「考察するのが楽しいK-POP映像5曲」(東條祥恵 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.06.26

2020年6月26日 UPDATE

東條祥恵 選曲
テーマ「考察するのが楽しいK-POP映像5曲」

 K-POPの魅力はルックス、ダンサブルな楽曲、一糸乱れぬダンスパフォーマンスなどが最初に注目されがちだが、忘れてはならないのがMVの存在。K-POPが叩き出すMVのあの驚異的な再生回数からも、その映像が世界標準であることはよく分かる。ハイクオリティーな映像はもちろん、MVのなかには数々の仕掛けがこっそり仕組まれていたり、アーティストによっては、何作品にも渡ってシリーズで関連した物語を描いている作品もある。これらを解析していくのもK-POPのMVの魅力の一つ。コンサートにも行けない、そんなときだからこそ、おうちでK-POPのMVをじっくり見ながら想像力を思う存分巡らせて、自分なりのK-POP・MV分析を楽しんでみてはどうだろう。

TWICE「TT」

 まずは初級編ということでTWICEからは、おそらく誰もが知っているであろう“TTポーズ”で大ヒットした「TT」をピックアップ。ガールズグループ史上初の4億回再生を突破したこの作品。韓国語版のMVは、ハロウィンにちなんで魔女とガイコツの仮装をした子供たちが古いお城の中に入ってくと『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウに扮したミナを皮切りに、ナヨンは可愛い悪魔、ジヒョは『アナと雪の女王』の女王エルサ、ジョンヨンは『ピノキオ』のピノキオ、サナは『キックアス』のヒットガール、モモは『ピーターパン』のティンカーベル、ダヒョンは『アリス・イン・ワンダーランド』の白うさぎ、チェヨンは『リトル・マーメイド』のアリエル、ツウィはヴァンパイアの仮装をして、次々と現れてくる。日本語版「TT-Japanese ver.-」のMVはこれとはまったく違うテイストで作られているのだが、じつは細かいところまでよーく見ていくと、韓国版でメンバーが演じたキャラクターにまつわるアイテムがあちこちに散りばめられているのだ。ほんの一瞬しか映らないものもあるので、見つけたときは隠れミッキーを探しだしたときのような高揚感が味わえる。

SEVENTEEN「CLAP」

 TWICEは同じタイトル曲のなかでのアイテムリンクだったが、SEVENTEENにはさらにこのアイテム探しをディープに楽しめる作品がある。それが「CLAP」だ。この曲はボーカルチームのメンバー、ウジが「ひとりで生きてきた少年が、より広い世界に出て成長しながら何かを得ていく」というストーリーを考えて作詞/作曲をしたナンバーで、MVはビデオ制作会社“SVT”というコンセプトのもとに、主人公の少年が生きてきたこれまでの成長ストーリーを振り返るように、SEVENTEENが過去に発表したMVで使った「Adore U」の車や「VERY NICE」のカート、「Mansae」のバスケットゴールなどのアイテムが次々と登場。ぜひ、彼らの過去のMVを見て捜索してみてほしい。彼らがデビューしてから「CLAP」までに発表してきたタイトル曲を中心にMV探索をすすめていくと、リスナーはデビュー曲「Adore u」で恋を知った僕が、「Mansae」でそのトキメキに万歳!「Pretty U」で綺麗な君に勇気を出して告白すると、「VERY NICE」でデートが大成功、「BOOMBOOM」で心臓はバクバクに。だが次第に「I Don’t Know」ではふたりの関係が分からなくなり、「Don’t Wanna Cry」ではついに彼女が立ち去っていく。「TRAUMA」でその傷を抱えながらも、「CHANGE UP」で気持ちを切り替え、「CLAP」で嫌なことがあっても大丈夫、愉快にやっていこうと立ち直るまでのひとりの少年の淡い恋物語が描かれていたことに気づかされるはず。

