「ワンダーな気持ちになれる5曲」(池田スカオ和宏 選曲)
おうちで音楽を楽しもう | 2020.04.24
2020年4月24日 UPDATE
池田スカオ和宏 選曲
テーマ「ワンダーな気持ちになれる5曲」
「ワンダー」な気持ちになれるオススメの曲たちです。
ここで言う「ワンダー」は“無敵”且つ“素敵”の意味。どれも聴き、目を閉じると、即ここではないどこか素敵な場所へと誘われ、聴いた後には「前向きな力」を身体にみなぎらせてくれる曲ばかりです。各曲、聴き進めていくうちに天空や眺めの良い場所へと引き上げてくれ、最後には途方もない高みへと皆さんを誘ってくれることでしょう。ぜひ、この「ワンダー」さを明日への活力にして下さい。
The Cranberries「Dreams」
聴き、行ったこともないそのアーティストの故郷の光景へと想いを馳せさせる楽曲は世に多い。このThe Cranberriesの「Dreams」(1992年発表)もまさにそのひとつ。時折交じる独特のケルト唱法(ファルセットと地声を上手くシフトさせていく伝統歌唱方法)が聴き手に上昇感やワンダーさを寄与し、同グループの出身地・アイルランドの牧草原地を思い浮かばせつつ、終いにはとてつもない天空まで聴く者を引き上げてくれる。
抜き差しや音の強弱を活かしたディメンションとトレモロの効いた空間系のギターとタイトなリズムのサウンド、ボーカル・ドロレス(故人)の低音と高音を使い分け、ハーモニーさせた歌声は聴く者をここではないどこかへと誘い、例え未着の土地でも、そこに佇む自身を夢想させてくれる。
同曲の聴きどころは、ラストの1分にも及ぶハミングを含んだアウトロ部分。ジワジワと広大にひろがっていき、そこはかとない悠久性やエターナルさに浸らせてくれる。
クラムボン「サラウンド」
スピーカー等で空気を伝い聴く音楽も魅力だが、ヘッドフォンで聴く音楽も外から遮断された自分だけの世界や、より自身と向き合える愉しみを擁している。装着し耳から流れ込んだ瞬間に新しい世界へと扉が開かれ、目の前の世界が変わる嬉しさや発見。吸い込まれていくような錯覚や何だって出来る気がしてくる感覚……。そんな“あの甘美”を、このクラムボンの「サラウンド」(2001年発表)は想い起させてくれる。
プロデューサーに亀田誠治を迎え、それまでの情緒且つ独特の行間性溢れる音楽観から一変。ストリングスも交え、気持ちを前のめりにさせ、何かを始めたくさせるスピード感を保持している同曲。ボーカル原田郁子のアンニュイさから始まりながらも、徐々に生命力を帯びていき、サビでの途方もない開放感や伸びやかさへと辿り着くストーリーと、後半になるにしたがい絡みついてくるストリングスのスリル感はワンダーの一言。まさに何でも出来そうな心持ちにさせてくれる楽曲だ。
THEラブ人間「砂男」
2011年発表のTHEラブ人間「砂男」は、震災のしんどさを乗り越えた際を想い返し、「今回も乗り越えてやる!!」との強い気持ちにさせてくれる。今回のこの映像は震災直後に彼らが「何かしなくちゃ!!」と思い立ち緊急アップしたスタジオライブ。ダメな自分と、それを支えてくれる周りの人たちへの不器用な感謝と返礼、故に自分はこうしてシッカリと生きていけてるし、これからも強く生きていく。そんな秘めたメッセージが、今の時期ことさら沁みる。
私がこの曲を初めて聴いたのは2011年1月の渋谷La.mamaでのライブ。「出来たばかりの新曲だ」との紹介の後、この日そのLa.mamaを去る照明係の女性スタッフに捧げられた。終演後、知り合ったばかりのメンバーに同曲の感動をまくし立てたのも想い出深い(笑)。実は当初その2ヵ月後に発売予定だった同曲。件の震災で発売が延期され、その苦渋もこの曲と重なる。この時期、ぜひこの曲を聴き、自分を支えてくれている方々の顔を感謝と共に思い浮かべて欲しい。そしてまた来るべき時が来たら力強く、その方々と一緒に新たな一歩を踏み出して欲しい。
The Wisely Brothers「The Letter」
どんどん増していく嬉しさに包まれ、ついには「何でも出来ちゃう」気にさせてくれる曲がある。そんなワクワクやワンダーさ、最後にはとてつもない無敵感へと至らせてくれるのが、このThe Wisely Brothersの「The Letter」(2017年発表)だったりする。
当時は7インチアナログ盤で発売された同曲。プロデューサーに片寄明人(GREAT3)、ミックスエンジニアにジョン・マッケンタイア(Tortoise、The Sea and Cake)を迎えて制作された。
真舘晴子(Vo/Gt)が共演の際、親しくなったニューヨーク在住の女性SSWに綴った手紙をモチーフに作られた同曲。全編英語詞ながら、あえて辞書をひき懸命に綴ったかわいさと健気さも秀逸だ。この楽曲の魅力はかわいさやキュートさに満ちながらも、突如やってくる開けた感じや急に活力がみなぎってくるワンダーさ。なかでも中盤に繰り返される<I can feel something>が段々と信憑性と力を帯び、最後にはとてつもない無敵感へと至らせてくれるストーリーはたまらない。
今の時期、やる気スイッチを求めている方に超オススメ。そう、我々はI can feel somethingだ!!
4 Non Blondes「What’s Up」
家に閉じこもりの日々。普段は普通に会え、当たり前に会話していた知人が急に愛しく尊く思え、同時にそこから遮断された気になり不安にもなってくる。
そんな時はぜひこの4 Non Blondesの「What’s Up」(1993年発表)を聴き、そのような気分を吹き飛ばし、「やってやんよ!!」「乗り切ってやんよ!!」的な気骨になって欲しい。
女性ボーカル、リンダ・ペリーのパワフルでソウルフル、それでいてセンシブルな歌声も印象的な同曲。この歌の魅力は、やはり人を惹き込み、巻き込む、とてつもなく生命力溢れた歌声と、「やってやんよ!」感溢れる気概。それらは祈りや願い、いつかへの誓いのように聴く者を鼓舞してくれる。
リリックも<一体どうなってんのさ? 世の中ってどうなってんの?><やってやる、神様、あたしやってやるよ/これからもこの社会で努力していくから>等々、まさに今の不安な時期から、これが明けて始動する際の準備期間にピッタリ。いつかまたみんなで集まれる際には、改めて一緒に大合唱したい曲だ。
(プロフィール)
池田スカオ和宏
ウェブを主媒体に邦ロックを中心にJ音楽全般を各種幅広く執筆しているインタビュアー/ライブレポーター/ライター≒a.k.a 利便ライター。日々の取材記録や掲載案内はTwitter (https://twitter.com/ikeda_scao)にて。