Editor’s Push 第13回
Editor’s Push | 2021.01.29
日々たくさんの音楽と触れ合っているFanplus Music編集部。
ここでは、編集スタッフがオススメしたい新譜作品をピックアップしてご紹介します。(毎月更新)
2021.1 LINE UP
ツユ |
空白ごっこ |
Paraiso |
レイラ |
Broken kangaroo |
理芽 |
Lucky Kilimanjaro |
SHE’ll SLEEP |
はてな |
SWALLOW |
ツユ
「ルーザーガール」
「ルーザーガール」
ツユ
「ルーザーガール」
「ルーザーガール」
2019年6月に「やっぱり雨は降るんだね」を初投稿、その後「くらべられっ子」が1900万再生を突破するなど、ネットシーンで注目を浴びるユニット、ツユが昨年末に新曲「ルーザーガール」を発表した。思うようにいかずに劣等感を抱くけど、<だって 開き直るしかないじゃん>と前を向いて自分を受け入れて進む女の子の気持ちを描写している今作だが、この歌詞は聴く人全ての背中を押してくれる楽曲だと思う。誰しも誰かと自分を比べて落ち込んだり、何もうまくいかないと暗い気持ちになって足を止めてしまったりという経験はあるだろう。そんな感情に寄り添いながら、手を引っ張ってくれる楽曲だ。ツユは今年、“本気を出す”とのこと。世間的にも落ち込んだ2020年から、ツユが我々の手を引っ張ってくれる、そんな気がする。(中川)
空白ごっこ
「運命開花」
「運命開花」
空白ごっこ
「運命開花」
「運命開花」
何もないけど何かある「空(くう)」の世界観を「心」に例えて、その精神世界で遊ぶ(ごっこする)ことをコンセプトにした音楽ユニット、空白ごっこが、2021年に変わった1月1日、新曲「運命開花」を配信リリースした。その直前の年末には、活動1周年を記念した2曲を発表したばかりだったが、今作はまさに2021年の幕開けにふさわしい楽曲になっている。Voセツコのエモーショナルな歌声に、ハードなギター&4つ打ちロックという、疾走感がありつつもどこか音楽の原体験を思い出させてくれる懐かしさも感じる楽曲だ。ライブハウスなら思い切り拳を高く突き上げたくなる。2020年から続く、つらい今の世の中の状況を、拳で突き破って打破し、2021年の明るい運命を切り開いてくれる、エネルギッシュな1曲。(中川)
Paraiso
「ビリヤニ」
「ビリヤニ」
Paraiso
「ビリヤニ」
「ビリヤニ」
「ポしなの新プロジェクト」と聞いた瞬間から、高揚感が止まらなかった。これまでフィジカルなサウンドアプローチに重きを置いてきた2ピース・ポップしなないでのかめがいあやこ(Key/Vo)とかわむら(Dr)に、フィメールSSW・ましのみ、相対性理論や集団行動で知られる真部脩一、イエスマンのベースボーカル・NAGAMUUを加えた5人編成のParaiso。「ビリヤニ」はそのタイトルどおりの大陸的なエッセンスに、女性陣のフェミニンな佇まいとグルーヴィーなリズム隊がマッチした楽曲、対して「人類の皆様へ」はアッパーなバンドサウンドで新たな価値観を提示すべくまくし立てる楽曲。キャッチ―でありトリッキー、ある意味で変態的なこのプロジェクトが、ヒットチャートに食い込んでくる日が楽しみでならない。(栄谷)
レイラ
「ふたりのせかい」
「ふたりのせかい」
レイラ
「ふたりのせかい」
「ふたりのせかい」
横浜の4ピース・レイラが待望の新曲「ふたりのせかい」を配信リリース。コロナ禍において、対個人、対社会についての価値観が大きく変わってしまった人も少なくないだろうが、この曲では特別な相手との関係性に焦点を当て、ふとした日常の情景描写が丁寧に紡がれている。冒頭に出てくる<少し伸びた髭がキスの邪魔をして>には思わずニヤついてしまうし、<世界が終わってしまっても/ふたりの世界なら/どんな運命もゆるぎない愛で変わるわ>はまさにこの曲の核となるメッセージと言える。そんななか8分音符の刻みで時間の経過を刻むバンドは、間奏で音符が細かくなりエモーションを演出。ボーカル・有明(ありあと読む)の自然体な歌い回しが心地よく寄り添ってくれる、このご時世だからこそ日本中に鳴り渡ってほしい名バラードだ。(栄谷)
Broken kangaroo
「Snow drop」
「Snow drop」
Broken kangaroo
「Snow drop」
「Snow drop」
シンガーソングライター/トラックメイカーの17歳、竹内羽瑠のソロプロジェクト・Broken kangaroo。昨年のバイラルチャートで急浮上し、話題を集める彼が、冬の時期にぴったりな新曲「Snow drop」を配信リリースした。「忘れられない人や冬がある人へ、寄り添えるように」と書かれた楽曲。繊細な感情の機微が、“雪”をモチーフに絶妙に表現されている。17歳とは思えないほどの表現力に加え、自身でディレクションを務めているMVでも、まるで降りしきる雪と一つになってしまうのではないかというほど、感情を込めて歌う姿に心を掴まれる。話題作「水平線」で見せた若さ溢れる粗削り感とは一転、壮大なサウンドアレンジの中に繊細さも併せ持つ今作という振れ幅に、今後の楽曲にも期待してしまうのは必然だ。(中川)