IZ*ONE 「FIESTA」

 作品つながりを歌詞ではなく、花というモチーフで表現していったのがIZ*ONEのMVだ。サバイバルオーディション番組『PRODUCE 48』から誕生した韓国人9人と日本人3人で構成された彼女たちは、デビュー曲「La Vie en Rose」、第2作目のタイトル曲「Violeta」と続いた“フラワーシリーズ”を、今年発売した1stフルアルバム『BLOOM*IZ』のタイトル曲「FIESTA」で締めくくったばかり。花3部作といわれるこれらのMVを花目線で追っていくと、まず「La Vie en Rose」ではメンバー自身が大切な情熱、無くしたくない夢をやっとつかんだという意味で、花はそばにあるだけの存在なのだ。だが、次の「Violeta」では、曲が後半にさしかかるとメンバーがいることによって花が咲いたり、花びらが浮かび上がったりし始め、ここではリスナーがIZ*ONEと出会ったことで、聴き手の未来が輝きだしたことを花の動きで表現。そうして、最終章となる「FIESTA」では花を一瞬しか映さないことで、IZ*ONE自身がついに夢見ていた未来を現実にして花となり、満開の花を咲かせる姿を描いている。それを裏付けるようにこのMVの彼女たちは気品あるオーラを堂々と放ちながら、3部作のなかでもっとも華やかな衣装をまとって祝祭をあげている。花というキービジュアルを通して、彼女たちのリアルな成長ストーリーを感じた上で「FIESTA」を見ると、その感動もひとしおなのだ。

BTS 「I NEED U」

 人間の成長をストーリー仕立てのMVで展開しているアーティストといえば、今や世界のトップグループにまで駆け上がったBTSだろう。彼らを語る上で欠かせないのが、そのストーリーの始まりとなった「I NEED U」のMVの存在。“学校3部作”に続いて突入した“青春3部作”の<花様年華>シリーズ。そのタイトル曲として彼らがこの「I NEED U」を発表したのは、なんといまから5年も前。BTSの現在も続いているストーリーは、この「I NEED U」を発端に始まっていったといっても過言ではない。青春を謳歌しているような爽やかな7人と、父親を刺したり、それぞれの死を予感させるような衝撃的なシーンに、何度見返しても謎が深まるばかりの「I NEED U」オリジナル版。「RUN」「花様年華 on stage : prologue」「EPILOGUE : Young Forever」と見れば見るほど、物語は絶妙につながっていながらも、時系列はバラバラで、似ているようでどこか異なる世界にも思えてくる。なぜRMはガソリンスタンドで飴をなめているのか、ライターに火をつけるSUGA、薬を手にするJ-HOPE、フードを深くかぶるV、浴槽に沈むジミン、路上を彷徨うジョングク、そしてユリの花を見つめるジン。これらのさまざまな謎が、その後何年もかけて次の物語と関連づけた形で展開していっては、少しづつその伏線の謎が明かされていく。これこそが、BTSのMVの醍醐味なのだ。

EXO 「MAMA」

 BTSが、人が青春期から大人になるなかでの成功や挫折、精神的な苦悩とその克服などを軸とした壮大な人間ドラマを描くアーティストなら、その人間さえも超越した地球、銀河という時空を超えたSF映画のような規模感で、神秘的なストーリーを繰り広げているアーティストがいる。それが、EXOである。EXOは成り立ちからして、Exoplanetなる太陽系外惑星から地球に不時着し、記憶をなくしたという設定から始まったグループ。そのため、カイはテレポート(瞬間移動)、ベッキョンは光など、メンバー各々は特殊な超能力を使えて、その姿はデビュー曲「MAMA」のMVのなかにははっきりと描かれている。ここから、赤いキューブの存在が明らかになったり、(同じメンバーが演じる)偽物のX-EXOが出現したり、X-EXOがオーブを利用してEXOの能力を奪い、能力を忘れたEXOが実験台として囚われてしまったり、そのなかでいつしか裏切り者が現れてEXOが分裂してしまったり、X-EXOが送り込んだスパイがEXOに入り込んでしまったり…。新曲を出すたびに、毎回驚きの本物のEXOとX-EXO入り乱れての超スペクタクルなストーリーを見せてくれる彼ら。その世界観がデビューからまったくブレないEXOだからこそ、パラレルワールドのようにふたつに分かれてしまった彼らがひとつになったとき、不安定な世界がひとつになって新世界が生まれるというあの「MAMA」が、いつしか未来の彼らを予言しているように思えてくるから不思議だ。

(プロフィール)
東條祥恵(音楽ライター)
音楽が好きで、ファッション誌からアイドル誌、大好きな村上龍が連載するオトナ雑誌まで幅広く扱う編集プロダクションに勤務。その後、フリーに。音楽雑誌でFTISLANDの連載を担当し、彼らと出会ったことでK-POPカルチャーにハマる。元々ダンスボーカルグループ好きで、ヴィジュアル系、アニソンも大好き。

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