「シン・セカイでも大声で歌いたい5曲」(永堀アツオ 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.06.12

2020年6月12日 UPDATE

永堀アツオ 選曲
テーマ「シン・セカイでも大声で歌いたい5曲」

 “新しい”という言葉はポジティブなワードに見えて、必ずしも“より良くなる”という意味とイコールではない。日本では「新しい生活様式」の実践が推奨され、「歌や応援は距離をとるかオンラインで」と記されている。しかし、ライブハウスは三密しに行くところである。有効なワクチンや治療薬が完成するまでは大人しく待つが、やっぱり、同じアーティストを好きだという共通点を持つ名も知らぬ仲間と肩を組んで、大声で歌ったり、叫んだりしたい。例えば、こんな曲たちをーー。

SHAKALABBITS「MONSTER TREE」

 DIY精神を持ったパンクロック/スカコアバンドとして全国のライブハウスを熱狂させてきたSHAKALABBITSが2003年9月にリリースした6枚目のシングル。ライブではボーカルのUKIが、演奏前にタイトルを連呼する。その間にフロアにはいくつものサークルが生まれ、やがて肩を組んでの大合唱が始まる。そして、UKIが<悲しみが飛び乗って優しさに/生まれ変わる/そしてひとつになれればいい>と歌った瞬間に、観客が用意した紙吹雪がそこかしこに舞うのが恒例だった。あんなに多幸感に満ちた空間はなかなかなく、その余韻は未だに残っている。SHAKALABBITSは2017年いっぱいで活動休止に入ったが、UquiとMAHは新プロジェクト・Muvidatを始動。ライブでは「Soda」や「head-scissors」などのSHAKALABBITSの楽曲もプレイしており、バンド結成から19年目にしての新たな出発を刻んだ「19 Years」が新たなアンセムとして、現在のライブにおいて日々、成長中だ。

安藤裕子「問うてる」

 ピアノとクラップ、そして、歌とバスドラから始まる力強い楽曲。2010年に本人が出演した「ゲロルシュタイナー」のCMソングで、同年4月に配信シングルとしてリリースされた。ライブでは 2009年1月のアコースティックツアーでの初披露以来、歌い出しの歌詞から「命ってなに?の曲」として親しまれてきた、ファンにはおなじみの1曲。元来は優しく明るい曲調だが、観客全員がクラップし、大合唱するライブの影響を経て、抗えぬ人生に命を燃やし前進していくような、まるでゴスペルを思わせる力強い歌へとなった。15周年記念ライブを含め、最近のライブでは披露してないが、またライブで聴きたい。ライブで一緒に大声で歌っていると、“どんなに辛いことや悲しいことがあっても、それでも生きていくのよ!”と頬を打たれたような気持ちになるから。また、5月20日にリリース予定だったニューアルバム『Barometz』は8月26日に延期となっている。4年半ぶりのアルバムを聴くのが今から楽しみでならない。

Chara「タイムマシーン」

 1997年にリリースされ、ミリオンセールスを記録した不朽の愛のアルバム『Junior Sweet』は誰もが口ずさめる名曲ぞろい。大沢伸一プロデュースの表題曲「Junior Sweet」(プレミアム会員の方はYouTubeでの視聴可能)は、ライブでは光に満ちた空間の中で、Charaと観客が<愛を 浴びて>を繰り返す、ゴスペル教会のような神々しいコール&レスポンスが沸き起こるし、「しましまのバンビ」や「ミルク」もそれぞれがそれぞれの思い出を重ねながら口ずさんでいる光景をよく目にする。そして、この「タイムマシーン」は、Charaのウィスパーボイスと観客の大合唱が重なっていき、その温かさにいつも涙を誘われている。ちなみにこの曲はChara、彼女のライブのバンドメンバーでYEN TOWN BANDでも一緒だった名越由貴夫、そして、故・吉村秀樹(ブラッドサースティー・ブッチャーズ)の3人で作った曲で、のちにセルフカバーアルバム『JEWEL』(2013年)でブッチャーズのメンバーと再録を果たしている。

木村カエラ「You bet!!」

 昨年、デビュー15周年を迎えた木村カエラはライブハウスがよく似合う。バレリーナのように華麗にスピンしたかと思えば、パワフルなハイキックやパンチをぶちかまし、拳を高々と掲げてシャウトする。昨年の全国ライブハウスツアー「いちご(1と5でいちご)狩り」では、各会場で「Butterfly」の大合唱が巻き起こって感動的だったが、今はやっぱり、アグレッシブで挑発的でパンキッシュなカエラが見たい気分。「Yellow」「BANZAI」「Jasper」「戦闘的ファンタジー」「マスタッシュ」「TREE CLIMBERS」「sonic manic」……。ライブで聴きたい曲はたくさんあるが、近年のライブではやっていない「You Bet!!」をお勧めしたい。2010年にリリースされたデビュー5周年ベスト『5years』の新曲として収録されたロックナンバー。<電光石火Foreverロケット飛ばすぞ>という歌い出しそのままの勢いで全速力で前進し、サビでは<♪今日みたいな日を忘れない>の大合唱となる。早くライブ会場で<♪今日みたいな日を忘れない>と歌いたい。

緑黄色社会「想い人」

 5月から開催予定だった全国ツアー「SINGALONG tour 2020」が見送りになってしまったことが残念でならない。ドラマ『G線上のあなたと私』の主題歌「sabotage」、アニメ『僕のヒーローアカデミア』のEDテーマ「Shout Baby」とリリースごとに広がりを見せていたし、4月にリリースしたメジャー1stアルバム『SINGALONG』は、ボーカルの長屋晴子の心の底から湧き上がってきた衝動的な“歌”はもちろん、ライブで一緒に歌いたい曲が詰まっていたから。初めてメンバー全員でコーラスを入れた「愛のかたち」やメンバー4人で共作したファンキーなソウルポップ「Mela!」、そして、理想の自分をポジティブに追い求める「あのころ見た光」。どの曲も<ラララ>や<ナナナ>のシンガロングや観客全員が一体となってクラップしてる光景が思い浮かぶ。今はただ、これらの曲を自主練しつつ、王道のバラードのようで細かいギミックが散りばめられている「想い人」を聴き、優しく穏やかな気持ちでライブの再開を待ちたい。

(プロフィール)
永堀アツオ
1996年からフリーライターとして活動。雑誌『音楽と人』『Steady』『FINEBOYS』でレギュラー執筆中。他の主な寄稿先に『Real Sound』『What’s In!? Tokyo』など。たこやきレインボー「ナナイロダンス」も肩組んで合唱したい。

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