「スイッチオン!してくれる5曲」(伊藤亜希 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.05.29

2020年5月29日 UPDATE

伊藤亜希 選曲
テーマ「スイッチオン!してくれる5曲」

 「やる気スイッチ」ってあると思うんですが、これが曲者です。スイッチオンするには意志が必要。特に最近は、スイッチを入れないと、日常を維持できなくなってきているように感じます。
 だから「スイッチオン!してくれる5曲」をテーマに選びました。最近“スイッチ入れていかないとなぁ”と思う時に、よく聴いている5曲です。皆さんの心の灯りスイッチオ―ン!のお手伝いになると嬉しいです。音楽って、人の心をキラキラさせる魔法を持っていると思う。だから、しぶとく輝いていきましょう。さあ「再生」へ向かってスイッチオン!

スチャダラパーからのライムスター「Forever Young」

 日本ヒップホップシーンをスタートライン(ざっくり言えば1990年代初頭)から、それぞれのスタンスで支え続けて来た2グループ。両者とも2MC+1DJのスタイルで、メンバー全員同年代。活動歴も30年を超える。で、この曲。とにかく明るくて、楽しいパーティーチューンだ。4MCのキレッキレのスキルを、ちょっと封印気味にしたことで出てきた、ゆる~くて滑らかなフロウが、じつにメロディアス。ラップなのに、鼻歌で歌っちゃえるくらいのポップチューンだ。多彩なライミング(歌詞で韻をふむこと)も、すべてダジャレに聴こえちゃう、否、聴かせちゃう、大人の心意気がSO COOL!! 彼らとほぼ同年代の私は、苦手なことをやる前のスイッチ曲として聴いてます。

緑黄色社会「Mela!」

 男女混合の4人組。長屋晴子(Gt/Vo)の高音でもキンキンしないエネルギッシュなボーカルが最大の武器。また、全員が曲を手掛けるゆえの、ポップ・ミュージックへのアプローチの多彩さも魅力である。「Mela!」は、アレンジの面白さが光るアップチューン。ゴージャスなホーンセクションを軸にしながら、複雑なアンサンブルでファンキーなグルーヴ(でもためずにジャストなんだよな)を作り出していく手腕がお見事。そんな中、途中のギターソロではフュージョン経由のシティポップ?、一瞬のキーボードソロではELOみたいなプログレポップ?……と、様々なルーツをチラ見させてくれる遊び心も楽しい。午前中、スイッチを入れたい時に聴いてます。

Lucky Kilimanjaro「Drawing!」

 初めて彼らを知った時は軽い衝撃を受けた。エレクトロポップというより、個人的には歌メロのあるラウンジハウスって印象。この曲は、爽やかで多幸感あるミディアムアップチューン。洗練されたキック音を中心に、カラフルで個性的なファクターが空間を満たしていく。サウンド構築の緻密さも、4つ打ちお約束の畳みかけのアプローチもあるのに、無重力にも似たような軽やかさが素晴らしい。フレーズ、曲の尺など、全体的にコンパクトにまとめているのも好印象。ゆえに、ループのインパクトは残るのに、お腹いっぱいにならない。そこも含めて中毒性があり、ここがこのバンドの普遍性につながっている。彼らの曲は、聴く時間によって表情が変わる。スイッチを切り替えたい時、よく聴いてます。

ゴスペラーズ「Recycle Love(LOOPERformance)」<1コーラス ver.>

 アカペラの代名詞的グループが、自らの手でアカペラを大胆に進化させた1曲。MVはショートバージョンのみの公開だが、映像からもその斬新さは十分に伝わるだろう。彼らのデビューは1994年。ヒットチャートをヒップホップが席巻し始めた頃である。サンプリングも打ち込みも、彼らにとっては、ずっと当たり前にある手法のひとつだったのだ。この曲で面白いのが、コーラスワークのメリハリ。電子音に扮したかのようにどこか無機質なAメロから、サビでは一転、ロングトーンで迫力のハーモニーを響かせる。アカペラであることを忘れる声の音圧に、彼らの真髄を確認する1曲。布団の中でこの曲を聴き、サビハモに背中を押してもらうイメージで、起きる日もあります。雨の日とかね。起動スイッチになっている1曲。

THE ORAL CIGARETTES「Tonight the silence kills me with your fire」

 昨今のこのバンドの“覚醒ぶり”には驚かされる。リリースされる作品、すべてが刺激的だ。発売されたばかりの最新アルバム『SUCK MY WORLD』も、クワイアーを取り入れたり、ブラックミュージック・トレンドへのアプローチなど、新境地も多々あり、実に刺激的だった。そのアルバムにも収録されたこの曲は、超高速のロックナンバー。ミニマルなギターフレーズやリズムのループ、イントロや間奏でのアグレッシブなディテール……と、要素だけならポストパンク経由のニューウェイブだ。しかし“リバイバル”感が微塵もない。メンバーの音楽への向き合い方(結構オタク気質じゃね?)が音に現れた結果だろう。とにかく速攻でモチベーションを爆上げしたい時のスイッチになってます。

(プロフィール)
伊藤亜希
音楽ライター、編集などを四半世紀以上やってます……と書いていてちょっと怖くなりました。2017年から、夫婦2人でお食事も出来るワインバーやってます。主にワインと接客担当。接客して日々思うのは“音楽って万人の共通言語”だってこと。

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