「元気100倍! 開き直りの5曲」(高岡洋詞 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.05.08

2020年5月8日 UPDATE

高岡洋詞 選曲
テーマ「元気100倍! 開き直りの5曲」

昨今のコロナ禍を踏まえ、時節に合うテーマを立てていろいろ選曲してみたんですが、思い浮かぶのがアルバム曲だったり昔の曲だったりしてMVが揃わず、なかなか決まりません。いっそシンプルにいこうと、Fanplus Musicの性格上J-POPに限定した上で、ここ数年たびたび聴いたりMVを観ては元気をもらっている曲を挙げてみました。女性アーティストばかりになったのはたまたまです。

CHAI「カーリー・アドベンチャー」

 CHAIのMVはどれもかわいい。「フューチャー」とどちらにするか迷ったのですが、最終的にこちらを選んだのは、何を隠そう僕が筋金入りのくせ毛持ちだからです。おっさんになった今はもう気にしませんが、若いときは「ラーメン頭」とか「陰毛」とからかわれたし、雨が降ると1日憂鬱だったのを覚えています。ともすればネガティブに評価されがちな身体的特徴をその人の個性、魅力ととらえる「ボディ・ポジティブ」な考え方を自然に実践するCHAIはずっと大好きで、素晴らしいと思っていますし尊敬もしていますが、自分自身が彼女たちの表現の射程距離内に入ったとき、あらためてその力に感服した次第です。

ベッド・イン「シティガールは忙しい」

 <コンプレックス 武器にして 立ち上がれ>と歌う「Conscious~闘う女たち~」がCHAIと同じ文脈でとても好きなのですが、残念ながらMVがありません。この曲はまた違った意味で泣けるし元気が出ます。80年代ネタを散りばめて笑わせ、サビの<好きな靴 履いて TOKYO/ときめきと きらめきを 探すの>で一気に胸がギュッとするのです。女の子が身につけるもので気分を上げて大都市を歩くワクワク感を見事に表現しています。しかも地方では<TOKYO>のところにそれぞれの都市の名前を入れて歌うそうで、もはや反則(笑)。こんな気持ちで街を闊歩できる日々に、1日も早く戻れますように。

吉澤嘉代子「movie」

 ファンタジックな物語の歌い手として当代随一の吉澤嘉代子ですが、彼女自身の折々の思いを比較的まっすぐに綴った歌には格別の味わいがあります。「movie」は子どもの頃から魔女修業のお伴をしてくれていた愛犬、ウィンディが亡くなったときに書いた歌。サビの<あたらしい>を最後だけ<懐かしい>にしてあるのは、見守ってくれたウィンディのまなざしを継承し、これからは自分が誰かを見守っていく、というつながりを表現したものです。個人的な話で恐縮ですが、<いまなら言える もうわたし 大丈夫/おやすみなさい>の大サビを聴くと亡母を思い出し、自分は言えるだろうかと考えてしまいます。

関取花「君の住む街」

 関取花はメロディも歌詞もギターも素晴らしいのですが、なかでもすごいのが歌声。低音からファルセットまで、どの音域もワン・アンド・オンリーの魅力に満ちています。<跳ねるようなステップで 君に会いに行くんだ>という言い回しで「君が好き」という気持ちを表現したこの曲で、僕の感動がマックスに達するのは4分過ぎの<下手くそな絵描くから 君が笑えばいいな>のあとの「はぁー」というスキャット。周到に描かれたストーリーにふわっと挿入されるこの一瞬が歌の力をさりげなく、効果的に引き上げています。「ベントリー・ワルツ」も<ラーリトゥトゥラリララ>で泣いてしまう。宝物のような歌声です。

眉村ちあき「大丈夫」

 テレビ番組で披露した1分ちょっとの即興ソングをもとにした歌。彼女自身はこの曲の代表作扱いにずっと納得がいかなかったものの、いくつかのきっかけで評価を素直に受け入れられるようになったそうです。2番の<即興ソングは得意なつもりはさらさらないけど/テレビでは良かったと沢山言ってもらえる/初めて気づけた知らない自分を/育てるかは私が決めるんだ>というくだりを地で行ったわけですね。自ら紡いだ言葉に導かれるように、経験を重ねて成長する。曲が素晴らしいですが、サイドストーリーも感動的です。個人的にはMVの最後に入っている「ピッコロ虫」の歌い出しが好きです。すごい動き!

(プロフィール)
高岡洋詞
フリー編集者/ライター。音楽関係を中心に小さな仕事をコツコツこなしています。外出自粛で料理がうまくなり、かつ太ってきました。動いていないのだから、腹も減らなければいいのに……。

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