし。でもその、みんな頑張っているっていうのがすごいなと思うんです。こう、何でもトライする力というか、そのがむしゃらさがあるなっていうふうには感じますね。
  • みなさんの少し上の世代は「さとり世代」で、保守的で安定志向だとか言われていたじゃないですか。それとはまた違う感じがあるのかな。
  • Akari

    確かに。やりたいことが明確にある人って、もうそこしか見えてないぐらいの勢いで向かっていくんですよね。そういう目標がある人は、身近な先輩や仲間を見ていても本当に素敵だなって思うし、これからもずっとそうやって先を見ていてほしいなとも思うし、自分もそういうエネルギーを持ってたいなって。
  • 空音

    僕は、誰もが安定した生活を送れているわけではないと思うし、保守的でもいいと思うんですよ。たとえば家族ができて、その家族を守るために保守的に生活する人が別に悪いわけじゃない。でも、こう若い、僕たちってそれを考えずに何でもできるのがよさだとも思います。まあ、それぞれの考え方があって、いろんな生き方がある方がなんか日本っぽいなと思いますけどね(笑)。
  • うん。いろんな生き方っていう意味では、FAITHも空音も、今のシーンにおいてもすごくユニークな存在だなと思うんですよね。
  • 空音

    そうですね。僕はすごく自由にやらせてもらっているので。僕の「これやりたい」ということに対して一緒に考えてくれる、ユニークさを受け取ってちゃんと形にしていってくれるチームがいるからこそなのかなって思います。特にラッパーは、本当にひとりじゃ何もできないので、トラックメーカーの方がいて、レコーディングできてリリックを作る環境があってっていうのがないと、ヒップホップっていいものができないんですよ。それはありがたいなって感じていますね。
  • Akariさんは自分たちのユニークネスについてはどう思いますか?
  • Akari

    私たちの場合、端から見るとやっぱりハーフが3人いるっていうだけで、異色なバンドと見られやすいというか。自分らにとってはごく当たり前のことだけど、そこは生かさないわけにはいかないと思ったし、人前に立つ人間としてユニークであることは絶対大事なことだなと思って。そんな私たちが発信することで、そこに何かを感じてくれた人の考え方や物事に対する思いが変わっていったりしたら面白いなって思いますね。
  • あともうひとつ、FAITHも空音も、音楽のスタイルという意味ですごく柔軟というかボーダーレスだなと思うんですね。FAITHのアルバムなんて、本当にいろいろなスタイルが詰まっていますよね。
  • Akari

    メンバーが5人みんなそれぞれ違う音楽が好きで、ルーツもアメリカンポップス、ポップパンク、ブルースまでバラバラだったりするんです。だから持ち寄るリフとかやりたい曲の雰囲気っていうのが全然違うことがあるんですよね。でも「やったことないけどできるんじゃない?」とか言いながら作ってみると、最後にはFAITHの音楽になるというか。どんなジャンルでも、何か一定の色に落ち着く感じがして。みんなが違った視点で意見を出すから、割と何でも恐れずにチャレンジできるって思えるんじゃないかなと思います。
  • 空音くんもかなりいろいろなタイプのトラックメーカーと曲を作ってますよね。
  • 空音

    そうですね。いちばん大事なのは僕自身がブレずにやれていることかなと思っていて。それは僕のチームのみんなも同じ気持ちだと思うんですよ。たぶん僕がやりたいことを貫いていれば、周りからの意見も気にならないし、やりたいことが明確に見えてくるというか、できあがっていく。だからもっといろいろなスタイルがあってもいいかなと思っているんです。たとえばバンドの曲を今回やったこともそうだし、逆にバンドのアーティストがフィーチャリングで僕の曲に入るとかも面白いと思います。FAITHとも是非一緒にやってみたいです。
  • ああ、いいですね。空音 feat. FAITHみたいな。
  • 空音

    それでライブやるみたいなのも面白いかなと思います。そういうのを若い子たちでやりたいですね。周りのスタッフに選んでもらうというよりは、自分が選んだ同世代のチームでやりたいです。
  • Akari

    やりたいね! ひとつのジャンルを貫くのも素敵だけど、やっぱり多様性というか、音楽でも何でも、いろんなことができるっていうことで悪いことは絶対にないから。FAITHとしてもこれからどんどん新しいことやっていきたいなと思います。

【取材・文:小川智宏】

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2020年07月01日

VAP

01.19 (空音 Remix)

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