「仕事をしながら聴きたいインスト5曲」(峯岸 利恵 選曲)

おうちで音楽を楽しもう | 2020.07.31

2020年7月31日 UPDATE

峯岸 利恵 選曲
テーマ「仕事をしながら聴きたいインスト5曲」

 世の中的にもテレワークが普及し、自宅で仕事をすることが増えてきた。私は家だとなかなか作業が進まないタイプなので、今まではカフェなどに行ってパソコンを開くことが多かったが、今はそれができない。とはいえ家でテレビを点けたり音楽を聴いたりしながらだと、どうしても言葉の力に意識が引っ張られて集中できない……。そんな時に、私がいつも部屋で流しているのがインスト曲!ということで、通販番組さながらな導入になってしまったけれど、同じ悩みを持つ人に是非とも聴いてほしい5曲を紹介させて頂きたい。但し、全曲素晴らしい曲なので、手を止めて聴き入ってしまうことも多々。その点はご了承ください。

LITE「Double」

 日本のインストバンドといえば?と訊かれたら、必ずと言っていいほどその名が出てくる4人組インストロックバンド・LITE。洗練されたキャッチーさと鋭利で硬質なリフとのバランスがたまらない彼らの楽曲は、いつ聴いても刺激的だ。今回紹介した「Double」は、昨年6月にリリースされたアルバム『Multiple』のオープニングを飾る楽曲であり、「Multiple=掛け算、多重、複数」というタイトルを掲げる作品を象徴するような、エッジがバリバリ効いたサウンドに仕上がっている。フレーズのループを折り重ねていきながら、徐々にテンションを上げていく躍動感の気持ち良さがたまらない。あと、個人的にはLITEの楽曲を聴きながらパソコンでの仕事をすると、タイピングの速度が速くなっている気がする。

cetow 「crosstown hygge」

 関西を中心に活動しているバンド・cetowが昨年5月にリリースした、初の全国流通盤となる1st フルアルバム『signpost of light』に収録されている「crosstown hygge」。たっぷりの清涼感をもったツインギターが、熱を帯びた肌を撫でるように吹き抜けていく風の如く気持ち良い。そして私は、この曲になんとなく「懐かしさ」を感じる。それはきっと、自分が持っている想い出のどのシーンにも優しく寄り添ってくれるような、親しみやすさや人間味を感じるからなのだと思う。例えば、帰郷するために乗った電車の車窓から見える、少しずつ緑が増えていく景色の変化や、あてもなく歩いてたどり着いた見知らぬ場所で感じる穏やかな高揚感。cetowの楽曲からは、そういった「ドラマティックすぎない日常の素晴らしさ」を感じ取ることが出来る。

1inamillion 「Shoes」

 2015年に結成されたインストバンド・1inamillion。初めてワンミリのライブを観た時は、格好良すぎて唖然とした。歌唱がない分、メロディの抑揚や各プレイヤーによる技の巧みさがダイレクトに感じられるのがインストの良さだと思うし、ライブではそこにバンド自身が持つ熱さが加わってハイになれる。その点で、1inamillionのライブはメンバーがめちゃくちゃ楽しそうにプレイするのが最高なのだ! あんなにも技の効いているフレーズが織り込まれた楽曲をプレイするとなれば、私なら絶対に手元に集中してしまい余裕がなくなってしまう。けれどワンミリは、楽曲もライブも、「楽しい」という気持ちが滲んでいる。彼らの自主企画名は「POPS」なのだが、良い意味でストイックすぎないそういった精神性が表れているからなのだと思う。

Japanese Baseball「MEMENTO」

 今年6月に『Japanese Baseball - EP - 』を配信リリースした、謎のバンド・Japanese Baseball。まさに「突如」としか言い表せない発表の仕方で、楽曲と同時にバンドの存在を世に放った彼らに関することで分かっているのは、「4人組」「インストバンド」「東京出身」ということだけ。しかしながら、バンド名から推測するにAmerican Footballが好きなんだろうなぁと思っている。切迫感やタイトさを感じさせないシンプルなフレーズとメロディラインに、ほんのりと香るように漂う哀愁。楽曲を通して感じることのできるバンドのスタイルは、肩肘を張ることなく、鳥のように自然体で自由、ということだ。それはEPに収録されている他の楽曲に対しても、同じように思える。新たなインストバンドの登場に、期待と喜びの気持ちが隠せない。

あらかじめ決められた恋人たちへ「翌日」

 池永正二をリーダーとするシネマティック・インストDUBユニット、あらかじめ決められた恋人たちへ。17分を超えるこの「翌日」は、「前日」という楽曲との2曲で構成された、トータル30分に及ぶコンセプトEP『今日』に収録されている。そして『今日』がリリースされたのは、東日本大震災があった翌年、2012年4月11日。未曽有の事態に直面し、当時の日本を襲った絶望と恐怖、悲しみ。今もなお記憶に新しいあの日の出来事を乗り越え、今、私たちは今日を生きている。そういった気持ちにそっと寄り添うように、「翌日」という曲は癒しと温もり、そして「普通に生活をすることの尊さ」を教えてくれる。昨日から今日、今日から明日へ向かうことを当たり前と思わずに、誰かと気遣い合いながら一日一日を大切にしていこうと思える楽曲だ。

(プロフィール)
峯岸 利恵
ドラえもんとカレーと餃子を愛するアラサーライター。欲しいひみつ道具は「グルメテーブルかけ」。ツイッターでは、好きな音楽とドラちゃんの話をよくしています。(https://twitter.com/negitam

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