理芽
「法螺話 (with Guiano)」
「法螺話 (with Guiano)」
理芽
「法螺話 (with Guiano)」
「法螺話 (with Guiano)」
バーチャルシンガーの理芽が、レーベルメイトのGuianoによる提供曲「法螺話 (with Guiano)」を配信リリース。冒頭から<あたしはね 実は人殺しなんだ>と、ヒヤリとする歌詞が綴られているが、<もちろん全部嘘だよ>という“法螺話”。だが、繰り返される<人のことなんて知れやしないでしょ>という言葉に、本当なんじゃないかとも思えてしまう。絶妙にテンポを外された歌唱や、行間を感じさせるブレイクなど、どうしたって聴き流すことのできない感覚に陥る。そこで歌われているのは、人というものの真の姿ではないかという、嘘か本当かわからないがとても説得力のある話だ。理芽の歌唱には心が騒めく感覚もあるが、同時にMVが公開されたGuianoによるセルフカバーは、また違う説得力を持った表現になっている。(中川)
Lucky Kilimanjaro
「MOONLIGHT」
「MOONLIGHT」
配信シングル
2021.01.20
ドリーミュージック
2021.01.20
ドリーミュージック
Lucky Kilimanjaro
「MOONLIGHT」
「MOONLIGHT」
Fanplus Musicで追いかけ回しているラッキリことLucky Kilimanjaro。ここ最近、地上波の番組でも取り上げられている彼らの新曲「MOONLIGHT」が到着。高低差のあるストリングス風の印象的な冒頭から始まり、オクターブ上のコーラスに吸い込まれるように突入するサビでは、ぼんやりとした月あかりを微笑んだ表情に重ね合わせ、気持ちが高ぶるシーンを描写。<小さな信仰 証明できない祈り/でも確かに、夜にぶらさがる幕を溶かして星に変えたよね>あたりのクマキユキマル(Vo)の歌詞表現の妙も忘れてはいけない。モノクロ映画の劇伴音楽に似合いそうな、いつかアナログレコードの質感で聴いてみたい至高のダンスミュージック。4月の野音で、月あかりに照らされてこの曲に浸るのを楽しみに待ちたい。(栄谷)
SHE’ll SLEEP
『WHITE』
『WHITE』
アルバム
2021.01.20
THE NINTH APOLLO
2021.01.20
THE NINTH APOLLO
SHE’ll SLEEP
『WHITE』
『WHITE』
前作アルバム『AWAKE』のときにもこのページでプッシュさせてもらったが、それからわずか半年、新たなアルバム『WHITE』をドロップした長野は松本ALECX発のスリーピースメロディックパンクバンド・SHE’ll SLEEP。今作もまた、メロディックファンはもちろん、より多くのロックリスナーの欲望をかっさらってくれること間違いなし。再録された「Days」「光のない街」をはじめ、ベースの連打に誘われるタイトルナンバー「white」、なりふり構わず走り出したくなる「ワタリ」、冒頭のバラードセクションから2ビートへと突入する新たなアンセム「ツキナミ」、同じく2ビートに乗せてエネルギッシュに歌い上げる「barefoot」の再録など全9曲。全国を回る大型ツアー、ライブハウスで会おう。(栄谷)
はてな
「声?」
「声?」
はてな
「声?」
「声?」
音楽を通して“今を生きる”人たちの抱く「はてな?」に答える、神出鬼没・正体不明のアーティスト、はてな。今作「声?」(こえだけが)は、TVアニメ『Dr.STONE』EDテーマのために書き下ろした楽曲。メジャーデビューシングル「夢?」(ゆめじゃない)では、届かない“夢”ではなく、未来を楽しんだ者勝ちと歌っていたが、今作では、声を上げて未来へ進もうと鼓舞している。アニメの主人公・千空をイメージした楽曲とのことだが、聴く人の心を奮い立たせてくれる楽曲になっている。はてなの楽曲は、“曲ごとに伝える「はてな?」があり、全ての曲が揃ったとき、ひとつなぎのメッセージとなる。”という。第3弾の楽曲ではどんなメッセージを伝えてくれるのか。はてなの楽曲がまるで冒険の地図のように繋がっていくのが楽しみだ。(中川)
SWALLOW
「ULTRA MARINE」
「ULTRA MARINE」
SWALLOW
「ULTRA MARINE」
「ULTRA MARINE」
改名前の「No title」時代に、その洗練されたボーカルとバンドサウンドが織り成す化学反応に惚れ惚れしていたのも束の間、昨年6月に「SWALLOW」に改名して新たにスタートを切った3ピースバンド。LINE MUSICにて先行配信された新曲「ULTRA MARINE」は、多くのブレイクアーティストに関わってきたSEED SEEKERSが前作に続きプロデュースし、作詞・作曲は工藤帆乃佳(Gt/Vo)が担当。ひんやりとした手ざわりの序奏を経て、サビで一気に天高く舞い上がるようなフレージングは見事。情感高いメロディーは、愛する存在へと手を差しのべるラブソングにも聞こえるし、困窮を極める社会情勢からの脱却を願うエレジーのようにも聞こえる。期待を寄せるバンドとして、大海原へと飛び立ってほしい。(栄谷)