「雨の日に聴きたい5曲」(小町碧音 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.05.15

2020年5月15日 UPDATE

小町碧音 選曲
テーマ「雨の日に聴きたい5曲」

今回ピックアップしたのは、雨の日に聴きたい5曲。いずれも歌詞やタイトル、さらにはユニット名にまで雨というワードが含まれているもので、曲調以前に一貫して雨天に聴きたくなるような作品となっている。歌詞に雨と綴られている楽曲は、一般的にネガティブ、ダークなど、負の印象が強くなりやすいが、全部がそうとも限らない。様々な意味合いを持った以下の5曲を片手に雨の日を過ごせば、きっと清々しい気分になれることだろう。

バルーン「雨とペトラ」

 今年1月から放送された松下奈緒主演のフジテレビ系ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』の主題歌に「はるどなり」を書き下ろした須田景凪。イントロやサビで鳴る銅鑼が存在力を発揮する「雨とペトラ」は、もともとボカロP名義・バルーンとして、2013年より活躍していた頃に制作したオリジナル曲のひとつ。さびれた街で主人公がひとり、夢を見ている。しかし、夢の中へは行くことができず、スポットライトがあたるのは、孤独な現実。キック、ハイハットを刻んだ音が、暗闇を投影した雨のイメージと重なるほどに、闇へと誘われていく。サビ冒頭の<雨が降ったら>が、2番サビ<夜が降ったら>へ変わるフレーズからは、雨も夜も暗闇を表現する似たワードであることがわかる。救いを求める歌詞と時間を刻むメロディに縋りたくなる名曲。

ヨルシカ「雨とカプチーノ」

 雨の流れていく様子をあくまでも美しく描いているのは、文学的でコンセプチュアルな作品を手がけることで注目を集めるヨルシカの「雨とカプチーノ」。同曲は、2019年8月にリリースした2ndフルアルバム『エルマ』に収録されている。いくつものシーンに切り替わっていく映像のなかで登場するのは、主人公の女性と、その女性の思い出に残り続けるひとりの男性。黄色やカプチーノ色の背景を映したアニメーションはソフトで、涼感をも呼ぶが、女性の男性に対する思いは一心で熱い。このギャップこそがまた、胸をきゅんと熱くさせる要素となっている。さらには、ギターやドラムに交わるピアノの音色がなんとも良い味を出す。暗い雨を彷彿とさせない珠玉の1曲といえる。

空白ごっこ「雨」

 2019年12月29日に、ネット上で初投稿曲「なつ」を公開してから、羽を広げつつある音楽ユニット・空白ごっこの「雨」を紹介。ロックでエッジの効いた同曲は、作詞作曲を担当するkoyori(電ポルP)と針原翼(はりーP)のうち針原翼が手がけたもので、ボーカルのセツコが作詞を担当した。透明でありながらもセンチメンタルなセツコの歌声がサビで揮うのは、心にとどめていたものや声にならなかった感情などの全てを解放するような破壊力。<雨粒 弾いた音に 影まで重ねて消したい>というフレーズを通して、膨大に降る雨の中に自身の姿を消したくなるような、雨に紛れて辛いことを忘れてしまいたくなるような、そんな思いに駆られる。

ツユ「やっぱり雨は降るんだね」

 ユニット名にも雨が含まれているツユが、その名を象徴するような楽曲としてユニット結成日の2019年6月に公開したのが、初投稿曲「やっぱり雨は降るんだね」。メロディメーカーであるぷすによる楽曲と、ポップで可愛らしい少女を描いたイラストレーター・おむたつによるアニメーションに加わる、ボーカル・礼衣の歌声が作り出すツユの世界が炸裂したナンバーだ。同曲の中毒性は、ギターリフがメインとなるAメロ、ピアノリフが煌めくサビを中心とした、終始、繰り返すメロディラインから生まれている。一瞬空から明かりがさしたように見えても、結局は上手くいかないというもどかしさを<だけど やっぱり>で強調する歌詞がどこまでもリアルだからこそ、切ない。ラストで畳み掛けるギターの音色にも心酔。

美波「カワキヲアメク」

 TVアニメ『ドメスティックな彼女』のOPテーマ「カワキヲアメク」は、雨に降られても構わないバイタリティーをも感じさせる強度の高い1曲。世の中に対するある種諦めのようなモードがチラつく<物、金、愛、言、 もう自己顕示飽きた>といったフレーズを並べるなか、やはり迫力があるのは、骨太で、何度転んでも立ち上がることのできるような美波の声色。<空気を呼んだ 雨 降らないでよ>と歌う1番サビの終わりをはじめとして、2番サビでは<今、雨 止まないで>、ラスサビでは<空気を読んだ 空 晴れないでよ>、最後は<傘を閉じて 濡れて 帰ろうよ>……と主人公の心境が変化していく流れに、少なからず、共感できる人もいるのではないだろうか。

(プロフィール)
小町碧音
1991年生まれのボカロ、歌い手界隈を中心に手がける音楽メインのフリーライター。音楽が好きです。『Fanplus Music』『Real Sound』『OKMusic』『rockin’on.com』などに寄稿。

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